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Resistance   作者: らいか
2/4

Before the decisive battles.

2話です。

戦闘はありません。

敵軍の山岳ゲリラ掃討へ向かった歩兵中隊が壊滅したという知らせは、中国軍大分駐屯部隊の全員を驚愕させるのに十分だった。

当初、大分駐屯戦闘団は、所属する1個歩兵大隊(3個歩兵中隊+火力中隊他)から1個歩兵中隊ごとにローテーションで掃討作戦に派出するはずだったが、その予定は瓦解し、さらには歩兵戦力の約3分の1を失ってしまった戦闘団司令部は、方針を大転換することが必要となった。

このまま当初の予定通りに中隊単位で掃討に向かうことは戦力の逐次投入・各個撃破に繋がるという判断から、残された2個中隊(1個歩兵中隊は86式歩兵戦闘車9両、もう一中隊は92A式装輪装甲車9両で機械化、前回の戦闘で暴露人員が大きな被害を受けたと推定されるため)と迫撃砲中隊、さらには戦闘団を構成する戦車大隊から2個戦車小隊(96式戦車8両)の支援を受け、また福岡空港に駐屯する陸軍航空隊から戦闘ヘリ(WZ-10)2機の上空直掩機を借り受け、十分に体制を整えたうえで西進を開始した。


なお、陣形としては、まず2個戦車小隊が先頭を、86式の近接援護下のもとで前進し、そのあとを92A式が続き、さらに本部が続く。火力中隊のうち重機関銃班は歩兵中隊とともに前進、迫撃砲小隊は本部の3km後方を追走し、戦端が開かれ次第現在地に布陣し、火力支援を提供、攻撃ヘリは適宜前進、偵察、攻撃を行うものとするという形をとった。


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中国軍大分駐屯部隊の各車両が次々に駐屯地を後にして集結、西進を開始した。

...その様子を虚空から睨む、電子の鷹がいた。


「おうおうおう、大盤振る舞いだな、こりゃ...」

つぶやきながら、彼...飯塚駐屯地所属、西部方面情報隊隊員は映像を見つめた。

この映像を撮ってきたのは、今彼が愛おしそうに撫でている無人偵察機だ。

余り知られていないが、陸上自衛隊では無人偵察機を比較的活発に運用している。

特に、手投げ式の簡便な機体は、使い勝手が良い上に運用に大した設備を必要としない事から、比較的小規模な部隊にも必要性が認められれば配備されている。


ともかくも、この情報はできるだけ早く各部隊に伝えなければならない。

前回の戦闘結果からして、敵が更なる追撃部隊を出してくることは予想されていた。

それに、敵の駐屯地から殆どの部隊が出撃してしまったことは大きなチャンスでもある。

既に、大きな脅威が消えてしまった敵の駐屯地を襲撃する部隊は編成を終了し、駐屯地周辺に分散して潜伏している。

九州山地の部隊に警報を伝達し、同時に襲撃部隊へ作戦の決行を伝えるため、彼は秘匿無線を発した。


『こちら、リコンホーク。全部隊へ、アイアンフィスト 、アイアンフィスト、アイアンフィスト。終ワリ』


返信は必要なかった。

この符丁を受け取った者達は、各々の持ち場に付き、ひとつの生命体のように整然とした行動を開始した。


--------------------------


『こちら、リコンファルコン。全部隊へ、アイアンフィスト 、アイアンフィスト、アイアンフィスト。終ワリ』

待ち望んでいた符牒を受信し、駐屯地襲撃部隊は行動を開始した。

襲撃部隊は、特殊任務への適正が高い対馬警備隊臨時レンジャー小隊と地元出身の第41普通科連隊所属のレンジャー隊員少数との混成部隊だ。

対馬警備隊の練度と、地元隊員の土地勘を両立させる編成で、合計40名の部隊となっている。

この精鋭40名を5名ずつ8班に分け、砲兵部隊や輜重部隊その他留守部隊が居残っている敵駐屯地を急襲する。


既に、歩哨の配置や巡回時間等は、数日間の情報収集によって明らかにされており、あとは夕刻を待ち、夕闇に乗じて潜入するのみであった。


--------------------------


『こちら、リコンファルコン。全部隊へ、アイアンフィスト 、アイアンフィスト、アイアンフィスト。終ワリ』

九州山地の部隊は、この無線を受け取り、直ちに迎撃戦準備に入った。


前回の戦闘こそ一方的に進めることができたが、今回は決してそうはいかないだろう。

だからこそ、持ちうる全ての戦力をもって迎撃しなければならない。

何しろ、ここでバラバラに撤退し、統制を失ってしまえば、あとに残るのは陰鬱な掃討戦のみ。時間こそかかるかもしれないが、最終的には我々は負けることになる。

しかし、ここで掃討戦力を壊滅、もしくは最低限でも移動不能なまでに損害を与えてやれば、大分方面への決路が拓け、部隊を撤退させることができる。

豊後水道の海上優勢は日本側の手にあるという情報を無線傍受で掴んでいるから、大分の襲撃部隊と合流後、そのまま瀬戸内海方面へ脱出することは不可能ではない。

これまで山中で遊撃戦を続け、決して少なくない損害を敵に与え、味方の被害を最低限に抑えてきたが、弾薬や糧食も乏しくなり、人員の疲労もたまってきている。正直、ここまで保った事の方が意外だった、と遊撃部隊の中隊長は思う。

現状、部隊の士気こそ高いが、このまま戦闘を続行すれば、装備・人員両面で劣勢になり続けることになる。


このあたりが潮時。

中隊長は、現有全戦力を掃討部隊に叩き付ける腹決めをした。


『こちらHQ、中隊全部隊へ。敵が掃討戦力を出してきたことが確認された。詳細は不明だが、追って報告があり次第下達する。いいか、これは総力戦だ。本中隊の命運はこの一戦にかかっている。各員一層奮励努力せよ』


言って、中隊長は思う。

...この無線は、いや、我々は、後々の戦史に名を残すのだろうか。

たかがゲリラの分際で敵の掃討部隊と正面から戦い、まともな損害も与えられずに全滅した、愚かな部隊として?

それとも、侵略軍と果敢に戦い、大損害を与えつつも全滅した、悲劇の英雄として?

...劣勢を跳ね返し、敵を壊滅させ、撤退にさえも成功した、奇跡の部隊として?

そこまで考え、栓無き事だと思いなおす。

たとえ、我々にどんな未来が待っていようと、今できる最善のことを積み上げていくだけだ。

そう断じて、中隊長も動き始めた。

時間は残り少なく、やるべきことはあまりに多い。



書き終わって思ったんですが...

なんか、福井晴敏先生の劣化版感が出てるな~...

やっぱり、よく読む作家さんからは、大きな影響を受けてるような気がします。

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