表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が幸せであれば  作者: 神崎寧々
4/6

ケジメをつけにやって来た。

なんで、あの時……


そんな悪い考えが横切った時、

コンコンと扉のドアが叩かれる。

ハッと顔を上げると、扉の向こうから友達の声がした。



「夢〜?大丈夫?」

 


なかなか戻らない夢を心配して観に来てくれたのだろう。



「ん…大丈夫。」



涙を拭って扉を開ければ、友達は一瞬驚いた顔をした後、呆れ気味に笑った。



「も〜、夢。泣きすぎ!ほら、早くメイク直して!」



ぽんっと肩を押されて鏡の前に立つ。

真っ赤に目を晴らした自分が映ると、少し冷静になった。


友達もメイクを直すのか、隣に並んでポーチを漁っている。



「や〜、やっぱり結婚式ってこう…くるもんあるわ〜。」


「…ね。百合と出会った大学生活思い出したら、止まらなくなっちゃった」


「そういえば、夢と百合って大学時代ぶり?」


「そう…なんか、社会人って忙しくない?」



苦笑しながら、夢もポーチを出して、メイクを直す。

涙でボロボロになった顔を見つつ、

とりあえずこの目の周りをどうにかしないといけない。



「あ、そういえばナミもさぁ〜」



百合の結婚式の話題から、共通の友人の話へシフトする。

他愛ない話を続けながらも、心に残るのは、大学時代に取り残した百合への面影だけだった。


どんなに願っても、あの頃には戻れないのに。

当たり前のように隣にいて、一緒に過ごした日々が輝いている。


ずっと忘れられなかった。


どんなに仕事に没頭しようとしても、頭の片隅には百合がいた。


突然やってきた百合の結婚式の招待状を見たとき、覚悟をした。


ケジメをつけにきたつもりだった。


この気持ちに。


この誰にも伝えられない想いに。



「ゆめ〜。直せた?そろそろ集合写真だから行くよ。」


友達の呼びかけに、落ちていた視線をあげる。

今日は、かつての、大事な百合の幸せを見届ける為に来た。


赤いリップを唇へひく。



「よし。」



準備は整った。

不意をつかれて、揺らぎはしたが、

まだ、耐えられる。


コスメを全てポーチへしまうと、先に出ようとする友達を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ