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ネズミとダンジョンマスター  作者: ヨコチ=チウム
第一章
10/39

#九匹目 穴掘り

更新遅れてメンゴスチン♡

リアルが多忙だなんて言い訳はしないとも!素直に申し訳。


昨夜は食後、程なくして眠くなったので鼠達には余分に購入しておいた毛布を使って寝床を用意してあげ、俺を含めその日は全員就寝した。


翌日、今が夜か朝なのかは定かでは無いが目が覚める。

普段ならこのまま寝続けるのだが今日は鼠の鳴き声がアラーム代わりに俺を起こしてくれたみたいだ。


何時までも寝る訳にもいかないので渋々ながらも布団から這い出る。

途中布団の中に違和感を感じたので手を突っ込めば何かが出に当たり、何かと思い掴んで引っ張り出せばニアだった。


ニアは昨日の夜は他の鼠と同じ毛布で寝ていたのに何故俺の布団に入っている?

取り敢えずその事は置いておき、主人たる俺が起きたのに配下のニアが間抜け面を晒して爆睡しているのは頂けない。


そのまま手の中のニアをくすぐりの刑に処す。


『くちゅっ!?くちゅぐっ!くちゅっぐったいでちゅちゅちゅちゅ!!!』


目が覚めてもくすぐるのを止めずに続け抵抗が少なくなってくるまで続けた。

そして現在、刑を執行されたニアは俺の枕の上でビクンビクンと痙攣している。


なかなか毛並みの手触りが良かった事に満足しつつ、その場で伸びをして凝り固まった身体を解す。


「ん~!良い朝だ!」


『ナナシどのいまはまよなかでちゅ』


「ん、ん~!良い夜だ!」


何故か時間を知っているオルガからの鋭い指摘はあったものの良い目覚めだ。


「さーて、皆集まったな。なら早速今日から皆には働いてもらう。仕事内容は簡単だ。俺が指示する通りに穴を掘る!それだけだ」


鼠達も皆目が覚めていた様なので全員を集めてからそう伝える。


『ニアからきいてはいましたが…ほんとうにそんなことであれほどおいしいしょくりょうをもらってよいのでちゅか?』


オルガはまだ少し不満なのか不安なのか、何かある様でそう聞いてくる。

他の鼠達もそんな美味い話があるのか?と言いたげな顔をしていた。



「問題無い。今現在において穴を掘ると言うのは最重要事項なんだ。穴掘り需要が高い今、見返りが高いのは当然の事。仕事の出来次第では様々な要望に応える事も可能だぞ」


そう伝えれば鼠達は「おぉ!」と一斉に沸き立つ。

と、言っても俺には「チュー!」としか聞こえないのだけれど。


ニアやオルガは配下に加わっているのでパスを通じて話が出来るが、他の鼠達とは無理だ。

まぁ、全員を配下にするのは面倒なので今の所はオルガの部下と言った感じにしている。


それはさておき、鼠達全員のやる気が出た様で早速仕事がしたいとの事なので仕事を与える事にした。


「よし、なら早速穴を掘ってもらう。まずはこの壁を斜め下に向かって真っ直ぐ掘って行ってくれ」


俺の布団や鼠達の寝床、更には購入した雑貨類が纏められている壁とは反対側の壁を指し示し指示を出す。

オルガには現場監督も頼み、穴の大きさは人一人が通れる程度の広さがあり斜面の勾配は急すぎない様にと細かい指示を出しておく。

他にも疲れたらすぐに休憩する事と、必要な物があれば言う事。無茶はしない事。安全には十分気を付ける事。何かあればすぐに報告する事。

等と息子を心配する母親の様な台詞だが、雇用者に怪我をされてしまうと労災とか色々と大変だからな。

当然の対応である。


オルガが鼠達の指揮を取るそうなので任せてみようと思い、布団に座り近くにいたイヴを捕まえ手の中で転がして遊びながら見守る。


そして、オルガ主導の元鼠達始めての仕事が始まった。

オルガはまず始めに役割の分担から始める様で、幼体九匹は爪がまだ発達途中な事もあり掘り出した土や岩の運搬担当。幼体だけだと心許ないので成体の五体も運搬担当になる様だ。


残りのオルガ含む成体達は穴掘り担当との事で、今は掘り方をどうするか話し合っている。

数分で話が終わった様で、早速オルガ達は壁に向かうと爪を使って掘削を始めた。


話し合いを聞いていたがチューチュー言っていただけなので内容はさっぱり不明であるが、取り敢えずは見守る。


ぼけーっと掘削の様子を眺める事約一時間。

気が付けば既にかなりの掘削が進んでいた。

掘り方は横一列に並んだ状態で真っ直ぐ掘り、ある程度掘ったら一段下げてまた掘り進む。

所謂階段掘りだ。

そんな感じの掘り方をしており一時間経った今、深さは約三メートル斜め四十五度程の傾斜の穴が掘られていた。

副産物として部屋の片隅に土や岩の破片が山積みになっている。


おぉ、すげぇ。あっという間だな。

勿論重機などがあれば一瞬だ。

だが手のひらサイズの鼠がたったの数十匹でここまで採掘しているのだ。十分驚愕である。


今も掘削は進んでおり、慣れてきたのか先程までよりも掘る速度が早くなって来ている。

早送りしているのかと思いそうな程の勢いで土や岩が削られていく。


俺も手伝いとして掘り出された土や岩の破片をスマホのカメラを使ってNPに変換する。

今回は前よりも量が多いので少しでもNPが貰えるのでは?とも考えたが、やはり結果は0NP。

まぁ所詮は土塊、そんなものだ。


それからも掘削は続き、二時間に一度休憩を挟みつつどんどん穴を掘って行く。

ニアもいつの間にか掘削に加わっており頑張っていた。


その日は昼食を挟みつつ合計八時間程掘削を行った。

結果約三十メートル程地下に掘り進められ、初日としてはかなりの成果が得られたと思われる。


現在ニアやオルガ達は美味しそうにパンや果実を食べている。

鼠達は甘い苺がお気に召したのか、パンを食べるのを止めて苺に夢中な者もチラホラ。


夕食を終え、鼠達はまだ眠たくないのか各々自由に行動している。

幼体達はアダムとイヴに群がり何かしており、成体の鼠達も壁際に集まって何かしていたり、毛布にダイブして遊んでいたりと楽しそうだ。


そんな中俺は、既に布団にくるまってニアとオルガ交えて話し合いと言う名の雑談をしていた。


「ふぁぁぁ…いやはや、今日も一仕事して疲れたなぁ。オルガ達もご苦労様。今日一日で随分と掘削も進んだし予想以上の成果で俺は満足だよ」


まぁ、俺は見ているだけで殆ど何もしていないんだけど。


『ニアがいるんでちゅから当然でちゅ!』


「そうだな。ニアも良く働いてたよ」


二本足で器用に立ち上がり前足をパタパタさせ精一杯アピールしているニアを指先で撫でてやりながら褒める。


『ふはぇ』


するとニアは嬉しそうに鳴きながら顔を仰け反らせ目を細める。


『そういえばナナシどの、われわれはなんのためにあなをほっているんでちゅか?』


ニアとスキンシップを取っていると、オルガからその様な指摘が入って来た。


「んん?えっと、あれ?もしかしてその辺の話ニアから詳しく聞いてない感じ?」


『え?ええ、われわれはあなをほるだけでおいしいごはんにありつけるうまいはなしがあるときいただけで…』


「あーー…はいはい。なるほど。ニア君やい」


『あいさぁ?』


目を細めたまま返事をするニアを指先で軽く小突く。

するとニアは仰け反っていた事もあり、体制そのままにコロンと後ろに転がってしまう。


『あだっ』


「ダメだろニア?仕事内容を説明するだけじゃなくて、目的や詳しい説明もしっかり伝えておかないと」


『伝えるつもりだったけど忘れてたでちゅ~』


ニアは仰向けに転がったままの姿勢でそんなことを言う。小学生の宿題を忘れた時の言い訳トップ3に間違いなくランクインしているであろう台詞そっくりだ。


つまりはそういう事なのだろう。


「はぁ…まぁ別に良いんだけど」


定時で帰れる(お前は残業)

総支給額〇〇万円(見なし残業60時間)

土日祝休み(毎日がエブリデイ)


説明というのは本当に大切である。

詳しく聞けば実際に言っている事とは大きく異なる事なんて良くある事だ。本当に。


悲劇が繰り返されない為にも俺はオルガへと俺とニアの目的を伝える。

ニアは鼠達の楽園を作る為。そして俺は社会とは隔絶された平穏な日々を送る為。


『おぉ…なんということでちゅ。われわれのらくえん…あぁなんとすばらしきひびき…』


どうにもオルガはニアの目的である鼠達の楽園という物に感化されたらしく、仕切りに首を振り感動している。


「まぁ、長期に渡る計画になるだろうが長らく頼むぞオルガ」


『ええ!ふしょうこのオルガ、ぜんりょくにてきょうりょくいたしまちゅ!』


「おう、頼んだぞ」


さて、今現在の現場監督でもあるオルガがやる気を漲らせてくれている事だしもう少し具体的な行動方針を伝えよう。


「いずれにしろ、まずは地下深くまで穴を掘る」


『なんでー?』


ニアが首を傾げて聞いてくるので俺は自信満々にその質問へと答える。


「良いか、現実世界は言ってしまえば限りなく自由度の高いオープンワールド。そして、サンドボックスゲーだ」


『おーぷん?サンドボ…?』


ニアとオルガが良く分からないと言った風に首を傾げる中俺は続ける。


「この手のゲームの序盤は素材集めが重要でな。レアなアイテムや素材ってのは基本地下にある。しかも深ければ深いほどレアな物が出てくる」


といってもそれはゲームだからであって現実ではその通りではないだろう。

しかし、俺は気が付いてしまったのだ。

ニアやオルガ達が掘削した岩や土等をNPに変換し処分する際表示されていた文字。


そう安山岩の破片。安山岩は火成岩の一種であり今居る付近が火山地帯、もしくは昔はそうであったという事が伺える。


「つまりはこの付近の地下には何らかの金属の鉱脈や何らかの宝石の原石等が眠っている可能性があるという訳よ!」


そんでもって、俺はその金属や宝石をNPに変換するも良し。ピッケルや剣…その他諸々にクラフトするも良し。つまりは王道の流れにして完璧。


「ん?なんか理解出来てないって感じの表情だな」


『当たり前でちゅ。序盤がどうの、サンドボとかオープンとか聞いた事無いものばっかりでちんぷんかんぷんでちゅ』


ニアは俺の説明に納得が行かなかったのかやれやれと首を振っている。


「まぁ、要するにだ。深く穴を掘っていけば凄い物が手に入りやすいんだよ。その凄い物を変換すれば多くNPが貰える。んで掘って出来た空間に変換で手に入れたNPを使って国を造る。完璧だろ?」


『なるほどでちゅ!』


ニアとオルガは理解が追いついたのか器用にも前足をぽんと叩きそう言った。

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