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友人

 こうして私達は更に階段を上っていく。

 他にも色々な部屋が10個ほどあり、色々あった。

 正確には私が、色々な目に遭った、だが。


「もう、もうぬるぬるべとべとは嫌だようぅ。何で私ばっかり狙うんだろう。クロヴィスが、アンアン喘いだって良いじゃない!」

「ほう、助けてやった俺に対して、その言い草はなんだ?」

「だって二回も、そう、二回も私は服を変える羽目になったんだよ!」


 私は怒ってクロヴィスに言い返す。

 色々な部屋には、確かに魔物もいたし、その部屋のボスも個性的だった。

 けれど雑魚の様な魔物の中には、服を溶かすスライムっぽい粘性の液体や触手――それもつるつるとした金属っぽい物や幾つもの突起が付いた物、ぬるっとした物まで種類が富んでいる。そんな触手事情なんて知りたくないと私は経験して思った――に私は襲われたのだ。


 しかもその全てをクロヴィスは初めの方は見ているだけなのである!

 それはそれは楽しそうに。

 私は嫌がって悲鳴をあげているというのに、なんて薄情な奴なのだと思うのだ。


 更にこの服を溶かすスライムは酷くて、胸のあたりを……。

 そこで何故かいつも以上に怒った様なクロヴィスに私は助けられたのだ。

 それからはもう少し早めに手助けしてくれるようになった気がする。


 でも私は思うのだ。

 ゲームには……こんな種類豊富な触手はいなかったと。

 確かに全年齢対象のゲームだったので当然といえば当然だが、そんなシーンは入れられないだろうと思うくらいに私は恥ずかしい思いをさせられた。


 しかも途中で、触手の“池”の様な物があって、絶対に引きずり込まれてたまるかと思って私は頑張ったのに引きずり込まれた。

 体中を優しくまさぐられるあの感触は、今思い出しても不安しか感じない。

 ちょっと気持ち良いいような感じに、マッサージのように、もぞもぞされてしまったのが特に危険だ。


 酷い設定を付けやがってと私は思いながら、今また階段を上っている。

 次で最上階のはずだった。

 ゲームの中ならば。


 この先の部屋が実はその古の魔法使いの部屋であり、そこに祭壇があったはずだ。

 その祭壇には、空を飛ぶ物を撃ち落とす魔法の核となる物が置かれていて、それを壊すとその古の魔法使いが変身したドラゴンの様な生物が襲ってくるのだ。

 ちなみにそのドラゴンの様な生物はとても強くて、苦戦した記憶がある。


 けれど今はもうすでにゲームとこの世界の事情が随分と変わっているので、この扉を開くと全く違う展開が待っているかもしれない。

 そう思いながら警戒して私は、その扉をゆっくりと開いて……もう一度締めなおした。

 自分が今見た物が信じられなかったからだ。


「どうした、エリ。早く開けないと入れないだろう」

「ク、クロヴィス、何でそんなに落ち着いていられるの!? というか……クロヴィスだって見たよね、今の!」

「ああ、見たな」

「あれじゃ入れないじゃん!」


 私はそうクロヴィスに言い返すと、クロヴィスは深々と溜息をついて、


「もう少し頭を使え。どうしたらあの、そのドアの入口の目の前に寝ているドラゴンの様なものをどかせられるかを」

「そんな事を言っても、えっと、確か力が強くなる魔法は……」

「確かあいつ、寝起きは凄く機嫌が悪いぞ? 無理やり起こすと何をしでかすか分からない」

「そんな! ……というか、クロヴィスは知り合いなの? 知り合いなら、クロヴィスが起こしてよ!」

「それも訓練の一つだ。さあ、考えろよ」


 そんな事を言ってもと思いながら私は、ひんやりとした風が扉を開けると感じる。

 次に目の前にある、トカゲのような肌を見て……嫌な予感がした。


「……まさか、冬眠しているって事はないよね?」

「そうだぞ、エリも考えればできるじゃないか」


 クロヴィスが、私の嫌な予感を正解だと言ったのだった。







 このドラゴンの様な物は冬眠しているらしい。

 クロヴィス、いわく、


「大方、気温の調整を間違えたんだろう」


 そう言って、クロヴィスは軽くこんこんとそのドラゴンの様なものを叩いた。

 びくともしないし、起きもしなかったので良かったのだが、私は、


「無理やり起こしたら、寝起きは機嫌が悪いって言ったのはクロヴィスじゃん! なのにこんな事して……」

「これ位は大丈夫だと思う」

「止めてー! というか気温調整を間違えるって……」

「まあ、振られたばかりだからな、意気消沈して何かを間違えたんだろう……ああ、地下にここはあったから、暖房設備付ける前に冬眠しているんじゃないか?」


 それって生死にかかわるんじゃないかと私は思ったけれど、どうも生きているみたいなので深く考えない事にした。

 それで、冬眠から目を覚まさせるにはどうしようかと思って、私は考える。

 ようはこのドラゴンの様な生物の体を温めなければならないのだ。


「体を温めるっていうと、雪山なんかで肌と肌を合わせて~とかあったような……」

「……分かった、ヒントをやろう。このドラゴンの皮膚は、ちょっとやそっとでは燃えない。温かいなと思う程度だ」


 何となく思いついた事を言うと、クロヴィスがヒントをくれた。

 それを聞いて私は、つまりこのドラゴンの様なものに向かって炎の攻撃をすればいいんですねと気付いた。

 なのですぐ様、炎の魔法を選択し、連続攻撃を仕掛ける。


 それから約十分後くらい。

 そのドラゴンの様な物がぴくっと動いて、もしやあと少しかなと思ってもうしばらく連続攻撃をする事、約五分。


「ふあああああっ、良く寝た。……あれ、何で私は寝ていたのかな」


 穏やかそうな男性の声が聞こえる。

 もちろんゲームの中では、ぐぎゃあああ、といった獣の吠え声しかなかったので変な感じだ。

 そこでそのドラゴンの様なものが、


「うーん、まあいいや。それで起こしてくれたのは……、とりあえず人型に戻った方が良いようだね」


 呟くと同時に、そのドラゴンから光が放たれて、一人の男性を形作る。

 穏やかで柔和そうな、白髪に銀のモノクルをつけた魔法使い。

 手にはあの“琥珀の炎”を持っている。

 そこで彼はクロヴィスに気付いたらしく、大きく目を見開き、


「え、あれ? クロヴィス?」

「ああ」

「……それに他に人がいるって事は、まだ“世界”は滅んでいない?」

「そうだな」

「というかクロヴィス、どうしたんですかこんな所で」

「このエリが引きこもりになりそうだったから戦闘に連れてきたんだ。たまたまこちらの方に依頼があったからそういえばと思って起こしに来た」

「クロヴィスにしては珍しいですね……でも、なるほど。クロヴィス好みの子ですね」


 頷くその魔法使いに私は、何ですかそのクロヴィス好みってと私が思っていると、


「そう言えば君の名前は? あ、私の名前はウィルワードです」

「ウィルワードさん……私は、エリです」

「いやー、君は命の恩人だよ。このままここに居ても死んじゃっただろうしね。遅いか早いかの違いはあったけれど」

「? は、はあ。あの……えっと、クロヴィス」


 そこで私はクロヴィスに聞いてみた。


「この依頼って、どんな依頼なの?」

「この辺りで適当に魔物を狩ってくる依頼だ。ついでにここにいるこいつを、眠らせたままにしておくのも何となくと思って起こしに来た」


 そんな理由で私はここに連れてこられたのかと思っていると、そこでウィルワードが、


「それで今外はどうなっているのかな。あれから何年だっけ」

「三年だ」

「短いけれど、でも外は少しは変わったかな。三年間行方不明に私はなっていたわけだし、“世界”が滅んでいないなら外に出て今までみたいに暮らすか」


 背伸びをするウィルワードに私はこっそりクロヴィスに、


「“世界”が滅ぶってどういう事?」

「さあ、恋人に振られて世界の終わりだ―ってなったんじゃないのか?」

「……そ、そうなんだ」


 それ以上聞くのも悪い気がして、その内私の家を訪ねるとウィルワードと約束をして私は、クロヴィスと一緒にそれから家へと帰ったのだった。






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