第六話
『カレン!なぜここに!!』
いろいろ考えることがあったが第一声にそれがでた。
『あなたこそなぜここに?!たしか冒険にいくとかで今日も森の方に行ってたんじゃなかったの?』
『帰り途中で村の方に火の手が上がってるのが見えて急いできたんだ。ってかそんなことよりカレンも手伝ってくれ、母さんが大変なんだ。』
そして母さんの方に目をやったカレンが目を丸くして見る。
『カレンちゃん、ソラを連れてここから逃げて…』
今にも消え入りそうな声でカレンにお願いする母さん。
そして母さんの体に覆いかぶさっている瓦礫をみて状況を理解する。
それは二人でなんとか出来る状態ではないと…
『ソラ……。』
もし僕ら以外に人が、火の手が迫っていなければなんとかなったかもしれない。だがここに居ればソラも巻き添えになって死んでしまうかもしれない。
そう思ったら声が出てしまう。
『残念だけどここを離れましょ!』
そう言った瞬間ソラがすごい形相でカレンを睨みつける。
『何言ってんだ!?母さんを置いていける訳がないだろ?バカなことを言ってないで早く手伝ってくれカレン』
今にも泣き出しそうなソラ。
痛いほど気持ちはわかる。だけど私にはそれ以上に大切な物、想いがある。
小さいときからソラのことが大好きだった。正確に言うと物心ついたときからソラのことが好きだった。
気がつけばいつもソラのことに目がいっていた。
冒険って言って森にいったときも心配で何かあってはと思っていつも止めていた。
それでも森にいくソラの後をこっそりつけたりと心配で堪らなくなるくらい、気がつけば貴方のことが好きだった。
そんな大好きなソラがこのままほっとけば消えて無くなってしまうかもしれない。
そう思うと身体が自然と勝手に動きだす。
ソラの腰回りに両手を回しソラを引き剥がそうとする。
『なにするだカレン!!』
ソラは声を荒げてカレンを睨む。
『お願いソラ、私と一緒に逃げて。』
『何回も言ってるけど母さんを見捨てて逃げれるわけないだろ!?』
感情の昂りに怒鳴り散らすソラ。そんなソラをなんとしても救いたい。
そんな気持ちが先行しいっそう力を加え引き剥がそうとするカレン。
『ええい、もういい。そんなに逃げたければ1人で逃ればいい。だからその手を離せ!!』
『いや、絶対離さない。貴方を失いたくない。』
そしてよりいっそう力を加えて引っ張りあげる。
力ではカレンの方が上みたいで徐々に引き剥がされていく。
日ごろ農園の仕事で鍛えられてるお陰かカレンの力はすごい。
『お願いだ。離してくれ、母さんがー母さんが……』
先ほどの激昂が嘘のように弱々しい声で目には涙を浮かべカレンにお願いする。
それでも引っ張るのを止めないカレン。
そして家を出てここから離れる。
(ありがとうカレンちゃん……)
そう母マリネは心の中で感謝をし目を閉じた。
マリネは走馬灯を見てるかのようにソラとの思い出が頭に流れてくる。
楽しかった思い出、嬉しかった思い出、悲しかった思い出たくさんの思い出があったけどソラと一緒に過ごした思い出はどれも欠けがえのない思い出。その思い出を想うと笑顔になる。
(ありがとうソラ…)
それと同時に"ガシャン"と大きな音と共に家が崩れ落ちた。