第2話 初任務
やばい、死ぬーーーー
やっと訪れた初任務、だが現実は厳しかった。
角を曲がり一方通行の細い路地に入ると前方に何も居ないことを確認した、そしてすぐさま上空も確認し、そして最後に後方を確認した。
すると後方からはレオナを追い掛け5体の死人が走ってきていた。
まさか走るタイプとはーーーー
まるでバ〇オ〇ザー〇並の全力疾走でこちらに近づいてくる死人にレオナは小銃を構え照準を合わせた。
「こちら第二部隊αのレオナ二等兵、βの状況はどうですか」
レオナはそう無線に呼びかけると無線からは銃声と共に叫び声が聞こえた。
「こちらβのシャル一等兵!現在死人と交戦中!至急二等兵に救援を求める!」
恐らく声の焦りからしてシャルと言う人だけしか残って無いのだろう、正直な所助けるのは不可能だった。
「分かりました、片付き次第向かいます」
そう言い残し無線を切ると小銃の引き金を引いた、1体、2体と綺麗に頭に当て4体を仕留めた、しかし5体を仕留め損ねると腰に携えていた刀を抜き死人を切り裂いた。
「まだ訓練が足りないか……」
幾ら反動が大きくないとは言え13歳の身体では限界があった。
身長は未だに150前後、相変わらず容姿も女の様だった。
軍服を着ている死人の死骸を発見し何が使えるものが無いかを漁るが何も無くレオナはその場に座り込んだ。
幾ら初任務とは言え流石に酷い状況だった。
第二部隊αとβに別れ7人で行動をしていたが任務開始30分も経たない内に皆死人に殺されてしまった。
任務内容はニュートリアと言う街の調査、この作戦には同盟国のバイドリアと言う国も参加していて本来ならば合流して任務を進める予定だった、しかしレオナ以外皆死んだ今、バイドリアの兵士も期待は出来なかった。
ニュートリアはそこそこの大きさの街で総人口10万の街、そして現状を調査し報告と言う任務内容だった。
その時無線に反応があるのが気が付き急いで無線をつけると本部からの連絡だった。
「レオナ二等兵に告ぐ、ニュートリア調査から奪還へと任務内容を変更する、3日後に援軍を送る、それまで耐えろ」
それだけを残し無線は切れた。
捨てられたーーーー
二等兵など幾らでも代わりがきく、超再生の能力者であっても抗体でも無い限り死人戦では使えない……そんな二等兵をわざわざ助けるなんて事を軍はしない。
3日後に援軍を送ると言っていたが恐らくあれは嘘、レオナが生きる道はおよそ10万の死人を殺す事のみだった。
ふざけるな……そう叫びたかったが死人が反応してこちらに来る、無言でレオナは壁を思い切り殴った。
ここからは殆ど持久戦に近い、一先ず拠点となる場所、そして食料、武器となるものの確保と生存者を探す事にした。
ゾンビサバイバルには憧れていた……しかし本当にするとなると嬉しさよりも恐怖の方が当たり前ながら大きかった。
しかし時代のせいなのかスーパーの様な存在が見当たらなかった、露店はかなりの数があるが当然のごとく食べ物は皆腐っている……食料は国から持ってきた缶詰三つしか無くもっても1週間と言った所だった。
歩き始めて30分、一つの違和感があった、死人の姿が全く見当たらなかった。
この街の人口は先程も言ったが10万程、そしてここまで死人が居ないとなると考えられる事は一つだった、生存者の存在。
そして死人達はその生存者が籠城している建物に多く集まっていると踏みレオナは近くにあった民家に入った。
1階をすべて確認し、2階を確認しようとすると腐臭がした。
腐臭する所に死人あり、軍で習った言葉だった。
レオナは音を立てずに倒すため刀を抜きゆっくりと扉を開ける、するとそこには親の体を一心不乱に食べる見た目はレオナと同じくらいの少年の死人が居た。
幸いレオナには気づかず一心不乱に親を食べていた、ゆっくりと後ろから近づくと胸に手を当て小さく呟いた。
「この少年に慈悲を……」
息を整えると頭を一気に刺し絶命させた。
死人を殺す前にレオナが呟いている『慈悲』はこの世界の決まりではなくレオナ個人が言っているだけだった。
中学生の頃に見たあるZネーションと言うドラマ、それに出てくるゾンビを倒す前に人々が言う言葉だった。
その『慈悲』には神の施しをと言う意味が込められている。
少年が死んだのを確認すると部屋を出ようとした時、クローゼットから物音が聞こえた。
まだ居たのかーーーー
ゆっくりとクローゼットに近付き勢いよく扉を開け刀を突き刺そうとした時出てきた人を見てその手を止めた。
レオナと同じ金髪のロングヘアーの見た目は16、7ぐらいの少女が怯えながら出てきた。
「ぐ、軍人?」
少女はレオナの格好を見て嬉しそうにそう言った。
「確かに軍人だがなんの権限もない下っ端の二等兵だ」
レオナはそう言うが少女は依然として嬉しそうな顔をしていた。
「何故そんなに嬉しそうなんだ?」
「だって……久しぶりに、久しぶりに生きてる人に会ったから」
そう言いながら泣き出してしまう少女、だが内心レオナも少し嬉しかった、こんなにも早々女性とはいえ仲間が見つかるとは夢にも思っていなかった。
「いつからそのクローゼットに?」
「一週間前からかな?」
その少女の言葉に驚いた、かなり燃費の良い体なのか少女は元気そうな顔をしていた。
「一週間前……取り敢えずこれを食べろ」
そう言い缶切りで桃の缶詰を開けると少女に渡した。
「良いの?」
缶詰を受け取り困惑した表情でレオナを見る少女、これからの事を考えると少しでもお腹を満たして欲しかった。
「倒れてもらったら困るからな」
そう言うと少女は『ありがとう』と言うと凄い勢いで食べ始め1分もしないうちに全て平らげた。
「ありがとう小さな軍人ちゃん、私はセレナ、本当にありがとうね」
「俺はレオナだ、あと女じゃないからな」
そうレオナは言うと少女は驚いた顔をしていた。