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もう少し夢のある話を

 ギルドが開いたので、私達は中に向かった。

 正確には、中にある掲示板に真っ先に向かう。

 早めに来たかいがあって、高ポイントで短時間に作れて依頼料も結構なお値段な物を二つ手に入れる。


 けれどそれを手に入れるまで私は、とてもとても苦労したのだ。

 迫りくる女の子にぎゅうぎゅうと押され、ちょっと苦しかった。

 そしてあの苦しい場所に長くいるのは危険だったので、瞬時に二つ手に入れて逃げ出してきたのだ。

 なので今は人混みのない場所、部屋の角の部分で壁を向いているわけだが、そう呟くと同時に背後に何かの気配を私は感じて、振り向く前に後ろから私を抱きしめた。


「戦闘の依頼は取れたか?」

「とるわけないじゃん。でもいい依頼二つも取れたしこれで当分大丈夫かな」

「そうか、じゃあ戦闘の依頼を探しに行こうか」


 それを聞いた私は、すぐさまクロヴィスの前に立ちはだかる。

 こうやって戦闘の依頼がある掲示板にいかなければいいのだ、そう私は考えていたのだが……。

 手を大きく広げる私にクロヴィスは、私を抱き上げた。


 つまりお姫様抱っこという物である。


「こうすれば俺も移動できるな」

「は、はなしてぇえええ」


 周りの視線が気になり、私は焦って叫びそうになるも、そうするとさらに目立ってしまいそうだと気付いて小声になる。

 そしてそれ以上私は言えない。

 そう思って私は顔を赤くしながら必死に耐えているとそこで、


「クロヴィス、戦闘の依頼は受けてきたけれど……エリも何をやっているの?」


 ライがそう言ってやってきて、私は呆然とクロヴィスを見上げた。

 それにクロヴィスが私から手を放しニヤリと意地悪く笑い、


「エリが混んでいる場所に行って時間がかかったから、先に選んでおいたぞ?」

「そ、そんな! 私はこんな恥ずかしい思いを……」

「俺は楽しかったが? エリは軽し」

「うう……」


 そんな嘆く私に、そこでようやくどうにか依頼を勝ち取ってきたらしいフィオレが現れる。


「どうにか依頼をとってきた。毎回ここの依頼はキツイな。出すのを一日二回に分けて欲しいな。そうすれば朝に依頼を受けた人達が少しは減るだろうから……後で要望を出しておこう。それで、エリ。約束通りお菓子をごちそうしてもらおうか」

「う、うん」

「では私好みのお菓子を選びに行こう、行くぞ」


 そう言ってフィオレに手を引っ張られる私。

 それにライが付いてきてそしてクロヴィスが……少し不機嫌そうに付いてきたのだった。








 どのお菓子や料理にしようか依頼を選んで、私は依頼を受ける。

 たまたまどんな依頼を私が受けうのだろうと覗きこんだフィオレが、驚いたように、


「それ、素材集めが大変な依頼じゃないか!」

「う、うん、でも全部あるし。作る為の操作はそれほど難しいものじゃないから」


 その答えにフィオレが黙る。

 私、何かを間違えてしまっただろうか、そんな不安が私の中で湧きあがる。

 そこでフィオれが深々と溜息をついて、


「材料が遠方で手に入りにくい物や、貴重なものばかりだろう。確かに作るのはそれほど難しくないし、量だって少ない。でもこれを真っ先に狙うなんて……しかも“ローレライの涙”なんて、そんなに手に入らない」

「……実はこんな感じです」


 この前、すぐ傍にいるライというローレライにもらったものを見せると……フィオレは変な顔で私を見た。


「……あの強いローレライを泣かせるくらいの何かをしたのか?」

「え? いや、別にそんな事は……」

「いきなり襲いかかってこない限り、この魔族の場合、貢物をしてこれを手に入れるのは定石だからな。一般には、好むものを大量に貢いで、玉ねぎをみじん切りにするとか」


 フィオレの説明に、ゲーム内では戦闘で手に入る物としか認識していなかったので、私は目を瞬かせる。

 確かにローレライという魔物を殺したり戦闘をしたりするよりは、双方に利益もあり穏便だ。

 ただ、もう少し夢のある設定が欲しかったなと心の中で私は思う。

 そこで私はフィオレに、


「それでどうやってこの貴重な材料を手に入れたんだ?」

「え、えっと……購入しました」

「貴重品だから高かっただろう。こんな依頼料では割に合わないぞ?」

「う、うぐっ、ぐすっ……で、でも……」


 私はフィオレにどういい訳しようか焦っていた。

 すぐ傍では、ライが楽しそうに私達の様子を観察している。

 酷いと私が思っているとそこで、


「以前別の魔物を俺と一緒に倒しに行った時に何故かその魔物が持っていたんだ。理由は分からない」


 クロヴィスがそう言って私に助け船を出してくれた。

 そんなクロヴィスにフィオレが、


「何で別の魔物がそんな物を持っているんだ?」

「俺が知るわけないだろう。だからエリ、言っただろう? あの魔物が落とすはずがないから拾うなって。貴重なものらしいから」


 たしなめられる様に言われてしまった私だけれどこの場合仕方がない。

 私は何にも悪くないけれど下手に詮索されても困るので、


「う、だって貴重な材料だし。あんな場所に放っておいても他の人が拾うだけだし」

「……そういった理由だ。大方間抜けな冒険者が落としていったんだろう。これで納得してくれたか?」


 フィオレは、呻いたが、それ以上聞いたとしてもどうしようもないと思ったらしく、沈黙する。

 そうしてもらえて私は本当に助かったと思う。

 その話をするのは傍にいるローレライの関係で、あまりしたくはない。


 ただフィオレは納得していなさそうだが。

 そこで私は気づいた。

 ギルドのお店が開いているという事は、他のお店も開いている……つまり服のお店も、だという事を。なので、


「私、ちょっと普通の服を見てくるね」

「……私も見てこようかな。この前また一着無くなってしまったし」


 そんなわけで、服を見て購入し、私達はようやく私の家に戻ってきたのでした。






 家に帰って来てから私は早速食事づくりに励む。


「ライとフィオレには後で部屋に案内するね。その前にお茶を出すからそっちにテーブルに座っていて。あ、クロヴィス達は朝御飯どうした?」

「……俺は食べていない。それと、リリスとタマは、部屋で面白い事になっていた」

「あ、うん……じゃあ、依頼の食べ物と一緒にまずは食事を作ってから、お菓子を作る、それでいいかな? お昼も近いし」

「それでいい」


 クロヴィスがそういうので私は調理を始める。

 まずは、チーズのたっぷり入ったシチュー、野菜サラダ、もぎもぎナスとベーコン、黄金色コーンのキッシュとケーキサクレ。

 これらを作るのでオーブンは満杯になってしまうから、パンケーキは自分でフライパンで作るかと決める。


 もちもち小麦粉、花の蜜から作った砂糖、赤青とさか鳥の卵、ふわふわ草の粉(この世界のベーキングパウダーの様なもの)、そして、水色ビーンズで作った豆乳。

 この水色ビーンズは、名前の通りパステルカラーの水色をした豆なのだが、中が白いためか豆乳も白い。

 このまま飲んでもいいし牛乳の代わりに食材や薬、その他もろもろに使ってもいいという優れものだ。


 それに豆乳でホットケーキを作ると分厚く膨れるので、私は牛乳の代わりに豆乳で作ったホットケーキが大好きだった。

 それに秋を感じさせる深い琥珀色のメープルシロップをかけて頂くのだ。

 これも豆乳の方が膨れるといいなと思いながら混ぜていく。


 そしてクリスマスシーズンには品切れになるバターを熱々に熱した、持っている中で一番大きなフライパンの上に落とす。

 二つ同時に焼いているので、一気に二枚できるのだ!

 次にタネを流し込んで焼いている間に、生クリームを泡立てる。


 今日はお客様が来ているので生クリームと、小さな果実を添えようと思うのだ。

 そう思いつつ傍にある夜間にお湯を沸かして、お茶の準備をする。

 こうして私は、色々な料理を作りあげていったのだった。







 フィオレとライが、エリの料理を作っている様子を見てからクロヴィスを見る。

 それにクロヴィスは面倒そうに、


「何か言いたいようだが、どうした?」


 それにフィオレが、


「何時もあんな風に、エリがご飯を作ったりして、一緒に暮らしていると?」

「そうだが、何だ?」

「ファンみたいな子や、これを作ってきましたといったような女の子の差し入れを全部断ったのに、エリの手料理は食べると?」

「エリは特別だからな」


 その一言に沈黙するフィオレ。

 あまりにも態度が違いすぎるので、何も言えなくなってしまったようだ。

 むしろこのクロヴィスが、エリを大事に溺愛しすぎていて引いてしまったようだ。


 昔のクロヴィスを知っているからこそ今のこの状態が信じられないらしい。

 そこで階段を下りてくる音がした。

 見ると魔法の杖が勝手に、ぴょんぴょん飛び跳ねながら逃げてきており、それを猫のタマが追いかけている。


 その杖はエリの傍まで来て、


「エリ、助けて。タマが私が嫌がるのに無理やりするんだ」

「リリスの本体の杖って甘いみたいだね。こら、タマ。リリスを苛めちゃだめだよ?」

「にゃーん」

「いや、にゃーんじゃなくて……あ、もうひっくり返さないと焦げちゃう!」


 そう言いながらエリが注意をすると、タマがにゃーんと鳴いた。

 そこでがたっとライが席を立つ。

 ライは驚いたようにタマを見ていたが、それに気づいたタマがライに近づいていって、


「にゃーん」

「……そうですか、分かりました。にゃーん、ですね」


 という謎の会話をした。

 それを見ていたフィオレがライに、


「猫と会話をしてどうする。お前も猫好きなのか?」

「……猫って可愛いですよね?」

「……可愛いと思うが、あのタマは初対面で私のソーセージを勝手に食べたんだ。可愛いというよりも、別の感情が先に来る」

「そうですか、それはお気の毒です」


 微妙そうな顔でライはタマを見ながらそう告げて、そこでエリが料理を持ってきたのだった。


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