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信じてもらえなかった

 そしてどうにか私はクロヴィスを引きとめた。

 必死になって、クロヴィスの服を引っ張ったりして逃がさないようにした。

 そしておやつの時間が終わった後、食器を片づけてから、


「さて、今日こそは、この“星語りの花”を飾って、良い夢を見るんだ」


 そう私は言うと、そこでクロヴィスは何か思いだしたかのように、


「俺の部屋にもそれを飾ってもらえるか?」

「いいけれど、クロヴィスにしては珍しいね」

「ああ、良い夢がが見れるらしいからな」


 クロヴィスも夢なんて見るんだと私は思っていると、フィオレが私を見てクロヴィスを見て、ふむと頷いていた。

 何を頷いているのかなと私が思っているとそこでライが、楽しそうに私に、


「“星語りの花”の香りは、心の中で気になっている相手がいると、その相手との夢を見るらしいよ」

「へ~、そうなんだ。でもそんな相手がいない私には、ただ良い夢が見えるだけなんでしょう?」


 確かゲーム内ではそうだったはずだと私が思っていると、そこでライはちらりとクロヴィスを見てから私に、


「そうなんだ。でも少しでも、そう、無意識でも気になる相手がいたらそれが全部出てくるから、それは楽しみかな。明日の朝は、エリの本音トークで盛り上がろうか」

「何だそれ。そんなの私は無いし。そもそもライはあの王子さ……いえ、何でもありません」

「賢明だね。次にあいつの名前を口にしたら……どうしようか。エリに着て欲しい女の子の服があるけれど、その日一日は私の着せ替え人形になってもらおうかな」

「そ、そんな……って、タマにリリスは私を半眼でじっと見てどうしたの?」


 そこで見上げるように二人は私を見ている。

 ちなみにリリスは空中に浮かびながら私を見上げている。

 何で私はこんな風な目で見られないといけないんだと私が思っていると、


「私がエリの一番の杖なのに……浮気者」

「僕がエリの一番のペットなのに……浮気者」

「あー、うん、そうだねでもそういった相手がいないのにそんな夢は見たくないし、二人は私にとって一番の杖とペットだよ」


 そう私が言うと、抱きついてくるリリスとタマ。

 懐かれるのは嫌じゃないんだよね、二人とも可愛いしと思っているとそこでフィオレが、


「私は別の部屋で寝ようか。……夢にあいつが出てきても嫌だからな」

「ほう、そうなんだ、フィオレ」

「なんだ? エリ」

「フィオレ、本当は怖いんでしょう、アンジェロが夢の中に出てくるのが」

「べ、別に怖くないし。ただ夢に出てきたたら嫌だなって……」

「わーい、怖いんだ。フィオレ、怖いんだ―」

「だから怖くないと言っているだろう! いいだろう、そこまで言うなら一緒に寝てやる!」


 そう答えた痺れを切らした様なフィオレに、私は上手く行ったと思う。

 どんな夢を見るにせよ、夢の中できっとフィオレはアンジェロに出会うだろう。

 そうすれば、少しは懐かしくなって、何があったのかは分からないけれどアンジェロの元に戻る気になるかもしれない。


 仲直りの切っ掛けになればいいなと思って、私はそう思う。

 思った所で、私は新しい花瓶を一つ取り出して、“星語りの花”を一本、水を入れてからさしてクロヴィスに渡す。


「ああ、ありがとう、これでいい夢が見れそうだ」

「そうなんだ。クロヴィスには好きな人がいるんだ」

「もちろんだ」


 そうクロヴィスが一瞬凄く優しい眼差しで私を見た気がした。

 でも私のはずがなくて、そしてゲーム内では誰だったっけと思って、分からなくて、でも私の胸がチクリと痛む。

 けれど何で私は自分がそんな感情を抱いたのか分からなくて、困惑してしまう。

 とはいえ夢の中だからそれはその人の自由だと思って、それ以上は……色々な意味でもやもやとした嫌なものは残ったけれど、夕食をたべて、その日は昨日と同じように私とライとフィオレで、一つのベッドで眠ったのだった。






 私に左右でちょっとアレな感じな、フィオレとライを揺さぶって起こす。

 二人がものすごくアレだったと私が告げると、


「はぁ? エリじゃあるまいし、私が喘いでアンジェロの名前を呼ぶはずがないだろう。寝ぼけて聞き間違えたんじゃないのか?」

「エリじゃあるまいしって、酷い……というか夢に見るくらいに好きなら仲直りしてきなよ!」

「……そんな夢も見ていないし寝言なんて言っていないから、関係ない。それに私は喧嘩したわけじゃない、私が許せなくなって怒っただけだ!」


 それが喧嘩なんじゃないかなと私は思いはしたけれど、機嫌が悪くなったフィオレが料理をつくろうとしはじめたのでそれを食い止めながら、ライに、


「ライ、フィオレを止めるのを手伝ってよ!」

「……エリが、私が、というから悪いんだ。ふん、手伝ってやるものか」

「だって本当にアレだったし! くぅう、もうあの花は寝室に飾らないんだから!」


 私は涙目で叫びながら、なんとかフィオレをその場から遠ざけて料理をし始める。

 そこで私は、機嫌良さそうに降りてくるクロヴィスに気づいた。


「クロヴィス、何だか嬉しそうだね」

「ああ、いい夢を見れたからな」

「そうなんだ。でも夢って覚えているんだね、クロヴィスは。私は何だかすごい夢を見た気がするけれど、全然思い出せなくて」

「ははは、エリは間抜けだな」

「誰が間抜けだ! ……でも今は覚えておかなくても良かったのかも。というか私に好きな人がいないのに、変な夢を見せられたのはやっぱり、フィオレとライが私の両隣であんなだったからだ! ……え?」


 そこでクロヴィスが私を抱きしめた。

 突然の行動に、私は何かを思い出しかけるけれど、それはモヤモヤとしてよく思い出せない。

 ただ何となく気持ちいな……と私が思っているとそこで、


「うわーん、エリ、助けて~」

「待つのにゃ~、にゃん!」


 私は顔に抱きついていたリリスのその状況に気づいて、リリスを追いかけて走ってきたタマを抱き上げて、


「ほら、タマ。リリスをいじめちゃ駄目でしょう、ほ~ら、ごろごろ」

「にゃにゃ~、にゃにゃ」


 私は抱き上げてタマの喉を撫ぜてやる。

 タマが幸せそうな鳴き声を上げる。

 それを聞きながら私は、クロヴィスが先ほどとは打って変わって機嫌が悪そうなのに気づく。

 何でだろうなと思っているとそこで、


「それでエリ、今日は俺と二人だけで依頼を受けるぞ」

「で、でも、そうしたらフィオレが料理を作っちゃう!」

「ベッドに縛り付けておけ。あの花の香をかがせておけば、痴話喧嘩した恋人と夢の中で会えるだろうし」


 フィオレがあんなやつ恋人じゃないんだからな! と叫んでいたけれど、適当に私は聞き流しつつライに、


「そうだ、これはいい機会だ。あの花の香のする部屋で眠るとどうなるのか、試してみないかね」

「へ~、面白いね。この私が喘いでいたなんてそんなはずはないだろうけれど、フィオレに確認してもらうのがいいかな」

「そうだろうそうだろう、くくく」

「でももしも私達が喘いでいなかったら、エリにはどうしてもらおうかな」

「ケーキを一人一ホールでいかがでしょう!」


 何かを条件に出される前に、私は提案してみた。

 それにライは瞳を瞬かせてから微笑み、


「いいよ、私はチーズケーキがいいな」

「く、自分が勝利できるつもりでいやがる、だが、勝利するのは私なんだからね! ……さて朝食を作ろうっと」


 それにフィオレが手伝うと言い出したので、お皿を並べる準備のお手伝いだけを私はしてもらったのだった。






 食事を終えた私達は、自信満々のフィオレとライに見送られて、戦闘の依頼に向かった。

 リリスがあまりにもタマから逃げたがっていたので、今日はタマはお留守番である。

 にゃ~にゃ~、鳴いて抗議してくるお猫様だが、今回ばかりは私も断腸の思いで振り切った。


 そしてリリスは、しばらくゆっくりしま~すと言って、杖の中に消えてしまう。

 今回は戦闘以外は気楽に休んでもらおうと思って私は進んでいくと、木に巻き付いているツルから、枝分かれするように垂れ下がっている宝石のような小さな直方体。

 幾つもの色があるが、それぞれ味の違うキャンディーのような果物、それが


「“砂糖菓子のキャンディー・フルーツ”だ! 少し貰っていこう。……色々な味がついてる。クロヴィスはどれがいい?」

「そうだな……エリの髪と同じその黒いものにしようか」

「チョコレート味だね。私はこのピンク色のイチゴ味っと」


 そう思って私は黒い果実をクロヴィスに渡す。

 ただ今の言葉にちょっと私は思うところがあって、


「何で私の髪の色と同じ色?」

「今目の前にあったからな。これでいいやと」


 そんな適当な理由で決められたのが何となく私は腹ただしい。

 けれどどうしてこんな腹ただしい気持ちになるのかが分からない。

 そこで私の目の前に、蜘蛛のような形をした魔物が現れる。


 黒と黄色の禍々しい色彩で、蜘蛛らしく糸を吐いてくる。

 それを避けながら私は杖を振りかざし、


「“憤怒の(アングリー・フレア) ”」


 選択画面から、炎系の魔法を選択する。

 虫系の魔物は炎系の魔法が弱い。

 なので杖を振りかざし炎を噴射する。


 それほど強い魔物ではないので、この一撃で倒せたと思った私だけれど、吹き出した炎が当たった時に生じた煙からぬっとその蜘蛛が現れる。

 油断していた私は動けない。

 そんな私は唐突に横に引っ張られて目の前に銀色の線がかすめていくのを見た。


 ぎゃああっという、蜘蛛の魔物の断末魔が聞こえて、後には糸を束ねたようなものが残る。

 蜘蛛の吐き出した糸で、強度が強くやわらかな糸がアイテムとして手に入る。

 これで布を作ると強い布が出来る。


 但し、何故かゲーム中ではこの布のままでは売れるものの、ドレスとロープ、魚の疑似餌しか作れなかったが。

 ただこの布で作ったドレスは、色々なデザインがあってとても綺麗だったのでそれはそれでいい気がする。

 とはいえこういった魔物を倒さないと手に入らないアイテムなのでそれはそれで貴重だよねと回収する。

 そこで私はふと気付いた。


「そういえばクロヴィス、今日はどこまで行く予定なのかな?」

「ああ、あそこの山を登って、水の湧き出る山頂まで行ってそこの水辺に現れた水鳥の巨大な魔物を倒すだけのお仕事だ」

「……あの山?」


 私が指さしたのは、少し離れた場所にある山で、それほど高くはなさそうだけれど、


「日帰りできるかな?」

「いざとなればあの、山頂からこぼれ落ちる水に乗って流されるように帰ってもいいかもな」

「! あそこの山頂から流れている水は、高い場所から落ちているから途中で霧になって消えちゃうって知っているもん! そこに流れている川はもっと下から湧き出ているはずよ!」


 そういったシーンのイラストで、主人公が滝の下から見上げている物があったから知っている。

 けれどそうやって言い返す私にクロヴィスは、


「随分と詳しいな、エリ」

「ぎくっ、え、えっと以前、話している人がいたので聞いたから……」

「へ~、俺よりもその名も知らぬ人間のほうを信じるのか」


 そうクロヴィスに言われてしまう私だが、そこでもしかしたならこの世界の地形はちょっと違うかもと思う。

 なので私は、


「ごめん、そうだよね、クロヴィスの方を信じ……」

「ちなみに今俺は嘘をついた。そちらのほうが正解だ」


 笑うクロヴィスに私は、私の罪悪感を返せと私は思いながらも、


「後でこの周辺の地図も買ってよく見ておこう。冒険ガイドみたいなものもあるはずだし」


 私が真剣に考えているとそこでクロヴィスが頷きながら、


「よし、エリが冒険に積極的になってきた。これはいい兆候だ」

「……まさかそれが狙いで?」


 クロヴィスはあの家から私を出さて戦闘をさせたがっていたから……そんな疑惑を持つ私にクロヴィスはいい笑顔で、


「いや、エリをからかってみようと思っただけだ。最近他の二人と猫達とばかり話しているから」

「く、くぅ……そうやって私を弄びやがって。このまま家に帰ってやるぅうう」

「ははは、逃げられると思うなよ。俺から、な」


 襟首を掴まれた私は、耳元で低い声でクロヴィスに囁かれて、私は何故かぞくっと体に変なものが走る。

 けれどすぐにクロヴィスは私の耳から離れていき、


「さあ、行くぞ。ゆっくりしていると山の上で野宿だ。それともそうするか?」


 その問いかけに私は顔を左右に大きく降って、渋々歩き出したのだった。







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