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魔物

「うう、やっと頂上に着いたよぅ」

「私ももう、ぼろぼろだよぅ、早くあの泉に入れて~」


 私の言葉にリリスが呻くように同意する。

 戦闘に遭遇するたびに私はクロヴィスに放り出されて、三角錐型の精霊の魔物などと戦わさせられた。

 ライとフィオレはどうしていたかというと、ライはピクニック気分で“森タケノコ”を採ったり、“玉ねぎボンボン”と呼ばれる玉ねぎを手に入れたり、“キャラメルの雫”という滴り落ちるやわらかなキャラメルソースが実の中に詰まった茶色の木の実を集めたりしていた。

 そういえばキャラメルソースもこういった出来たものが果実としてとれるのはいいと思う。


 ライが見せてきたそれを見て、これをいくつかもって帰りあとでプリンにしようと思いながら私は次々と敵を倒していく。

 他にはチーズケーキを冷蔵で持ってきたので、それにかけて食べよう、夢が広がるなと思っていた。

 そしてフィオレも時々手伝ってくれるけれどそれは欲しいアイテムがでそうな時だけだった。


 兎とか兎とか兎とか。

 途中、発情した兎に襲われかかるという私と同じ目にあったので手助けしたら、


「や、やはり私はエリの戦闘訓練の邪魔をしてはいけないな!」

「! 手伝ってくれてもいいじゃん!」


 といった会話があった。

 ただクロヴィスとは昨日の事もあるフィオレは、クロヴィスにどこかよそよそしく、クロヴィスもフィオレを空気のように扱っている。

 なんとか仲直りできないかなと私が思っている内に新たな魔物が襲ってくる。


 そこで私はタマがどうしているのかを探してみると、宝石のようにキラキラ光る、“宝石蝶”を追いかけているではありませんか!


「タマ、その蝶を捕まえて!」

「にゃーん」


 タマは即座に飛び上がりその蝶を口に咥えた。

 そしてそのまま私の方に持ってくるので、“更紗の虫カゴ”を取り出す。

 これは“宝石蝶”用のアイテムで、蝶の鱗粉を集めるのに使う。


 この“宝石蝶”は何も食べずにずっと飛び回り、気づかない内に増える謎の生態をしており、この鱗粉はとある種族の羽が壊死する病に効くとされている。

 実際に効くので、事前にそのイベントをこなしてからあそこに向かうことになるのだが。

 ただこの鱗粉は他にも使い道があって、普通の石をこれで磨くと夜にランプのように輝く効果が得られる、等様々な使い道があり、本来一般的な使われ方はその灯りやら何やら日用品であることが多い。


 とはいえゲームの時にうっかり捕まえ損ねてその鱗粉を高い値段で購入したのはあまり良くない思い出だったなと私が思っているとそこでフィオレが、


「やはりその猫は招き猫のようだな。あんなに貴重な“宝石蝶”が出てくるなんて」

「にゃーん」


 自信満々になく猫のタマをありがとうねと撫ぜてやると嬉しそうにタマは喉を鳴らす。

 やはり何処からどう見ても、ただの猫だ。

 走行しながら私はやや疲れ果てながら頂上についたので、湧き出る水にリリスの杖をつける。


 リリスが幸せそうな顔になる。

 その間に私たちは周りを見回して……見つけた。

 空に浮かぶ謎の種族の移動する島である。


 あそこに住んでいるのが誰なのかを私は知っているし人間とも交流がある謎の種族ということになっているのも知っている。

 そして大体の距離から、


「しばらく、アルファレルの山に滞在するみたいだね。確かあの都市って、高い山の近くで二週間程度滞在するんだったっけ」

「よく知っているな、エリ」


 クロヴィスにそう言われて私は、有名な話ですからと適当に流す。

 本当は幾つもの条件をクリアしないと聞けない話なのだけれど、とりあえず私達のグループでは有名な話、みたいなので誤魔化すことにした。

 そしてそれ以上クロヴィスも含めて誰も追求してこなかったのは良かったと思う。


 と、フィオレはそこにはいっている水を汲み上げて魔法の材料にすると言っており、ライは無言で一杯ほどガラスの小瓶で組み上げて、コルクで瓶詰めにする。

 フィオレならともかくライは何に使うんだろうと私が思って聞いてみると、


「今日の効果は、猫耳が何処からともなく生えてくる効果だから、あのフェンリルに仕込んでやろうかと」


 アイツに猫耳が生えたらさぞかし面白いだろうなとライが嗤う。

 そしてそれを聞いたフィオレが、


「よし、私もアンジェロに猫耳をプレゼントしよう、ぐふ」


 黒く嗤うフィオレを見ながら水を汲む。

 二人共何をやっているんだろうな、上手いことやり返されるんじゃないのかなと私が思っていると、そこでクロヴィスがその水を手ですくい、私の頭にかけた。


「な、んゃにするにゃ! にゃにゃ!」


 そこで口調がおかしくなると同時に頭に何かがついているのを感じる。

 嫌な予感がして水面を覗くと、私の頭に猫耳が生えている。

 

「にゃんで!」

「いや、エリに猫耳が生えたらもっと可愛い気がしたが、そこの猫がやけにキラキラとした目で見ているので……」


 そこでクロヴィスに猫耳が引っ張られて、同時にポンといった音と白い煙が上がり猫耳が解除された。

 私は嬉しかったのだけれど、タマが先ほどと違いしょんぼりしている。

 何となくいじけているタマに、干した魚を渡すと機嫌を戻してくれたのはいいとして。


 とりあえず山頂で持ってきたサンドイッチとデザートのチーズケーキに採りたてのカラメルソースをかけて頂く。

 それから山を降りたのだけれどそこで、ちょっと気になっていずれ行くはずのイベントの場所、滝の裏側にあるその入口を覗きこんだ私だけれど、


「え?」


 石が水に濡れていたらしくツルッと滑った私は、そのままイベントのある滝の裏側に入り込んでしまったのだった。

 





「うぎゃああああ」


 私は悲鳴を上げてそのまま滝の裏側辺に落ちそうになるが、そこで左腕の手首を誰かに掴まれる。


「大丈夫か! エリ」

「う、うん、何とか……」


 ぷら~んとクロヴィスに腕を掴まれながら宙釣りになる私だけれどそこで、私のポケットから、ころんと以前の魔族の遺跡で手に入れた謎のハートが三つついた石板が零れ落ちる。

 薄くぼんやりと光り輝いているのが見てとれる。

 もしや、自分からイベントを引き起こすためにこんな……。


 確かこの遺跡の場合、中には精霊型の魔物が大量にいたはず。

 そんな場所に行かさせられたらまた戦闘三昧である。

 私はクロヴィスに引き上げてもらいながら、


「ま、まあ、物を落としてしまうのもよくある事だよね」


 私がそう呟くと、そこでクロヴィスはふっと微笑んだ。

 ようやく引き上げられた私は嫌な予感がした。

 そして嫌な予感ほど的中する物で、 


「エリ、あの霧みたいになっている滝の裏側で、何かが光っているな」

「き、気のせいだと思われます」


 そう言い返す私だけれど、クロヴィスは笑っている。

 そして助けを求める様にフィオレを見ると、半眼で見られた。


「エリ、怠ける気か」

「ち、違う、このまま帰ろうよ、たまたまアレを落としただけで……」

「薄っすらと魔力を感じる。あそこに何かあるのは確実だろう」

「で、でも遺跡に入るのは危険だし、もう私一杯今日は戦ったし」


 つい口を滑らせてしまった私は、そこでライに、


「遺跡があるのか? “古い王国”の? どうしてエリはしっているのかな?」 

「い、う、うぅ……文献で……で、でも言ったらもちろんそこに連れて行くんだよね?」

「「「もちろん(にゃ~ん)」」」


 友達どころか飼い猫にすらも裏切られ、私は涙目になりつつも全力でその場から逃走しようとする。

 だが腕をクロヴィスに私は掴まれていて逃げられない。

 しかも猫になったタマが、私の肩に乗っていて重い。


 そう思っている内に、腕を掴まれてクロヴィスが飛び上がる。

 必然的に、私もそちらに飛び出すことになるわけだけれど、


「ぼ、私は嫌だぁああああ」


 これだけ頑張って戦闘の以来をしたのだからまた今度でいいと思うのだ。

 けれどそんな私を応用にフィオレが跳んできて、


「人の手がはいっていない遺跡にはいい物がそのまま残されているんだ。文献に載っているから人が入ったかもしれないけれど、それでもまだそこそこ残っている可能性がある」

「う、うぎゅ。今日はもうお家でゆっくりしようと思っていたのに」


 そんな私の嘆きを無視してフィオレが目の前のそれを見る。

 先ほど落としたハートを3つ重ねたようなそれは、何故かそこにある金属製の門に嵌っている。

 こんな怪しいアイテム、やっぱり拾わないでおけばよかったと思っていると、そこで目の前の扉がギギギと開く。


 同時に私達の視界を真っ白な光が覆ったのだった。








 目を見開くと、そこにいたのは私だけだった。

 正確には私にひっついていたタマと二人である。

 薄暗いのっぺりとしたコンクリートのむき出しの廊下……そんな印象を受ける場所に私達はいる。


 うっすらと天井が輝いているので完全に暗くはない。

 後ろを見ると長い、途中幾つも分岐する横道のある通路が見える。

 その何処にもクロヴィス達の姿はない。


「皆違う所に飛ばされちゃったんだ」

「うん、そうだよ。ちょっとエリと二人っきりでお話ししたかったから一番最深部に僕達は転送、クロヴィスという、僕達の一番の“敵”とフィオレ、リリスは一番上の階層に転送しておいたよ」

「タマ?」


 そこでいつも私を癒していた茶色の猫のタマは、猫の姿のまま私の前にやってきて、次に光に包まれたかと思うと人型をとる。

 どちらも良く私が見ているタマの姿だ。

 でもどうして今さらと私が思っているとタマが苦笑する。


「やっぱりエリには僕の認識操作が聞いていないみたいだね。ただの猫としか認識できないようにしていたはずなんだけれど」

「え? そ、そうなんだ。そういえば……」

「でもだからと言って、エリは僕が獣人の猫族である“深淵の魔族”だとは気付いていないみたいだし……この世界の常識が“欠落”しているように感じたんだよね」


 にっこりとほほ笑む目の前のネコミミ少年は、何時も私が見ていた猫のタマと違って見える。

 もしくはこれが本性なのかな、と私が思いながら、


「タマ、貴方は一体?」

「僕? 僕はね……“深淵の魔族”ネコミミ族の軍師クラウズ・マレアの息子、タリスマン・マレアです。皆には“タマ”と愛称でよく呼ばれているんですよ?」


 そう面白そうに、私の飼い猫だったタマは私に告げたのだった。






 その軍師の名前などには聞き覚えがあって、確か凄く渋い男性だった気がする。

 でも私の知っているはずの無い知識だろうと思ってそれ以上私は黙っていると、タマがにゃーんと鳴いた。


「でね、エリを分離したのは、僕がエリにお嫁さんになってくれるか、という告白する為なのです、にゃん」

「……ごめん、私、タマの事、ペットとしてしか見ていない」


 実際に私の家で飼っているしゃべる猫としか思っていなかったのだ。

 だからそう答えるとタマは、


「……うん、やっぱりそうだよね。飼う権利も上げたわけだし。なのでまだしばらく飼い猫としてエリの傍にいるよ」

「いいの?」

「もちろん、本当は最近リリスと話しているのが楽しくなってきちゃってどうしようかと思っていたんだ」


 そういえば最近このタマはやけにリリスと仲が良い。

 何か心の変化があったのかもと思っているとそこで、


「それでエリはこの世界の事を何処まで知っているのかにゃ?」

「そ、それは……えっと……」

「エリの魔力は膨大で、僕達“深淵の魔族”には魅力的な気配がするんだ。だからお魚を貰った事もあってエリについてきたんだけれど……振られちゃったのはいいとして。僕もエリには他にも秘密がありそうなんだよね。父に聞いたのだけれどそのままエリを守れとしか言われていないんだよね」

「守れ?」

「うん、クロヴィスに先手を打たれてしまったから、守れって」


 クロヴィスは確かに私の傍にいて、一番初めに接触して、私を……。

 漠然とした良く分からない不安が私の中で膨れ上がりそうになり、そこでタマが私の手を握った。


「なんだかエリは僕達“深淵の魔族”にとって大切な人らしい。でもあまり色々知られるのもなというのもあるらしい」


 それは私に何か役割があるからだろうか。

 ゲーム内での主人公の役割は知っている。

 でも、私の場合少しでも変な事を聞いたら疑われてしまう。


 だって私はこの世界の人間じゃなくて、でもこの世界の秘密に関する事や禁断の魔法までも知っているのだ。

 どうしよう、そんな私を見上げてタマが耳をピコピコ動かして、


「なので……答えられる範囲で僕が全部答える事にしました」

「……いいの?」

「うん、あのクソ親父は、僕の事を放蕩息子だの、今くらい役に立てだの散々言いやがりましたので、僕が知っている事は全部教えてあげるよ!」

「……ありがとう」

「でも、放蕩息子な僕は、あまり色々知らないんだけれどね」


 肩をすくめるタマだけれど、何も隠さず聞ける相手がいるのは私には嬉しかった。

 なのでまずは……、


「タマの事を教えて欲しいな。ここの遺跡の転送システムが使えたみたいだし」

「それはそうにゃ。この前の塔に近い遺跡も含めてここは、僕のご先祖様の“古い王国”に住んでいた場所だから、その血をひく貴族の僕はここを幾らでも好きな様にできるんだ。前の遺跡でも閉じ込められそうになった時フィオレを連れて外に出たし」

「そうなんだ、ありがとうタマ。……でも“古い王国”って、あれ、羽が生えていないよね?」

「……あの人間と仲の良い空飛ぶ種族の事は知っているんだね、エリは。まあいいけれど、母方がそちら系統なんだ。身体的特徴は父に似ちゃったけれど。さて、その血でもどうにかなるんだけれど、エリの場合、その存在自体が鍵になるらしい。本当はその3つのハートが付いたそれ自体が、色々な“古い王国”のどこでも入れる鍵で、普通の人間はそれを使う約束になっていたんだけれどね」

「そう、なんだ」

「うん、それは人間側の特別な“血”を引く人間が使えるようにって設計されたらしい。ただ、今回エリのポケットからあの鍵が落ちたのは、多分、“深淵の魔族”が絡んでいると思うのにゃ」


 そう言われて私は、周りにそんな“深淵の魔族”はいなかった気がした。

 だから私は怪訝な表情でタマを見ていると、


「エリ、“深淵の魔族”の探査装置は、壊れたものでも視界くらいは繋がったりするんだよ?」

「探査装置?」


 そんなものはゲーム内で私は知らない。

 そんな私にタマは、私に教えるのが嬉しくてたまらないというような笑顔で、


「動物型の魔物は、この世界に元々いる種族。でも精霊型は違うにゃん」


 そういえば昔は精霊型はいなかったと聞いた気がする。

 誰だっけと思いだそうとした所で、タマが、


「精霊型は昔魔族が作りあげたけれど、壊れてしまった物がほとんどなのにゃ」


 そう私にタマは告げたのだった。



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