第三話
『どうもはじめまして』
ソラは先ほど聞こえた声の方に返事をする。
そこは小さな泉があり、神秘的なところであり、そこにいると嫌なこともどうでもよくなるような澄み切った空間である。
『はじめまして』
そういう彼女は銀色の髪をして、フリフリのドレスを着た、お人形さんのような少女だ。
獣人族なので猫耳のようなのが生えている。
なぜお互い落ち着いて話しあっているかというと、先ほど声がした瞬間慌てて変身したのである。
"前もって事前に図鑑で調べておいた、アラライサーに住む獣人族の一般的な容姿を調べといてよかった"
そういまのソラは白髪で犬のような耳と尻尾が生えているのである。
これはこの国では一般的に多い種類らしい。
『自分はソラって言うんだ。キミは?』
少し焦ったけど元々の目的どおり、ことが運べてハニカム。
『わたしはニアっていうの、ここには時々遊びにくるの』
自分の笑顔にニアも笑顔になる。
『へぇー、そうなんだ』
確かにここは空間が澄み切っていて1人でのんびり過ごすのにはいいかも。
しばらく当たり障りのない話しをしたあとしばしの沈黙がながれる…
"やべぇ、会話が続かねぇ"
どうしたものか考えてたとき、突如彼女は唄いだす。
風が変わる。夕暮れを歩く。
森は染まる深く、赤く。
妖精のささやきが聞こえる。
木々の香りに溶け込んで・・・
あなたの好きなこの景色、もうじき消えてしまうと・・・
当たり前の恵み、消えてし まう。
森は揺れている。大地も揺れてる。
去り行く自然に目を向けてよ。
声にならない命の叫びが、今、森は泣いている。
なんて綺麗な歌声なんだ、まず感じたのはそこである。
つい聞き惚れているとニアが不思議そうにこちらを見ている。
『いやー、いい歌だね』
遅れながら素直な感想をいう。
『この歌はわたしが小さいときにお母様がよく歌ってくれた歌なの』
『ステキなお母さんなんだね』
そういって微笑みかける。
『じゃ、そろそろ日もくれてきたしオレは帰るよ』
そういつの間にか日がくれて夕方になってきてるのである。
そういって踵を返すように後ろを振り向いて帰ろうとすると。
『まって』
ニアの呼び声で彼女の方に振り向く。
『また会いにきてくれる?』
ニアは寂しそうな表情でそう告げてくる。
『あぁ、もちろんさ、こんな可愛い子の頼みなら毎日だって会いにくるさ』
これは本心からの言葉である。
可愛い子の頼み、またこの綺麗な歌声が聞けるなら会いたいなぁと思う。
『ありがとう』
そういってニアは満面の笑みで見送るのだった。