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ネズミとダンジョンマスター  作者: ヨコチ=チウム
第一章
17/39

#十六匹目 ちゅう殺

若干グロ注意?


「さーて、エレノア準備は良いか?」


『はい。こちらも問題ありません』


なんと実はこの会話のやり取りもこれで三回目だ。

銃も先程点検して問題ない事を確認しているしコッキングも引いて装填済み。持ち物だって問題ない。もう何度も確認した。


逆に何が問題なのかって?そんなの心の問題に決まってる。

いや、なに簡単な話ですよ。びびってんだよ!

少し前までエレノアに対して偉そうな事言っておいて本当に情けない話だ。


でも、この前地上に出た時なんてあれだよ?いきなりオークとかいう化け物がこっちに向かって突っ込んで来たんだよ?下手したら死んでたからねあれ。

ついさっき、さぁ地上に出ますかってタイミングで考えてしまったのだ。もしオークが出待ちしてたらどうしようと。


『主……もしかして、』


「いやいやいやいや、エレノア違うよ」


流石にエレノアに勘付かれそうになったので慌てて否定する。

もうこうなったらヤケである。もう思い切って行く事にした。


「い、行くよ?」


『はい』


行くと言ってしまった以上、進まなければならないし背後にはエレノアの眼があるためもう後戻りは出来ない。

覚悟を決めて穴を登っていく。

地上に繋がる穴のすぐ側まで来ていた為、すぐに目的の場所に着いた。

前回オークによって踏み抜かれた穴は直径三メートルほどで人一人程度軽々と潜れる様に見える。しかも幸運な事に掘っていた穴が傾斜であった為、踏み抜かれた土が斜めに盛られている。

その為比較的苦労する事無く地上に出れそうだ。


一応地上に出る前に穴から少しだけ顔を覗かせて周囲の確認をする。


「大丈夫……そうだな」


小声でエレノアに合図すると先に俺が穴から這い出す。

穴から出てすぐに銃を構えて周囲を警戒した所で電子音が響く。

驚きの余り穴という穴から色々と出てきそうになってしまう。

それと誤って銃の引き金を引かなかった俺を褒めて欲しい。


すぐにその音がスマホのアラームに設定していた音だと分かり胸を撫で下ろす。


『主!?今のは!?』


「大丈夫、俺のスマホが鳴っただけだ」


問題ない事をエレノアに小声で伝えたのは良いが、何故このタイミングで鳴った?

目覚ましなんてセットした覚えは無いんだが。


後で確認しようと思い穴の方を横目に見ればエレノアが這い出して来ている所であった。


よしよし今の所は順調。

後は結界の燈を四方に設置すれば今日の任務は完了だ。

何事も起こらなければ良いんだが。


なんて心の中でイベントフラグを建設していると案の定それはやってきた。

穴を中心に約十メートル間隔で結界の燈を置いていき、二つ目を起き終わった時であった。


「ぷごっぶごっふ」


豚に似た奇妙な鳴き声と共に重量感のある足音が聴こえてくる。

無言でエレノアに静止する様に合図を送り、ゆっくりとその場に屈む。


声のした方向をを見れば前回同様凶悪な面構えのオークがのっそのっそと歩いていた。どうやら俺達にはまだ気が付いていない様だが、一直線で無いにしろキョロキョロと辺りを見渡しながら俺達のいる方角に歩いて来ている。

恐らくさっきのアラームを聴かれたのだろう。

このクソスマホ今すぐ叩き割ってやろうか。


それよりも、このままでは何れ鉢合わせる事になりそうだ。

くっそ。しかも運が悪いことに今設置が完了している二箇所は俺達のいる側。つまり残り二つの設置場所はオークがいる方角になる訳だ。

今から急いで穴に飛び込めば逃げる事は可能だと思うけど、どうしたものか。


悩む事十数秒であったがどうやらタイムオーバーになってしまったらしい。


「ぷごっ」


その声に反応して穴からオークに視線を移した。そして目が合う。


そういえば、同僚が読んでいた恋愛の本に書いてあった。

見つめ合う事で愛が深まるとか何とか。見つめ合えば相手の想いが伝わるとか。

まさにその本の通りだ。絶対ぶっ殺すという情熱的な想いがオークから俺に伝わって来ているのだから。


「エレノア!下がっててくれ!もしやばそうだったら穴に逃げてくれ!」


もう身体は生き残る為に動いている。しっかりと銃を構えこっちに向かって走り出そうとしているオークに照準を合わせる。


距離は三十メートルと少し。

まずは機動性を奪うべく足を狙う。頭は揺れていて狙いにくいが足は地面を踏みしめる為に固定されている分狙いやすい。

軸足を狙い引き金を引く。確実に当てるため一発ずつ撃ち込む。

一発目から正確に狙った足に着弾する。

硬いと思われた表皮も鋼鉄をも貫く銃の前では無力であったらしく難なく貫く。


「ぶごぁっ!?」


オークにも痛覚はあるようで、悲鳴と共に走り出すのを止める。

銃が通じるか心配だったが問題ない様なので次々と撃ち込んでいく。

関節部を集中的に狙い次々と着弾させていく。

十発程着弾させた所でオークは自重を支えきれなくなったのかその場に倒れる。

しかし、まだ俺を諦める気は無いそうで無事な方の足と両手を使ってこっちに這ってくる。執拗い男はモテないぞ?


地面に這い蹲って、こちらに向かって来るのなら頭が狙い易い訳で簡単に当てられる。

多少左右に揺れる頭にしっかりと照準を合わせ何度も引き金を引く。


「この前のお礼だ。受け取ってくれ」


殆ど外す事無く命中し弾倉が空になるまで引き金を引き続けた。

素早くリロードを済ませると銃を構えたまま様子を見る。

頭に数発撃ち込んだ時点で既に動きは止まっていたが念の為残りの弾も全弾プレゼントしてあげた訳だが、果たしてお気に召してくれただろうか?


まだ、生きている可能性がある為、未だ警戒が解けない俺とエレノアは一言も喋る事無くオークの様子を見続ける。

弾が着弾した足と頭からは赤い血が流れ、地面を伝う。


何故だろう、肌や見た目は違うとはいえ人型である生物を一方的に痛め付け殺したというのに罪悪感を微塵も感じない。

それに俺はグロ耐性は低い筈だったのにこの光景を見ても忌避感すら感じない。


それなのに何だろうこの込み上げてくる感じは……?

快感?悦び……?


いや、今は良そう。

坩堝に嵌る前に、思考を切り替えエレノアに今の内に結界の燈を設置する様に指示する。


その間も俺はオークから目を離さない。

結界の燈の設置が完了し、その内側に入った所でようやく警戒を解く。四方に薄らとだが蒼白い膜のような物が見えこれが結界なのだと納得する。本当に効果があるのか心配ではあるがお金は嘘をつかない。なので問題ないと信じる事にする。


それよりもオークが問題だ。生きてるのか死んでいるのかが判らない。

そこでふと思い出す。スマホのカメラを使ったNP変換機能を。

NPに変換する事が出来るのは物質や物品に限る訳で確か生きている物は不可能であったはず。つまりカメラを使えば生死を判断出来る。命拾いしたなスマホ君。

叩き割られる運命を逃れたスマホを使い早速オークの生死判定をしようと思いスマホを開く。

そして、スマホに表示される覚えのない画面。


*警告*

『ダンジョンマスターがダンジョンより出た事を確認しました。ペナルティ発動まで残り 2:46:12』

何これ?数字がどんどん減っていくのが見ていて分かる。

つまり文面通りに受け取ると、俺がダンジョンの外に出て一定時間が経つとペナルティつまり何かしらの罰則があると?


まぁ、数字の減り具合的にこれは残り二時間半な訳か。

この警告と時間の事に関しては一応頭には入れておき、詳しくは後で考える事にしてまずはオークだ。


ゆっくりと音を出さない様に近付いて行き、ある程度距離を保ちつつカメラを向ける。


『オークの死体 59312NP』


おぉ!二つの意味で驚きだ。ちゃんと死んでいた事にも驚きだしこの売値にも驚きだ。

六万って凄いな。流石二十万するモンスターといった所か?


こんな所にオークの死体があっても邪魔なだけなので『はい』を選択し売却する。

すると地面に付着していた血液含めてオークの死体は跡形もなく消えた。『NP管理』にて残りのNPを確認すればしっかり六万増えとており自然と頬が緩む。


『流石です主!単独でオークを討伐なさるなんて!』


結界の中でエレノアが両拳を握って喜んでいるのが目に入る。

褒めてくれるのは嬉しいのだが、銃あっての成果なので素直に喜び辛い。

取り敢えず別のオークが音に引き寄せられて来る可能性があるので急いで結界の内側に戻る。


森の中をもう少し探索しようかとも考えたが、スマホに表示されていた時間の事もあるので今日は戻る事にした。

一応結界の範囲を十メートル四方から二十メートル四方に広げておいた。魔導具の性質上範囲を広げ過ぎると効果が薄くなるらしいので取り敢えずはこの位に抑えておく。


穴に戻るとスマホに表示されていた残り時間が消える。

それを確認しつつ四角い部屋に戻ると椅子に座りエレノアと共に休憩を取る。身体的には殆ど疲れて無いのだが少々精神的に疲れた。他にも得た情報量が多過ぎる。少し休憩してからノートにでもまとめておこう。

隣の部屋の住人が毎日ドカドカうるさい訳ですが、一体何をしているのだろうか( ´∵`)?

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