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連日戦闘コース

 現れたフィオレは瞳も赤く、泣きはらしたかのようだ。

 更に付け加えると機嫌が悪そうである。

 何時も一緒だったアンジェロが傍にいないのは私にとって不思議な感じだったが、それはいい。


 今現在のこの私の状況は、一人で突破するには難しかった。

 だから私はフィオレに助けを求めたのだ。

 けれど彼はじっと私を見て、次に彼女達を見て、


「エリにドレスを着せようとしているのか?」

「はい、もちろんです。丁度この様な白くてふわふわなドレスがありまして……」

「へぇ、それは私もみたいな、人形遊びみたいで面白そうだ。手伝おうか?」

「それは助かりますわ。これが、そのドレスですっと」


 何処からともなく取り出したそれに私は凍りついた。

 ドレスと言っているが、正確には普段着の身に好かのフリルのついたワンピースの様な服である。

 彼女達も着ているので、それほど目立たないはずだ。


 服のみはだが。

だが少し歩けば普通の恰好とは違うので、コスプレ状態に!

私はもう少し普通の服がいいですと思っている私に、取り囲んだ彼女達の手がにゅっと私の方に伸びてくる。

 フィオレは私の様子を笑いながら見ている。


 だから私は叫んだ。

 だってどう考えても、


「フィオレの方がよっぽど似合いそうじゃない!」


 そう私が叫ぶと同時に彼女達は一斉にフィオレの方を向く。

 チャンスだ、そう思って私は、一番大きく開いている彼女達の隙間を通ってその場から逃げだした。


「逃げたぞ! 追え!」

「ふ、ふぎゃああああ」


 数十人近い彼女達が、私を追いかけてきた。

 その必死の形相に、私は怯える。

 可愛い女の子、それも多人数に追われているという、文字に起こせばあまり怖くない状況なのに、現実はこれだと嘲笑うかのような状態だ。


 しかも彼女達の目的は、私なのである。

 私は拒絶の意思を示しているのに!

 なのに、クロヴィスの傍にいるからという理由だけで私はそんな目に会わせられそうになっているのだ。


 クロヴィス、マジ、許すまじ。

 恨むように私は呟きながら、涙目な私はその場から逃走するた目に魔法を起動させたのだった。






 ふと気配を感じてクロヴィスは目を覚ました。

 それはエリの魔力。

 どうして魔法を使うような状況になっているんだと思いながら、それがこの家の外、そこそこ遠い場所だと気付く。


「こんな朝から何をやっているんだ?」


 エリがいなくなったのにぐっすりと眠ってしまっていた。

 正確には、エリと一緒にいるからクロヴィスは安定しているのだろうが。

 けれど、どうしてこんな事になったのかとクロヴィスは、頭の中で考える。


 そういえば昨日も、戦闘が嫌だと言っていた気がする。

 つまりエリは逃げたのだ。

 クロヴィスからも。


「本当に生きが良くて楽しいが……その程度で俺から逃げられると思っているのか?」


 クロヴィスがそう、エリがいる方角を見て嗤う。

 いずれ自分の手に落ちてくる、否、自分の腕の中に捕らえられるしかない獲物のその何も知らない様子に、クロヴィスの笑みは深まる。

 一目見た時から気に入っていたのだ。


 とても退屈で、どうでもいいと思っていたのに……奪いたいと思ってしまったのだ。

 だから、選んだ。


「俺から、逃げられると思うなよ? エリ」


 もう一度そう呟いてクロヴィスは、エリを捕まえに行こうとベッドから起き上がったのだった。






 ゲームの中には、イベント用の魔法がある。

 その特別な出来事を起こすために、色々な場所に行ったり、戦闘したり、人に会ったりする事で手に入る魔法があるのだ。

 そういったイベント用の魔法はその時だけしか使えないものもそこそこある。


 この魔法も私がゲームをしていた時に、空に浮かぶ謎の種族(秘密がある)の国に行くために必要だった。

 人間達との交流のある温厚な不思議な国。

 ちなみに一度プレイ済みなので、その秘密に関して私は全部知っているのだが、それは置いておいて。


 現れたゲームの技の選択画面を探し、


「こ、これ! “飛翔する白いフライ・ホワイトウィング”」


 唱えると同時に、私の背に白い魔法陣が浮かび上がり、白く透明な光の羽が生える……と思う。

 実際に背後で白い光があふれているのを感じたので、おそらくはそうなのだろう。

 画面ではそういった映像が出ていたのだけれど、自分の背中は見れないので良く分からない。


 なので私はそれを使い空高く跳びあがる。

 空を飛べば家々の屋根を飛び越えていける、だから彼女達は巻ける、と思っていた私の考えが甘かった。


「逃がさなくてよ! “飛行部隊”、出動!」

「「「はいっ!」」」


 女の子達の数人が、空飛ぶ羽が杖に生えたもので私を追ってくる。

 確かこれもイベントアイテムであった気がするけれど、こんなに何人も持てるような良くあるアイテムだったっけ、と私は思いながら逃走した。

 その杖よりも私のこの魔法は動きが遅い、私は自分の選択ミスを呪った。


 そして私は、彼女達に捕らえられ、よくも逃げたなと恨めしそうに着替えさせされているフィオレと、ギルドの列に並びながら好き勝手にさせられてしまったのだった。







「もう、お嫁にいけないようぅ……」


 彼女達にあれよあれよという間に着替えさせられていいようにされてしまった。

 私はこんな出会いを望んでない、人形遊び感覚でされる身にもなれと私は涙目になる。

 なので悲しげに私が呟くが、フィオレは、


「似合っているから良いじゃないか」

「似合っているのはフィオレです! 何で私がこんな格好なんですか! 平凡な私がこんな格好をしていても……」

「ふん、この私を生贄にして逃げようとするからこうなるんだ。でも可愛くて似合っててよかったな」

「よくないよ! というかフィオレならまだしも何で私が……」

「さっきから私は似合っているけれどエリは似合っていないとか、何を言っているんだエリは。私が美しいから何を着ても似合うのは分かるが、エリの場合も違和感無く似合っているからな?」

「! 私は平凡だし!」

「……平凡、辞書を引いてみろ」


ため息をつくようにふぃおれに言われてしまった私。そこで、


「エリ、何処に行ったのかと思えばここか。朝からギルドに並びに来たのか?」


 みるとそこにはクロヴィスがいた。

 全ての元凶であるクロヴィスに私は、


「クロヴィス、クロヴィスのせいで私はこんな格好をさせられたんだ!」

「……似合っていて可愛いじゃないか」

「な! 無理やり私はあの子達にされたんだ!」


 怒って私はそうクロヴィスに言うと、クロヴィスは彼女達の方を向いて頬笑み、良くやったというかのような手の動きをした。

 女の子達がキャー、という黄色い声を上げる。

 イケメンなんて大っ嫌いだいだと私は心の中で切なく呟く。


 そこでクロヴィスは傍で同じような恰好にさせられたフィオレに気付き、


「何でお前までそんな恰好をしているんだ?」

「エリに巻き込まれたんだ」


 低い声で答えるフィオレに私はびくっとしながらも必死で何かいい訳をしようとして、ギルドの依頼も思い出して、


「じゃ、じゃあフィオレに何かお菓子をごちそうするよ!」

「依頼の余りだろう」

「うぐっ!」

「仕方がない、それでいいだろう。そして愚痴も聞いて欲しいし」

「そ、そう、じゃあ今日は戦闘なしでいいよね、クロヴィス!」


 そう私はクロヴィスに言うと、クロヴィスは頬笑み、


「依頼は数日間有効だろう?」


 と、これからの予定を埋める宣言をされてしまったのだった。






 だが、だからといって大人しく引き下がる私ではなかった。

 それならばできる限り戦闘の依頼に行かないように邪魔し、お菓子とポイントがたまりそうな依頼をゲットしてやると私は思った。

 なのでギルドが開くまで、フィオレとクロヴィスの二人と話していると、


「あれ? 今日は杖の妖精はいないんだね」


 旅装束の長い黒髪に青い瞳の少女。

 フードの隙間から見えるそれは相変わらずの美貌である、人間と魔物のハーフであるローレライ。

 海辺の町で出会った彼だが、そういえば時々こっちの酒場に来るような事を聞いていた気がする。

 

 そう思っていると、フィオレがやけに険しそうな顔をして、


「お前……何か、人と違う気がする」

「へー、分かるんだ、お嬢さん」


 にこっとライは頬笑み、フィオレの事をお嬢さんと言った。

 それにフィオレは沈黙してから、次に私を見て、


「これは、エリの知り合い?」

「う、うん。海辺の町に行った時に、その、酒場で会って」


 という話にしておいた。

 ライがローレライである事は秘密にしておかないといけないのだ。

 そう思って私は言うとフィオレは、


「ふん、酒場か。ああいった場所は色々な物が混ざるかな。まあ、昔は獣耳の生えた獣人の魔族もまぎれ込んでいたようだが、最近は見なくなったと聞くが……」

「え? 猫耳が生えた人間は、魔族なのですか?」


 そのフィオレの言葉に私が問いかけると、フィオレは少し黙ってから、


「あー、うん。場所によるかな。獣人達を生き神様と崇める地方もあるし、一緒に暮らしている地域もある。そういった地域では混血が進んで、人間とほとんど変わらなくなってしまって、たまに先祖返りの獣耳人間がいるくらいなんだ。でも、彼らの中で特に力の強い種族は魔族になっているはず……なんでエリは知らないんだ?」

「え、えっと、普通に獣人なんかも暮らしているのかと思っていたから……」

「……おとぎ話を信じるくらいに、“箱入り”か。世間知らずと言われても仕方がないかもね」

「う、うう……」


 だって、そもそもこの世界の人間じゃないしと私は思いながら、それはいえずに黙る。

 それに今の話を聞いていて私は、


「フィオレ、一つ聞いていいかな」

「何?」

「私の飼っている猫のタマっているじゃん。フィオレにはどんな風に見えた?」

「見えたって……ほら、あそこで背伸びをしている茶色い猫がいるじゃん」


 そう言って指差した先には、茶色いふさふさの毛並みの猫が、大きな欠伸をしている。

 それは私には、ただの猫にしか見えない。

 私は……嫌な予感を覚えつつもそれ以上何も言えずにいるとそこでライが、


「でもこうしてみるとエリのドレス姿は最高だね。こんなに可愛いなんて……嫉妬せざるおえないよ」

「……好きでこんなものを着ているわけじゃないのに」

「でもこれなら色々な男がふらふらとよろめいてしまいそうだね。クロヴィスも大変だな~」


 ちらっとクロヴィスを見るライだけれど、クロヴィスはそれを鼻で笑い、


「エリが他の男に取られるとでも言いたいのか?」

「いえ、ちょっと言ってみただけです。可愛い子には何時どうなってもいいように粉をかけておくのが定石でしょ? と挑発してみてもいいのですが、私とこの二人、どちらが美しいかなと思って。やっぱり、私の方が美しそうだね。うん、納得したから良いや。それでお願いがあるんだけれど、今日泊めてくれないかな? 宿代浮かせたいんだ」


 と、私の家に泊まりたいといいだしたローレライの、ライ。

 私はちらりとクロヴィスを見ると、何となく嫌そうには見えたが、


「……エリの好きにすればいい」

「そうなんだ、部屋は余っているから良いよ」

「ありがとうね。お礼に、生の棘ココナッツと缶詰を持ってきたんだ。海辺の特産だからね」

「わー、ありがとう。それを使って何を作ろうかな~」


 あのココナッツは、ミルクの代わりに色々使えてとても重宝しているのだ。

 わざわざあそこまで移動して採りに行くのも、主にクロヴィスが徒歩で行かせようとするから大変だし、この町のお店で見ても結構なお値段になっていたので凄く嬉しい。

 そんな風に私が喜んでいるとそこでフィオレが私の肩を叩いて、


「あの、私もお泊まりさせてもらってもいいかな」

「いいよ。てことはお友達何人も今日はお泊まりなんだ!」


 そう喜ぶ私にクロヴィスが、


「俺の時は嫌がったくせに、他の奴にはそんななのか?」

「だ、だってクロヴィスはすぐに戦闘に連れて行くし……」

「……明日から連日戦闘だ」


 そう、私にお仕置きだというかのようにクロヴィスが私に告げたのだった。


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