#十一匹目 頭上ちゅー意
「よーし、じゃあ皆これを装備してくれ」
俺は『Nショップ』を使って新たに届いた段ボールの中身を開封する。
勿論購入したのは剣や銃といった物騒な物ではなく、ツルハシだ。
ちなみにどうでも良いと思うがツルハシの形状は両ツルハシ。値段なんと一本3590NP!
そこそこな値段するツルハシを一本ずつエレノア達に手渡していく。
「はい、これからよろしくね」
「カタ…」
エレノア達スケルトンは別に大した物でも無いのにそれを恭しく受け取り手に持つと、天に掲げたり涙を流す眼球などありもしないのに目元を拭う仕草をしている。
ネタかと思ったが伝わってくる思念によると本気だ。
いちいち大袈裟な気もするが本人達の自由にさせておく。
全員にツルハシを配り終えると早速とばかりにエレノア達は岩壁にツルハシを叩きつけようとするので急いで制止する。
「まぁ、待つんだ皆。まだ他にも渡すものがあるからな」
俺がそう言うとエレノア達から「え?穴を掘るのに他に何か必要?」といった感じの思念が伝わって来る。
「あるある大いに必要な物が」
新たな段ボールを開封し中身を取り出す。
取り出したのはヘルメット。勿論色は黄色だ。
俺は自信満々にヘルメットを取り出した訳だが、エレノア達にはそれが何なのか理解出来ないのか皆一様に首を傾げている。
「これは…こうやって使うんだよ」
一番近くに居たエレノアに近付くと、かっぽりと艶やかな黄色ヘルメットを頭にかぶせてあげる。
頭蓋骨がヘルメットと同じくらい艶やかだったが気にしない。
他の皆にもヘルメットをかぶせ、最後に自分もヘルメットをかぶる。
エレノア達は何これ?といった様子でヘルメットをペタペタと触ったり白骨化した手でコツコツと叩く。
「これはヘルメットと言って、上からの落下物や転んで頭を打ったりした時に怪我をしない様に守ってくれる頑丈な帽子だ」
それを聞いたエレノア達は「おぉ、頭の防具!」「安全!」と言った感じの思念を飛ばしてくる。
労災は怖いからね。
「さーて、じゃあ皆装備も整ったし!早速穴掘りして行くぞ~!」
「「「「「カタカタカタカタ」」」」」
ニアやオルガ達が地下に向かって掘ってくれているから俺達、黄ヘル部隊は地上に向かって掘って行く事にする。
「まぁ、掘り方は斜めに適当掘りで宜しく」
実に的確な指示を飛ばすと率先して俺自ら壁を掘り始める。
掘る壁はニア達が地下に掘っている反対側の壁。
ツルハシなんて物を振るうのは人生初な訳だがゲームの中では数え切れない程使ってきた為何となく使い方は分かるので大丈夫。
一応背後を見て安全だけ確認すると大きく縦に振りかぶる。
ガギッ という音と共に頭にそこそこな衝撃が走る。
足元を見ればツルハシによって砕かれた岩壁の破片が転がっている。
あぁ…そう言えばこの空間、高さそんなに無いわ…
「ち、因みに今のはあれな、ヘルメットのあれだから。耐久性の確認だから」
「カタカタ」
エレノア達はヘルメットを擦りながら成程と言った感じに頷いていた。
出鼻を挫かれた感はあるが、気を取り直して作業を再開する。
暫く空間内に金属と岩が衝突する甲高い音が鳴り響く。密閉空間である為、音は中々に大きく音に驚いたニアとオルガがパスを通じて何事かと聞いてきた位だ。
小一時間程ツルハシを振り回した後、エレノア達に少し休憩する事と自由に休憩を取って良い事を伝え持ち場を離れる。
にしても…俺ってこんなに体力あったかな?
それに筋力も。
そう思い力こぶを作り触ってみるが、触り心地は半熟
卵。これでも全力である。
会社も事務職で常時座りっぱなし。ここ直近も硬い岩肌を背に爆睡してばかり。体力も筋力も衰えて当然の筈なのだが、すこぶる体調も良く。
何故か小一時間ツルハシを全力で振り続けたのに殆ど疲れを感じていないのだ。
ここ最近自分の身体の異変に対する疑念が高まりつつあるが、この現在の状況そのものが既におかしいのであまり気にしない事にする。
考えれば考える程、疑問は増えるばかりなので思考を紛らわせる為にエレノア達の方を見る。
白骨死体が壁に向かってひたすらにツルハシを振るう姿はかなりブラックな光景だ。
この光景をポスターに起用して『無くそうブラック企業』的なスローガンを書いておけば、それなりの賞を狙えそうな気がする程にはブラックである。
その後まだまだ体力が有り余っていたので、作業の終了を知らせるアラームが鳴るまでノンストップで掘り続けた。
途中からツルハシの使い方のコツが分かり、一振する度に岩肌がガラガラと崩れるのが想像以上に楽しく少々気合が入りすぎてしまった。
因みにエレノア達スケルトンも凄く活躍してくれており、俺一人と五人で約二十メートル以上も掘り進め初日としてはかなりの成果だと思われる。
この調子ならすぐにでも地上に出れそうだ。
採掘量は高さ約二メートル横は六メートル奥行き約二十メートル。
NPを消費して掘った場合一立方メートルにつき1000NP。つまり240000NP分も掘ったことになる。
なので掘り出された岩の量もかなり多く、ニア達が掘った分も合わせて中々の量だ。
量が量なのでNPに変換する際に若干期待はしたが、やはり結果は0NP。
作業を終えたその日の夕方頃、ニア達が美味しそうに『マロンと胡桃のイボイボパン』とかいうネーミングセンスがイマイチなパンを頬張っている横で俺はノートに今日の成果を書き込んでいた。
因みにエレノア達スケルトンは食事の必要は特にないらしく、というか食べれないの方が正しい気もする。とにかく彼等にはクッション付きの椅子を全員分購入して渡しており、今は全員向かい合って椅子に座り楽しそうに会話中だ。
問題無い様なので、改めて手元のノートに目を落とす。ノートには昨日と今日の成果を書き込んでおり、他にも明日の予定やちょっとした事を適当に書き込んでいる。別に誰かに提出する訳でも無いので只のメモみたいな物だ。
『作業二日目』
・作業効率上昇の為徳用スケルトンを購入
・スケルトンの代表をエレノアに
・ニア達の作業効率が昨日よりも上昇
・なんか最近ニア達大きくなった様な…?
・ツルハシを全力で振り続けても疲れ無し
・明日も採掘
ノートをぼけーっと眺めていると結構時間が経っていた様でニア達は既に食事を終えており各々が自由に行動していた。
気が付けばニア達とエレノア達が仲良く会話をしており、他の鼠達も楽しそうに肋骨や頭蓋骨の中を駆け回っている。
恐らく配下同士パスを通じて会話しているのだろう。
エレノアの頭蓋骨の中にも鼠達が入って遊んでいるらしく左右の眼窩から鼠が顔を出している。
現代アートかな?
目の穴から入って口から出て来るのを繰り返しているのが目に入ったが何も見なかった事にして布団へと入った。
ニア達には夜更かししない様に伝えたので問題ない。
眠いしさっさと…すぅ…
昨晩は廊下大好き少年のびたろう君並の爆速式睡眠導入術を披露して早寝した訳だが、俺が起床したのは一番最後というね。
まぁ別に寝坊という訳でも無いので問題ない。
ニア達が起きるのが早すぎるだけだ。
エレノア達に関しては寝ていないとか言っている。
気合入りすぎだろ。阿呆だろ。
とも、思ったがエレノアが言うはスケルトンは寝る必要が無いのだとか。というか寝れないのだとか。
可哀想に、何と残酷な種族なのだろうかスケルトンとは。睡眠を取れないとか人生の九割を損していると言っても過言では無いのに。
その事をエレノアに伝えたら『既に永い眠りに付いてますので御安心を』と返された。
なんか無駄に上手い返しをされた事にも驚いたし、昨日までぼんやりとした思念しか飛ばしてこなかったエレノアが急に一夜明けて流暢な思念を飛ばしてきた事にも驚きで、とにかく何が言いたいかって言うと二つ合わせてどうでも良くなった。
「そうかそうか、それなら安心だな」
それだけ伝えると、ニア達の食事の準備を思い出しニア達の元へ向かう。
『はーい、今日の朝ご飯はどっちが良い~?こっちの茶色いパンが良い鼠~?』
「「「ちゅーちゅー!」」」
『それともこっちのなんか良く分かんない形状のパンが良い鼠~?』
「「「ちゅーちゅー!」」」
あぁ、うん。
俺は深く考える事を止め、目の前の景色を静かに分析する。
まず鼠達が成体、幼体関係無く全員二足歩行している。あとなんか、またでかくなっている。
寝る子は育つとも言うし、つまりそういう事だろう。
そして、今は恐らく朝食のパンはどっちが良いかの多数決中と思われる。自分の食べたいパンの時に両前足を上に挙げてパタパタしている。凄く可愛い。
そして、一つ目のチョコメロンパンは十二鼠票。
二つ目のクロワッサンは十七鼠票。
クロワッサンの方が人気な訳だが票数的に約二鼠両方に前足を挙げた奴がいる。
しかし、その二票を差し引いたとしてもクロワッサンの勝ち…か。やるなクロワッサン。
『あっ、ナナシおはよ~ …でちゅ』
……。
何だろうか、今の取って付けた様な『でちゅ』は。
「あぁ、おはようニア」
『ナナシが起きるの遅いから先に始めてるよ~?もう食べてもいーい?』
「好きに食べて良いぞー。でもだからといって食いすぎるなよ。あと必要な物があったら何時でも呼んでくれ」
『あいよっさー』
自分達で食べたい物を食べてくれるならそれに越した事は無い。手間が省けるという物よ。
ニア達は早速、多数決で選ばれたクロワッサンのラッピングを袋を固定する係と引っ張って開く係に別れて器用に開けていた。
袋が開くと皆我先にとパンに群がっている。
そもそも購入したパンは一箇所に纏めて置いているのだが、わざわざここまで持ってきたのか。
パンの袋開けといい多数決したりと本当に器用な奴らだ。
朝から色々と起こりすぎて、今日はもう寝てしまおうかとも考えたが何とか考え直し作業を開始した。
そして、その日から三日が過ぎ。遂に地上行き採掘部隊、チーム【過労死】の活躍により地上への穴が開通の兆しを見せた。
スマホが顔面にビタッって落ちてくる奴ってすっごく痛いよね。特に鼻頭とか




