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ネズミとダンジョンマスター  作者: ヨコチ=チウム
第一章
19/39

#十八匹目 You know


『search』を使いダンジョン判定になる条件が分かった俺は早速『Nショップ』を開いて目的の商品を探していた。

本当は先にこの水色謎茄子をカメラを使って鑑定したかったのだが善は急げというか思い立ったが吉日というかなんというか、兎にも角にも茄子くん君は後回しだ。


少々時間がかかりそうなのでダンジョンと外とを隔てる穴に足を突っ込んで座る。立ったままでも別に疲れはしないのだが気分的にだ。

なんせ大きな買い物をするのだ。しっかりと考えねばなるまい。

大きな買い物、それは家!ハウス!ホーム!ハイムである。

いやぁ、今の穴暮らしな生活環境も悪くは無かったのだが鳥が木に作った巣に魚が珊瑚礁に住んだりする様に人間にも適切な住処というものがある訳ですよ。

まぁ、食事排泄の必要が無くて疲れる事の無い生物が人間なのかは謎ではあるが。

とにかく俺は人らしい居住環境が欲しいのだ。


風呂は足を全部伸ばせる位のサイズがええの。

結界内に収まる大きさの家にしないとだから…

はぁ?こんな家が6000万NP越えだと…!?


あれこれ考え、様々な家を吟味する事数時間。


「これにするか〜」


悩みに悩んだ末、一つの家を選びもう一度その家の間取りや内装など細部を眺めていると、スマホのアラームが鳴り響く。


「おわっ!?びっくりしたぁ…」


おぅ…ジーザス。

スマホには表示していた間取り図の画面を遮り警告文が表示されていた。


*警告*

『残り1時間を切りました 0:59:56』


もうこんなに経っていたのか、一度洞窟に戻っておくか。

仕事中はあんなにも時間の経過が遅かったのに。

等と考えながらもスマホと茄子を両手に持ち穴に続く斜面を降りていく。


一度ダンジョンに戻りタイマーが止まったのを確認し回れ右をしようとしたところでふと思う。

俺だけ家を買うというのも気が引ける事に。

別に元々は俺のお金の様な物だから、俺がダンジョンマスターだから、等と言ってしまえばそれまでの話なのだが、それは何か違う気がする。

ニアやオルガ達、エレノア達は短いながらも衣食住や労働を共にした仲間だ。皆とは出来るだけ平等でありたい。勝手な願いかも知れないがこればかりは譲れない。

ある程度の上下関係は仕事をする上で必要ではあるが行き過ぎた上下関係は人間関係の悪化を招く。やっぱり皆仲良くするのが一番良い訳だ。


まぁ、頭では耳当たりの良い事をほざいているが実際は俺だけ家を買うのが心苦しいだけである。


明日は丁度休みか。一旦俺の家に関しても明日に回すとして、明日の休みを利用して全員の家選びでもするか。

今日の所は帰って、皆にその事を伝えたり他の用事でもしますかね。


そう思い回れ右は止めそのまま地下へと降って行く。


寝床兼荷物置き場を通り抜け、そのまま更に地下深くへと歩む。

目指すは穴掘り最前線。

ツルハシを岩に叩き付ける甲高い音と共に道路工事などで聞こえてくる様な小刻みな破砕音が聞こえてくる。


お〜やってんね〜。


進めば進むほど大きくなってくるその音を聴き心の中で感嘆する。周りの壁をみれば綺麗に整備されており多少の凹凸はあれど岩肌と言うよりも壁と言える程だ。時々壁の側面に謎の四角い空間が掘り抜かれており若干の疑問は感じつつも、成果に満足しロの字の下り道を降りていく。


「ちゅあ〜」「ちゅっちゅぅ〜」


掘削の光景が目の前で見える場所まで近付けば、足元からそんな声が聞こえてくる。

何処に居るのかと思い足元を見れば壁の側面に掘られた空間の中に彼等は居た。

数匹のネズミ達が手頃な石に腰掛け休息を取っていたり、ペットボトルのキャップに入った水を器用に前足で掬い顔を洗っていた。


「今は休憩中かな?お仕事ご苦労様」


「ちゅ」「ちゅちゅ」「ちゅ〜」


俺に気が付いたネズミ達は頷いたり胸を張ったり、照れているのか頭の後ろを掻いたりと様々な反応をする。

あ、照れてるんじゃなくて毛ずくろいですか。


「ちゅ、ちゅーちゅっちぅ」


「えぇ、まじか」


「ちゅちゅ、ちゅ」


「うんうん。それはめでたいな是非今度お祝いをしないとな」


「ちゅー!」


どうやら彼の妻は妊娠しているらしくすぐではないが、そのうち出産なのだとか。

ふむ、これはますます家が必要だな。てかいつの間に出来てたんだか。てことは産休が必要か?ふむふむ…


『おや?ナナシ殿?』


ネズミ達と言葉は通じないがボディランゲージや何となくで談笑していると、後からオルガと思わしき声が聞こえてくる。


「オルガか?」


『ええ、オルガです』


そう言いつつ振り返れば足元で二足で器用に直立したオルガが胸元に前足を置き頷いていた。


「おぉ、丁度よかった。少しいいか?」


『勿論ですとも!』


休憩中のネズミ達にもう一度労いの言葉を掛け、オルガと共に掘削最前線を離れる。少々最前線は音が凄いので会話するには不向きな為仕方ない。


『それでナナシ殿、話とは?』


「うむうむ。実はついこの間話題に上がったニッケルの事を少し聞きたくてな」


『はてニッケル…?あぁ!お宝の事ですか!』


そう言えばニッケルについてお宝とだけしか伝えてなかったか。

まぁ伝わった様なので良しとする。


『お宝でしたら、集める様にとの事だったのでこちらに』


そう言うとオルガは穴を更に少し上へと登る。


『こちらです』


そう言うと壁の側面に空いた空間に入って行った為、俺も少し頭を下げ後に続く。

数メートル歩けば低かった天井が開け四角い正方形の空間に出る。隠し部屋みたいだと心を踊らせつつ顔を上げればそこにはニッケル鉱石と思われる大小様々な大きさの石が山積みにされていた。


「おぉ〜凄い!!」


その光景に素直に驚き、感嘆していると後から何やら物音が聞こえてるくる。


『はーい通りますよ〜。前の方退けてくださーい』


そう聞こえ振り返ればニアがスケルトンの押すリヤカーに乗り先程通って来た通路を進んで来ていた。


「おぉ、すまんすまん」


そう言って退けた所でふと気が付く。


「ニア、サボりか?」


『え?いや普通にリヤカーに乗るのが楽しくて』


「うむ素直でよろしい」


どうやらニア達は新しく採掘されたニッケル鉱石を運搬して来たらしく、リヤカーに山積みにされた鉱石をぶちまけるとそのまま来た道を帰って行った。

あっ、あいついつの間に……

気付けば手に持つ茄子の一部齧られていた。

食い意地の張ったヤツめ。というかこれ食えるのか。


それはさて置き、もうこんなにも集まっていたのか。

山積みにされた鉱石を眺めつつ、価値を上げるためにもアダムとイヴの二人に精錬を頼もうかと考えていると鉱石の山の頂点付近で蠢く物が目に入る。

角度的に見えなかったので横に周り見てみればそこにはアダムとイヴが居た。


「あれ?何でアダムとイヴが?」


『アダムとイヴ殿はせいれん?等という事をされているそうですね。なんでも、お宝の価値が上がるのだとか。よく分かりませんかピカピカ綺麗になっているので納得です』


誰に問うた訳でも無かったのだが、オルガが回答をくれた。

なんということでしょう。うちの子はなんて優秀なのでしょうか。頼む前に先んじて行動しているなんてお母さんすごく嬉しい!


嬉しさのあまり思考がママ味を帯びてしまったもののよく見れば入口から反対側、アダムとイヴの下の部分には彼等によって分解吸収された純ニッケルの球体が山盛りに積まれていた。

今も分解吸収され吐き出された純ニッケルの球体が山を転がっている。


「アダムもイヴもありがとうな」


作業している二人に感謝を伝える。


『どういたしまし』『て』


もの凄く区切る部分がおかしいとは思ったが何も言わない。


「さてと、なら早速NPに変換していくか」


『私も微力ながらお手伝いします』


「おう、悪いな」


そこからオルガにも手伝ってもらい純ニッケルの売却を始める。

現在ニッケル鉱石と純ニッケルがごちゃ混ぜになっているので誤って鉱石を売らない様に分けるのに時間が掛かる。なので仕分けする人員をどうにかしないと等とオルガと話し合いながらも作業を続ける。


『そう言えばナナシ殿このニッケルというのはどういった物なので?』


オルガいわく、ネズミ達はニッケルが価値があるのは分かったが用途が分からず頭を悩ませているのだとか。

スケルトン達に聞いても鉄は知っているけどコレは知らないと返ってきたそうだ。


「俺もあんまり詳しくは知らないんだが、ニッケルってのは硬貨に使われてたり機械とかに使われてたりするらしいな」


オルガは統率者として凄く優秀だなぁ。なんて事を考えながら問に答える。


『こうか?きかい?』


「硬貨ってのは……えぇーとなんだろう。物や仕事に対する対価で……えーと?」


いざ、お金とは何かと聞かれると説明に困る訳で四苦八苦しながらも何とか貨幣の仕組みと機械について説明する。

途中スマホの『search』に頼ったのは言うまでもない。


それから二時間後。主に説明に時間が掛かった訳だが、純ニッケルの売却が完了した。

総額は23870NP。結構な量をNPに変換したのだがこの間のオークの半分程である。それでも中々のNPになった事に喜びつつ考える。


硬貨か……ニッケルはまだまだある。

別に腐る訳でも無いしなぁ。

それにNPも2383万とまだ余裕もあるし。


「よし!決めた!」


『むむ?何をですか?』


「いや、なんかニッケル売っちゃうの勿体無い気がしてきて。だから今度からは売らずに置いとこうかなって思って」


『なるほど』


だって売るより買う方が高いんだもの。後で必要になって買う事になったら勿体無いもの。

持ち前の貧乏性が発症してしまい、そう言えばゲームなんかでも使い道の無いゴミアイテムも何かに使えるかもと思って集めていた事を思い出す。


あのゴミアイテム結局使わなかったなぁ。

なんて考えながら今もニッケルの球体を生み出しているアダムとイヴに話しかける。


「なぁ、鉱石を精錬した後の形を球体から四角形にって出来るか?」


『もちのろ』『ん』


返事の後から生み出されるニッケルは立方体となった。

実に有能。

少々形は歪ではあるが球体よりは保管しやすいと思われる。


「さて、一段落付いたし一旦休憩しますか」


オルガとアダムとイヴを交え三人で休息を取り、その後は俺も相棒のツルハシ片手に掘削(戦場)へと赴き一仕事を済ませた。


その日の夜、全員分かっては居ると思うが念の為明日は休みである事を伝え就寝する。



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