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遭遇した

 現れたのは、ライオンに白い翼を生やした化けものだった。

 その魔物を見て、私は思い出した。

 確かこの遺跡は出口の所にこんな魔物がいて、戦闘しなければならなくなるのだと。


 風と水に、地面を操る感じの攻撃をしてくる……そんな魔物だった。

 遺跡内での魔物との戦闘で疲弊しかけた所でこの魔物に当たり、ゲーム内では酷い目にあった。

 すぐ近くで一度記録をしておいたので、一度負けてもそこからだったし事前にああいったものが出てくると攻略本をその時はもっていたので、その知識から装備を強化したのである。


 ただこれは全てゲーム内の話だ。

 ここはゲームに似た、ゲームと差異のある異世界。

 そこでこの魔物に負けてしまったならどうなるんだろう。


 記録する装置も記録できる場所の様なものも何もない。

 負けた記録をリセットしてもう一度なんてできない。

 だから今の最善を尽くさないとと思いながら私は、なんの魔法が効いたのかを思い出して、選択画面を自身の目の前に表示させる。


 現れたものの中から氷属性の魔法を選んでいく。

 確かこの魔物は強かったので、強めの魔法を……と私が選んでいるとその横でフィオレが早々に呪文を唱えて、


「氷結のアイス・コア


 その呟きと共に、氷の塊がキラキラと輝きながら無数に現れてその魔物に攻撃を加えていく。

 結構効いているようだ。

 そんな中でタマもその自慢の猫パンチで吹き飛ばしかけていたり、クロヴィスも切りつけている。


 それにこの魔物は攻撃できないようだ。

 圧倒的ではないか、我が軍は的な言葉が頭に浮かんで、もしかして私、何もしなくてもいいんじゃないかと思う。

 ここまでの総攻撃だと、私が何もしなくても魔物が倒せる。


 よし、それで行こう! 私は後ろで皆を応援していよう……そう思って背を向けて後ろに下がろうとした所で私は何者かに襟首を掴まれた。

 そろりと振り返ると、クロヴィスが笑っている。


「逃げようとするな、エリ」

「だ、だって私がいなくても大丈夫そうじゃん」

「そんな情けない事を言って……フィオレ、一撃でも良いからエリの分を残しておいてくれ」

「分かった。エリには再教育が必要そうだからな」


 フィオレまでそんな事を言う。

 そして魔物の前まで連れてこられた私は、クロヴィスに、


「ほら、戦え」

「……くうっ、逃げられると思ったのに……悠久の氷獄エターナル・コキュートス


 私は技を選択する。

 リリスまでもがあきれ顔だったけれど、魔法を使えば援護をしてくれているらしい。

 魔物の急所になりそうな場所を探知して、そこに魔法を補正してくれる。


 そして魔法陣が浮かび上がり私は杖を掲げ、呪文を唱える。

 耳をつんざくような乾いた音がして、目の前の魔物もろとも、周辺が凍りつく。

 それを見て私は……やりすぎたと思ったのだった。









 そんなこんなで凍りづけにした時点でその魔物は倒されたらしいのだけれど、


「エリも大分本気を出すようになった……のか?」


 フィオレはその氷漬けになった魔物を見つつ呟いた。

 だがそんなフィオレにクロヴィスが、


「エリは魔法の制御が上手く出来ていないだけだ。以前も巨大な炎の塊を飛ばしたからな」

「……まさか以前港町の方で、炎の精霊がお怒りだの何だのと噂の炎の塊はまさか……」

「ここ最近なら、エリだろうな」


 フィオレがくるりと私の方を見た。

 その表情は無表情だったが、まっすぐに私を見つめている。

 そして私の目の前までフィオレは歩いてきて私の手を握り、


「容赦ない魔法攻撃、それこそ真の魔法使いだ!」

「ええ! ち、違う、私はただ……」

「相手の出方が分からない以上、叩き粒追うとすれば全力を尽くす! 当然だな。私はすぐに魔力の節約を考えてしまうが、やはり思いっきりも大切だな!」

「フィオレ……私はただ単に魔力の調節が上手く出来ないんだ。だから魔法で選んで……」

「そういえば先ほどの魔法、秘されし魔法と呼ばれる、禁書一歩手前の高度な魔法では? さすがはエリ、私よりも上の成績だっただけのことはあるな」


 そうだったんですか……そんな初めて知った事実に私は、目を泳がせる。

 そしてとりあえずはこのレベルのものはあまり使わないほうがいいなと私は思う。

 だって下手すると禁断の魔法を使っている、という事でなんというか、エロくない意味でのR18展開になりかねないのだから。


 そこでクロヴィスが剣を使い氷ごと魔物にとどめを刺す。

 後には白い鳥の羽のようなアイテムと、魔力の結晶のような石が転がる。

 それを拾ってからフィオレに、


「これ、どうやって山分けしようか」


 そう聞くとクロヴィスはいらないと答え、タマは猫じゃらしが欲しいと答え(お猫様の暗黙の要求でしたので、後ほど購入させられました)、フィオレは、


「そうだな魔力結晶の方にしようか」

「じゃあ私は羽をもらうね」


 と言って白い羽を取る。

 この羽根を使うと、空を飛べる箒のアイテムが作れるのだ。

 但しもうすでに私は持っているが、この材料自体が貴重なので、フィオレという証人がいるので疑われずに済む。

 こうして私達はこの遺跡を後にしたのだった。







 猫じゃらしを購入し(この世界の猫じゃらしは、とても大きくて長持ちする)、タマをそれで遊んでやりながら帰路につく。

 だが、私は自分の家の扉を開いた瞬間、凍りついた。


「んんっ」


 目の前で、ライが以前あった王子様に濃厚なキスをされていた。

 家の前に馬車が止まっていたので嫌な予感がしていたのだけれど、まさかそんな生々しいキスシーンを見せつけられるとは思わなかった。

 だがそこで、ライがそのキスしている王子様フェンリルの頬を平手打ちする。と、


「痛いな……。ようやく会えたというのに」

「……私は会いたくありませんでした。後この家の主達が驚いているので離れて……このまま帰ってください」

「しかたがないね、また日をあらためて来るとしよう」


 そう言ってフェンリルは私に挨拶をして馬車に乗り込み去っていく。

 何が起こったんだろうとかどういう関係なんだろうかと聞くに聞けない雰囲気のライに私が声をかけれずに行くと……私はライに睨まれ、


「……エリ、ストレスが溜まったから、何処かに戦闘に行かない? 私も手伝うから」

「え、えっと、でも……」

「でないと、エリを襲う」

「! ……わ、分かりました」


 そのライの不機嫌そうな様子に怖くなった私は、つい頷いてしまったのだった。







 不機嫌なライに誘われて、私は戦闘に連れていかれた。が、


「ここで消え失せろ!」


 真っ先にライが現れた魔物を倒してしまう。

 ライは水系の魔法が得意らしく、片っ端から氷漬けにするわ、氷の矢で貫くわ、氷の塊で押しつぶすわ……他にもやりたい放題だった。

 明らかに苛立っている、そんな様子のライ。


 これではとてもではないが、あの王子様との関係も聞けない。

 私だって空気が読めるのだから!

 だがこうやって今現在私は、何もすることがない。


 やってきたのは草原のような場所で、少し離れた場所に森が見える。

 そこに“宝石蜜蜂”の巣や、触手の巣がある森だ。

 けれど私達はそこにはいかず、その手前の草原を散策していた。


 この草原は、見晴らしはいのだけれど地面からもこっと精霊の様な魔物が現れる。

 精霊の様な魔物が出る辺りを踏むと、土の中から出てくるような感じだ

 だが出来る限り戦闘をしたくない私は、ライの後を大人しく踏んで進んで行く。


 その精霊の様な魔物が現れた場所は、同じ場所である場合、しばらくそこからは出ないらしい。

 なのでこうやってライの後を歩いていく限り私は襲われずに済んでいた。

 ただ……こうなってくるとただ歩いているというだけで、私は何もすることがない。


 楽しいお散歩といっても、こんな何が出てくるか分からない場所では気楽になれない。

 更に付け加えるなら、


「……お昼、私、食べていない」

「私もだ、お腹が空いたな」


 私の呟きにフィオレは頷く。

 ちなみに猫のタマは、窓際で日向ぼっこをしながら眠るんだと、リリスを連れていってしまった。

 もちろん杖を咥えて。


「うわーん、エリ、助けて~」

「美味しいおやつと一緒にゃ~ん」

「違う~、ぁあああああ」


 相変わらず二人は仲良しだなと思いながら、仕方がないので私は別の杖を取り出すと、ぴょんぴょんはねながら私の方にリリスの本体である杖とリリスがやってきて、


「エリの浮気者! 私というもの(杖)があるのに、そんなみすぼらしい杖に浮気して……って、ふぎゃああ」

「はむはむ。にゃ~。やっぱり甘くて美味しいにゃ~、ぺろぺろ」

「や~、舐めないでぇ、ぁああああ」


 といったように言いながら、リリスはタマから逃走した。

 とりあえず留守番していてもらおうと思って私は二匹? を置いていった。

 それを思い出した後は、やはり今度はお腹がすいてきて私はあるものを思い出す。


「あ、前に焼いておいたクッキーがあるかも。チョコチップと、普通のバタークッキー」

「あ、食べたいな」

「私も欲しい」


 ライも振り返ってそういったので、クッキーを渡す。

 最後にクロヴィスにも渡すと、大きなクッキーだったのに一口で食べてしまった。


「……もう少し味わって食べてくれてもいいじゃん」

「エリの食べ物は美味しいからな。すぐに食べたくなる。……きっとエリも美味しいだろうな」

「え? どういう意味ですか! あれ、クロヴィス、何処に行くの?」

「……いや、この調子だと俺は必要なさそうだから、俺は帰ってもいいか?」

「だ、だったら私も……」

「エリは戦闘に慣れないとな」

「く、こ、この……逃がすものかぁあああああ」


 そう私は叫んで私は、クロヴィスの腕を抱え込むようにして、ライの後ろを歩いていったのだった。






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