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決着と開戦の前哨戦

辺りは騒然としていた。

闘技場は氷漬けになり、生きている人は殆ど居ない世界に成り果てている。


《こ、氷の…大魔法…?》



大魔法とは元首並みの賢者や魔導士達が何十人と集まってやっと完成する魔法の一つ、一人が易々と撃ち放てる技ではない。



《こ、氷の大魔法です!氷の大魔法が全てを凍てつかせました!!ひ、一人勝ちです!一人勝ちです!!》



実況の声がそれを現実だと解らせてくれる、それだけ現実味のない状況だからだ。




《決まった!勝者は無名のダークホース、ファントーム=アルヴァスティン!!だァァァ!!》




……………………




「おいメイシャン、なんか俺たち負け扱いになってないか?」


「嘘!なんで!?」


「フィールドに居ないからじゃないか?」




職業柄夜目には慣れているため状況把握に時間は掛からなかった。

俺達はある方法で地面の下に逃げ込み助かったのだ。



「メイシャン、まずこれを説明してくれ」




ヴァオッ♪ヴァオッ♪




メイシャンと俺の下に巨大なモグラみたいな生物が嬉しそうに寝そべっている、俺達はコイツに助けられた。



「ウチの座長の使役獣、“リトルマウンテン”の「ドンファン」」



ヴァオッ♪



リトルマウンテンって言ったら迷宮の洞穴ステージに居るボスモンスターだったよな…あそこの狩り場はソロじゃキツいんだよなぁ…。





って言ったら座長さんはテイマーなのか?




「……ドンファン、どうして?」



ヴァオッ!!



「…この人なら大丈夫だよ」



そう言うとドンファンは小さく唸る、そうして旬順したかのように黙り込んだかと思ったらコチラをチラリ見る。



「……ふむ、お嬢が言うならば」



「リトルマウンテンが喋った!?……ってそうか、INT高いからテイムしたら言語しゃべれるのか」


「お嬢、こ奴何者じゃ?」


「ウチもビックリしてる、なんでドンファンが喋れるのを驚かないの?」


「あー…前に喋るレッドワーム見たから…」



「赤芋虫が喋ったの!?」



妙な誤解が生まれた気がするが話を進めよう。





「ワシの耳によると今晩大異変が起こりこの王都は戦場になる、今すぐ逃げるのだ」


「待って、大異変?この王都が戦場?話が見えないんだけど」



「詳しい話を聞かせてくれ、ドンファン」


「うむ、ワシは聞いてしまったのだ、ダインが今晩から明朝に掛けてワシ等を開放して町人達を混乱させる気じゃ」


「座長が?何のために?」


「わからぬ…しかしダインのあの眼は正気のソレではなかった」




もしもそれが本当ならば直ちにセシリアに話べきだ、座長であるダインの身柄を拘束しなくてはならない。



「わかった、ドンファンは先に逃げていて」


「ワシはダインに服従の呪文を掛けられた、ワシも騒ぎの一役をやらねばならん」





反乱の兆し、レイチェルには悪いが城で籠っていて貰わなくてはならない。


俺は、リシュの元主人と話を付けてくる。





レイチェル達を帰しセシリアに状況を伝えた。

そしてサーカス団座長のダインは速やかに捕縛されたそうだ。



真夜中、俺が今居るのはこの国直属の大聖堂、「ビュンルッセル大聖堂」だ。


俺は問答無用で戸を蹴破った。



ガゴンッ



中には一人の修道女がこの国の守り神「フレイア」を型どった像に祈りを捧げていた。



「カミュ、少しいいか?」


「…あら…何かしら?」


カミュは静かにコチラを向き、にこやかに笑みを浮かべている。



「……二、三質問があってここに来た、答えてくれるよな?」


「……何かしら?」



柔和な笑顔は崩さず、可愛らしい微笑みはどこか妖しい蠱惑的な面すらあった。



「まず一つ、お前は今何してんだ?」


「ここの礼拝は私の勤めよ?」


「じゃあ二つ目、リシュの元主人はお前だな?」


「……ええ、そうよ?」



暗に自分が件のアサシンだと言うことを認めた、ならばやりたいことは一つだ。


「俺が求めるのはリシュの解放、アサシン稼業から手を引く事だ」


「あら、優しい条件ね」


「俺もお前も同業だ、憲兵達に引き渡すつもりもない」



元々自分の無実を証明するためにやっていただけだ、そこまでは俺の領分ではない。



するとカミュは首のロザリオを取ると俺に投げ渡した。


「条件1はこれでクリアよ、そして条件2は…残念ながら私には無理ね」


「……なんでだ」


殺気…とは違う、何か面白がっているようなカミュの笑みはゾクッとする物があった。



「どういう事か…ねぇ~、私はまずアサシンじゃ無いのよ~」


「どういう……!?」



ボロッとカミュの体が崩れた。


泥が堕ちるかのように崩壊を続けるカミュの身体、脱け殻となった修道服の中には一人の幼い少女が居た。



「えへへぇ、だましてごめんねぇ?」



「お、お前は…」


「わたし、ナナ!ナナっていうの!!」


ナナと名乗った少女は笑いながら自己紹介をする。


「おにぃちゃんはアツキ~っていうんだよね!!ナナしってる!!」


「あ、ああ」


「でね!おにぃちゃんのおねがいでね!アツキおにぃちゃんをころさなきゃいけないんだ!!」


「!!」


ドンッ!



天井から狼を思わせる人間が落ちてきた、俺のリアルモンスター知識には無いモンスターだった。


「じゃあ…さよなら!」



「グギャァアァアァアアア!!」


狼は叫ぶと俺に向かって飛び込んでくる。



「クソッ!!カミュはどこいったんだ!!」






………………


夜、私はセシリアに言われて私の部屋に数人の近衛騎士を置きました。


理由は聞かされておりませんが、何か良からぬことが察っせられます。




コンコン




『カミュでございます』


近衛騎士が念のために魔法で確認します、この世界では魔法で変装なんて容易いのです。



シスターカミュは聖堂魔導師団「マリアローズ」の師団長、彼女は一目見れば魔法の構図が感覚で分かる天才でもあります。

更には魔力循環法を産み出し、遠隔地でも定置魔法を操作できる方法を産み出しました。





「カミュ、外では今何が起きているのですか?」


「ええ、反乱の兆しがあったらしくて」


「カミュは何をしに?」

「レイチェル様をお迎えに」


「まて、そんな話聞いていないぞ?シスターカミュ」


近衛騎士がカミュを問い詰めました、私はカミュの尤もな笑みは少しだけ影が見えた気がしました。




「地下の祭壇部屋にお移りください、強力な結界の中に王も后様も居られます」






……………………



アツキの情報によって私達の憲兵兵団は町中を駆け回っていた。


私と直属の部下であるアンスィとニアはアツキの後を尾けている。



理由はアツキの情報を鵜呑みにしている訳ではないからだ。


まず反乱が起こるなどと言う情報自体不確かな物であるからだ、アツキはサーカス団のメンバーからのタレコミだと言っていたがそれならアツキではなく私達憲兵に言うのではないのか?


それに着いた先はシスターカミュの教会だ、カミュに限ってそんなことは…






ガッシャァァアン!!






「セシリア隊長!教会の窓が!」


ニアが剣を引き抜きながら警戒体制に入る、窓から飛び出てきたのは血まみれ傷だらけのアツキだった。



「アツキ!!」


「く、来るな!」



アツキは短いモーションで投げナイフを投擲する、その先には人の形をした狼のような魔物が居た。



「ニアは魔物を、アンスィはアツキを回復!」




「はいっ!!」「了解しました」



「…やめ…ろ…にげ…ろ…」



アツキはうわ言のように私達に警告を発している、アンスィは傷に手を当てて治癒魔法を唱える。


「大丈夫、ニアは“一陣の疾風”と呼ばれた騎士だ、速さだけならお前にだって引けはとらない」



「……違う…あの狼……は…」




「ええっ!!ちょっと聞いてないわよ!」


ニアの叫びで私は振り返る、その時私は見てしまう。





「…その…狼は…“不死”だ…」





斬り跳ばされた数多の狼頭、ニアの連激は的確に狼人間の首を跳ねている、しかし狼人間は斬られた直後に新たな首を生成していた。





「ニア!引きなさい!!」


「む、無理だよ!!コイツ自分の腱切りながら突っ込んでくるんだもん!!」



首を跳ねている時だけ少しの時間が生まれる、しかしその隙を埋めるかの如く移動速度が速い。



そして自身の再生速度に物を言わせての飛び込み攻撃、じわりじわりと体力を奪われていくのだろう。




「はぁぁあ!!」



狼人間の横っ腹をアツキが蹴り飛ばす、アンスィは速度強化の魔法をニアに使っていた。




「……引きましょう、“ワープゲート展開”」


アンスィが光を放つと光の渦が沸き上がる、これに飛び込むと術士が印した“記憶の紋章”の場所にワープする。

まずはニアが飛び込んできた、アツキは狼人間の身体を切り裂くとワープゲートの中に逃げ込んだ、次に私が光に飛び込んだ。







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