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魔物に会いました

 そんなこんなで祠を目指して進んで行く私だけれど、


「ほら、上から来るぞ! 気をつけろ!」

「うわーん」


 後の雑魚戦をこっそりクロヴィスに全部お任せしようという私の目論みはあっさりと気付かれて、現在私は戦わされていた。

 確かこの水系の空飛ぶ魚のような魔物は雷系の魔法が効いたよなと呪文を唱えて――実は戦闘用の選択肢に軽く触れると、勝手に呪文が私からこぼれて決めポーズまでされるので私はただそれを選ぶだけだったのだが――雷を降らす。


「“雷の滝《サンダ―・フォール》”」


 力ある言葉と同時に、その魚の頭上に球状の雷が浮かび、地面に向かって雷を降らす。

 やがて上手く倒せて魚の肉を手に入れる。

 ただこの魔物の魚の肉には毒があるので、この毒を抽出して敵への攻撃に使うのだ。

 

 そして素手では触れられない、魔法のかかった特別な布を上からかぶせて回収する。

 ちなみにこの毒は媚薬の材料にもなったりする。

 でも需要があまりなさそうだったのは、皆さんが健全な恋愛を頑張っている証なのだろう。


 さて、そこで私はクロヴィスに良く頑張ったなと言われてちょっとうれしくなりつつ私は思い出した。

だから、くるりと振り返り私を静観している杖の妖精のリリスに、


「リリス、自動追尾システムで敵を倒して欲しい」

「えー、面倒臭い」

「私だって面倒くさいんだもん! こんな延々と敵と戦うんじゃなくて、勝手に杖から魔法が放たれて敵を倒す効果があったなら、それを使った方が安全だし楽だもん!」

「クロヴィス様、どうしましょう、これ」


 何故か杖の妖精リリスは、私を指さしてこれと告げて、クロヴィスに許可を取っている。

 ちょっと待て、私はご主人様だぞ!

 そう私が言う前にクロヴィスが頷いて、


「これの言う事は聞かなくていい」

「はーい、分かりました―。ごめんねー、エリ」


 これでもっと気楽に居られるなと杖の妖精のリリスが言っているが私としては、


「な、何でクロヴィスの言う事をそのまま言う事聞くの!」

「長いものには巻かれる主義なんだ、てへ」


 もしやこのリリスは、クロヴィスがラスボスだと気付いているのだろうかと私は勘ぐるが、ここでは聞き出せないしもし違っていてもリリスにその情報を知られてしまう。

 それが更にクロヴィスに流れたなら……ラスボス戦だ。

 それだけは絶対に避けねばと、私が思っていると、


「それにもうすぐそこが祠だぞ。だからもう敵は出てこないだろう。祠自体に魔物を退ける効果があるから」

 

 クロヴィスに言われ、もう敵と戦わなくて良いと私は元気になったのだった。

 






 祠は白い石の柱と壁に、複雑な唐草模様が金と銀で彩りを添えていた。

 そしてそれ以外にも祠自体が青白く輝いている。

 いかにも何か御利益のありそうな怪しい存在だが、そこで、


「ほら、あの呪文を唱えるんだ。そうすると素材やアイテムを一つもらえるんだろう?」


 クロヴィスに言われて思い出す。

 確か高難易度のアイテムや素材も、ごくまれにランダムに手に入った記憶があるが……普段は、“宝物はここまでやってきた君達の友情と勇気である”といった紙の入った空の小さな宝箱だ。

 私はあれが出ると、出るたびに精神的な何かががりがり削られて行く気がするのだ。

 どうせなら何かください、と思うのだ。

 ただもしかしたら良い物かもと期待しながらそこで、


「ほら、エリ、先にやれ。やらないなら俺が先にするぞ」

「ま、待って……えっと確か手を合わせて……“じもえたなえ~、たなえじもえ~、じもえたなえ~、たなえじもえ~”……わっ、祠が光り始めた!」


 あの紙が入った宝箱ではありませんようにと私は、誰だか分からない神様にお願いすると、その祠から何かが私に投げつけられた。


「ごふっ! ひ、酷い……これは!」


 そこにあったのは、先ほど手に入れそこなった“ローレライの涙”だ。

 額に当たって痛かったが、まさかこんな良い素材が手に入るなんて思わなかった。

 ちょっと先ほどの三人は酷過ぎるんじゃないかなと思っていた気持ちが、私の中で完全に吹き飛んだ。と、


「よかったな、それはさっきの宝石だろう?」

「うん、こんな良い物が手に入るんだね」


 私は嬉しくなって宝石を持ちながら小躍りする。

 そんな私をクロヴィスが優しく見つめてから、クロヴィスもその祠に呪文を唱えるが、


「小さな宝箱? 中には……“宝物はここまでやってきた君達の友情と勇気である”」

「わーい、クロヴィスは外れだ―!」

「……エリ、ちょっと来い」

「そう言われて素直に行く私だと思うなよ! って」


 そのまま手をひき寄せられて、私はクロヴィスに額にキスされた。

 なんで突然と思って私が見上げるとクロヴィスが笑っていて、


「俺をからかった罰だ」

「う、うにゃ、覚えてろおおおお」


 何だかドキドキしてしまった私が恥ずかしい、そう私が思って、しかもからかってくるのが気に入らなくて、クロヴィスに叫んだその時だった。


「はー、今日も仕事かぁ。適当に馬鹿な男でも騙すか」


 傍の岩の壁が開いて、一人の美しい少女が出てきたのだった。









 面倒臭そうに出てきた彼女は、私達を目にすると動かなくなる。

 そしてこの黒く長い髪に青色の瞳とこの顔はどこかで見たことがあるなと思って……思い出した。


「ローレライに、似ている……」

「そういえば昔この洞窟にはローレライという人を魅了する女の魔物が住んでいた、という伝説があったな」

 

 クロヴィスが思いだしたかのように呟く。

 それに伝説があるだけで出会った人は? と私は疑問符を浮かべるがそこで、その突然現れた美少女が、


「何でこんな所に人間がいるの……海蛇サーペントはどうしたのかしら? 今日は人が出入りできないようにしておけって命じておいたのに」

「えっと、“青と白の海蛇シーサーペント”なら私が倒しましたけれど……」

「ええ! こんな小さくて可愛いのに強いんだ。でも倒したんだ……でも私の“ローレライの涙”は持っていないみたいだね……じゃああの“ローレライの涙”は別の奴に持って行かれたのかな? 気配がないし」


 深々と嘆息する彼女だがそこで、ポケットからゴソゴソと何かを取り出す。

 それは薄い水色の宝石で、“ローレライの涙”そのもので、


「“目覚めよ”」


 彼女が告げるとその宝石が輝きだして、再び“青と白の海蛇シーサーペント”を創りだした。

 そして彼女は、


「この子は大事な番犬代わりだから、もう倒さないでくれると嬉しいな。代わりに“ローレライの涙”を5つあげるから」

「いえ、別にもらわなくても……」

「受け取ってもらえないと、君達を殺さないといけなくなるからそれは避けたいんだよね。契約で縛って私の秘密を他の人に話さないようにしないといけないからさ」


 表情は笑っているのに目は笑っていない。

 その静かな敵意に私はまっすぐに見つめ返して、


「分かった、もらうよ」

「そうしてもらえると助かるよ。そちらの黒い人もそれでいいね? 良かった―。私も人間との混血が進んでいるから、街に出ないと退屈で生きていけなくてさ―」


 そう言い出した彼女、ローレライの末裔は、ライと言うらしい。

 ちなみに彼女は普段酒場で歌ってアイドルになっているらしい。

 理由は、魔物として戦うより安全で金になるからだそうだ。

 ちなみにローレライである彼女の涙で、“ローレライの涙”という宝石は出来、たまに作って売っていたりする。


「もし欲しかったら依頼があれば手に入れられるよ、君は可愛いし」

「か、可愛いって」

「だって君には男を惑わす魅力があるし。私の魅了も相当強いけれど、なんとなーく君には勝てない気がするんだよな」

「そんなものないです! く、でもそんなものがあるならこの世界で彼氏を、逆ハーレムを作るしかないのか」


 私は真剣に検討を始めたが、まあ頑張ってねとライに適当に流された。

 そして仕事があるからと彼女が、私達に“ローレライの涙”お約束通り渡して契約で縛ってその場から去っていく。

 そして私はというと、


「……ああもう、疲れたし、もう帰ろうよクロヴィス」

「そうだな、祠まで来たわけだし。ここで戻っても構わないか」

「よし、こういった遺跡から瞬時に元の出入口にまで移動する“出入口の縄梯子”! これを使うと……ああ!」


 そこで私のそのアイテムはクロヴィスによって三分割されてしまった。

 これではもうこのアイテムは使用できない。

 酷いよと思って見上げると、


「そうやってすぐに楽な方法を取ろうとするな」

「で、でも……」

「少しでも戦闘慣れするためだ。エリには必要だろう?」


 私のためだというのはわかるが、もう少しクロヴィスは甘やかしてくれてもいいのではなかろうかと私は思ったのだった。






 頑張って敵を倒しつつ帰還した私だけれど、


「やったー、ようやく出口まで来れたようぅ。夕暮れまでには少し時間があるみたい」


 ほんの少し傾いた太陽が私を照らす。

 ようやく出口までこれたと喜んでいるとそこで、


「……それでこの砂を採取するのか?」

「! そうそう。これも原料になるんだ……爆弾の。敵に投げて、魔法で火を付けるタイプや、投げると敵に当たった衝撃で爆発するものとか、時限式とか……敵が密集していると、使いやすくて良いんだよね」

「……ふと思ったが、それは魔法でも出来るだろう?」

「魔力を消費しなければ、普通の仲間にだって使えるし?」

「つまり俺に持たせるのか?」


 クロヴィスにそう言われて私は考えてしまう。

 そういえばこのクロヴィス、ラスボスなだけあって実は魔法攻撃も結構強力なものが使えたりするので、正直爆弾はいらない。

 そうなってくると新しい仲間を増やすのが良さそうなのだが、


「クロヴィス、私達以外に仲間は……」

「必要ない」 

「いえ、でももしもの事を考えるのも……」

「そもそもどうして仲間が必要なんだ? さっきは爆弾の話をしていただろう?」

「クロヴィスは強いから必要ないんじゃないかと思って。だから爆弾はどうしようかなって」

「……その分別の調合に時間を使ったらどうだ? 他にも……杖は最強といえる物があるし防具も良さそうだしお金もあるし……なるほど。戦闘にのみ時間を割いても何ら問題はないな」


 クロヴィスがにやりと笑って私の方を見た。

 どうやら私は墓穴を掘ってしまったらしいと焦るが、そこで私は気づいた。

 そもそもゲームの主人公があの町に来た理由は、もっと上級の魔法使いの資格を取るためで、だから、


「い、依頼をこなさないと、減点されちゃうんだよ!」

「……そういえばそうだったな。適当に高ポイントの依頼を受けさせて、それで後は戦闘に……」

「で、でもそんな高いポイントの依頼なんて……」

「別に調合だけが依頼とは限らないだろう?」


 とても詳しいクロヴィスのその笑顔に私は、絶対にドラゴンやら魔王やら未知の遺跡の奥に住まう恐ろしい怪物やらとの戦い、そんな危険なものに私を連れて行く気だと気付いた。

 やっぱりクロヴィス自身がラスボスだという余裕があるから、そんな風に進めるのだろうか。

 どちらにせよ私の旗色はかなり悪い。


 どうしようどうしようと考えて私は、ようやく諦めて、


「……戦闘はもう少し軽い物でお願いします。そして調合の依頼もやらせて下さい」

「それは素直に連れだされるという事だな?」

「うう、はい。……は! まさかそれが狙いで過剰な要求を!」

「今更気付いたか。もうなしには出来ないぞ? それに毎日、エリの家に俺は行くし」

「……毎日少しずつ私の家を直してくれるんでしょう? はあ、いい加減諦めるか」

「そうだ、諦めが肝心だ」


 楽しそうに笑うクロヴィスに、やっぱり絶対あらゆる手を使って逃げてやると私は考えたのだった。







 浜辺の砂を集めて、ついでに浜辺周辺にある植物を採取する事にした。

 この海辺にはヤシの木のようなものがあり、一年中、ヤシの実のようなものが採れるのだ。

 しかも自然に生えているので誰でも自由に取り放題だったりする。


 そんなわけで私達は、この地域に生えている“棘ココナッツの実”を取りに来たのだ。

 ただ木が高いので、登らないといけないので私は木の傍まで来て、そして登ろうとしたその時だった。

 熟しすぎたその棘ココナッツが私の頭上で真っ二つになり、


「うわぁあああ、何でぇ」


 中から棘ココナッツのミルクという名の白い液体を、私は頭からかぶってしまう。

 ついてないと私が涙目になっていると、クロヴィスが近づいてきて、私の頬をぺろりと飲めた。

 その温かい舌でなめられる感覚が、味見をされたような気がしてどきりとしてしまうが、


「……甘いな」

「そ、そうだね、このココナッツミルクは凄く甘くて香りが良くて……」


 そこで私の顎をくいっと持ち上げて、


「……このまま連れ去ってやろうか」

「……え?」


 そのクロヴィスの瞳が熱っぽくて、私は一瞬逃げ出したい気持ちになるのだが、そこで杖の妖精のリリスがやってきて、


「ねえねえ、私、これ舐めていい? これ大好物なんだ」

「! そ、そうなんだ。良いよ」

「わーい」


 そこでリリスがぺろぺろ私の頬を舐めたりし始めるが、クロヴィスは何だかむすっとしていて、そこで私の手を引いて、


「今日はこの港町に泊るぞ。こんな格好では帰るのもきついだろう。宿で体を綺麗にしろ」

「う、うん」


 こうして私は港町の宿に泊まる事になったのだった。




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