第20話 雪のバラ
地面の足跡を確認しながら進むミサの後ろをレオナは傷が3つ付いたタグを眺め歩いていた。
四年前は2つだったタグも今は3つ、このタグの3つ目の傷は1年前、目の前に居たのにも関わらず救えなかった仲間フィーネの傷だった。
あれは忘れもしない冬、あの時レオナとフィーネで拠点の外の安全を確認している途中に起こった事だった。
一年前ーーーーー
「寒いねー、レオナ」
「だな、それにしても仲間増えたな」
雪の降り積もる道を他愛も無い話をしながら首のマフラーを直し歩くレオナ、隣にはレオナと同じ金髪の少女フィーネが嬉しそうに後ろで手を組みながら歩いていた。
「お前銃位構えとけよ、不用心だぞ」
「いいの!レオナが守ってくれるでしょ?」
「はぁ、まーた恋人みたいな事言って……」
呆れつつも少し嬉しそうに笑うレオナ、フィーネに出会ったのは2年前、国を出てから一年経った時に死人の群れに囲まれているのを助けたのが出会いだった。
そこからフィーネはレオナに少なからず好意を持っていた。
「レオナは女の子だから付き合えないもんねー」
笑いながらいつものジョークを言うフィーネ、死人だらけになってから一緒に居てこんなにも心が安らぐ人物は居なかった。
「もうそのジョークは良いよ」
雪を蹴りフィーネの方を見てレオナは言うとフィーネは笑顔でこちらを見ていた。
フィーネの背後に居た死人を銃で撃ち殺すとレオナも笑い掛け前を向く、すると前方にも死人が多数居た。
「なんか死人の数が増えてんな」
そう言い銃を構えると次々に死人を倒していく、そしてひと段落して周りを見るとフィーネが居なくなっている事に気が付いた。
「おーい、フィーネどこ言った?」
辺りを見渡して見るが雪か雪が積もった木々しかない、何処にも見当たらなかった。
過去にもこんな事があったが今回は周りに死人が多い事も考えると少し心配だった。
「フィーネーー!!!」
一方その頃のフィーネは雪が積もった道をふらふらと歩いていた。
「確かにこっちにあった気が……」
途中で横目だが見えたスノーローズという花、過去にレオナが見てみたいと言っていた事を思い出して道を戻っていた。
スノーローズは雪が降る場所にしか咲かず雪が解ければ花も溶けると言う不思議な花だった、その分花は綺麗で美しく白い宝石とも呼ばれる程に美しいと言う話だった。
「あれー?おかしいな……」
木の根本に生えていると噂のスノーローズ、フィーネは下ばかりを見ていた。
背後から迫る死人、だがフィーネは自分の足音とスノーローズの事で全く気配に気が付いて居なかった。
「あ、あった!!」
木の根元に咲く1輪のスノーローズ、美しい白色に見とれていたが直ぐに摘み取るとレオナの元へ帰ろうと後ろを向いた、すると死人がすぐ目の前に迫り、フィーネに襲いかかった。
バキッと言う音と共に不意にレオナが持っていた双眼鏡のレンズにヒビが入る、嫌な予感がした。
「フィーネ……無事でいてくれ」
そう言いもう1度同じ場所を探そうとした時、後ろから足音が聞こえレオナは銃を構え後ろを振り向いた。
だがそこに居たのは死人ではなくフィーネ、だが血まみれで腕から大量に出血していた。
「レオナ、やっちゃった……」
笑顔で涙を流しながらそう言うとその場に倒れるフィーネ、レオナは急いでフィーネの元へと駆け寄った。
「おい!フィーネしっかりしろ!」
傷口を確認して包帯を巻こうとするレオナ、だがフィーネはそれを止めた。
「いいの、私はもうすぐ変わっちゃう、だから今すぐ殺して……」
「馬鹿!絶対助ける!そうだ、腕を切り落とせば!!」
そう言い必死になるが首を振るフィーネ、噛まれたのは15分前、もう手遅れだった。
「なんで……なんでこんな事に……」
フィーネの右手を握りながら解決策を考えるレオナ、だが何も浮かばなかった。
「ねぇレオナ、これ見て……」
震える手で差し出したスノーローズ、それを見た瞬間レオナは花の美しさに引き込まれた。
「綺麗だな……まさか覚えていたのか?」
「うん、レオナが好きだって行ってたから……」
そう言ってスノーローズを渡すフィーネ、レオナは必死に泣くのを堪えて笑顔を見せていた。
「もっとレオナと一緒に居たかった、皆と旅したかったなぁ……」
どんどん呼吸が小さくなるフィーネ、もう時間の問題だった。
「レオナ、助けてくれてありがとうね、大好きだったよ……」
その言葉を残し息を引き取ったフィーネ、それを確認するとレオナはフィーネを下ろし銃を構えた。
「ありがとう……俺も好きだったよ……」
そう言い引き金を引く、辺りには銃声が響き、その後にレオナの泣き声だけが辺りに寂しく響き渡った。




