プロローグ 始まりの瞬間
そこの角を曲がればそこにはゾンビが人を捕食していないか、朝起きてニュースを見たらゾンビが発生していないか、そんな事を少年はずっと考えていた。
少年の名は四ノ宮 春樹、ゾンビサバイバルに憧れる平凡な高校二年生だった。
平凡なと言うのはそのままで何もかも平凡だったから平凡な高校生なのだった。
容姿も平凡、運動能力も平凡、学力も平凡、何をやらせても人並みの中途半端な人間だった。
今日も平凡な学園生活を終えて帰路につき駅のホームで本を読みながら順番待ちの列の先頭で電車を待っていた。
ふと電車が近付いてきているのに気が付き携帯で時間を確認すると17時46分、電車には珍しい1分の遅延だった。
「こんな事もあるんだな……」
そう呟き本を閉じた瞬間春樹は後ろから勢い良く突き飛ばされた、荷物は辺りに飛び散り春樹は宙を舞った。
一体なにがーーーーー
以上に滞空時間が長かった、確かにビルなどから飛び降りる時などは以上に長く感じる、だがあまりにも長過ぎた。
ホームから線路まではあったとしても約2mほど、それに対して春樹はかれこれ1分以上同じ体勢のまま宙を舞っていた。
幸い顔がホームの方を向いていて押した犯人を確認する事が出来た。
自分の居た位置の後ろに居た人物を確認した時そこには生まれてから何万、何億と見た母親が居た。
だが不思議と春樹は悲しくは無かった、冒頭に平凡とは言っていたがそれは飽く迄も春樹のスペックの話し、家庭は全く平凡では無かった。
父とは春樹が10歳の頃に離婚し、その直後医師に精神障害と伝えられた。
そこから母は突然奇声を上げたり春樹を殺そうとしたり……そんな環境から春樹はストレスの捌け口、ゾンビに頼るしか無かった。
母親に殺されて人生終了かーーー
そう思い春樹は目を閉じた、それと同時に辺りには春樹が電車に衝突する鈍い音と人々の悲鳴が響き渡っていた。