蠢く悪意と眠れないアサシン
時系列がおかしいことになっていますが、激流に身を任せてください。
「あーあ、裏切られちゃったかー」
豊穣祭を間近に控えたこの忙しい時期、大臣や重役達の息子達の暗殺、有力貴族の汚職告発、これだけでこの国の国民の信頼は大分落とすことに成功した。
「ねぇねぇあにさま~“うらぎり”ってわるいことなんだよね~?」
「ああ、そうだぞ?“うらぎり”は悪いことだよ~」
「じゃあ、うらぎったリシュはどうなっちゃうの?」
「勿論殺されても文句は言えないね~」
「わぁ!リシュかわいそう~!ねぇ~アビス?」
「……グルルル」
眼鏡の優男の“セージ”
まだ5つの“アルケミスト”
アビスと呼ばれた“ホムンクルス”
更には私の元から去っていったエルフの“ハンター”
ここに居るのは我等同志のほんの一部。
我等の目的は様々、
神の知識領域に入りたい。
生き別れた兄を探したい。
主である少女を守りたい。
自分にだって目的はある、悪の無い平和な世界を作りたい……それだけ。
我はアサシン。
しかし“正義”の為にしか殺しはしない。
目的も様々な我等が何故一つのパーティーを組むのか?
否、まず前提条件が違う。
我々は一つのギルドであり一つの社会であるのだ。
全ての欲や野望願望のため、我々がギルドマスターはある一つの目標を打ち上げた。
“万能の神を復活させて、全ての人の願いを叶えさせてもらおう”
私はマスターの手を取った。
彼の言葉は全て絵空事でしかない、しかし彼の夢は賛同させる“何か”があった。
その夢をこの世界に何百、何千といる我等が同志が叶えようとしている。
その為の第一歩が私達の手に委ねられたのだ。
皮肉にも決行日は明後日……剣魔祭当日だった。
「……」
眠い…全く寝れない…。
「…すー…すー…」
「…にゅぅ…」
右側、小柄なエルフには見会わないグラマスな体つきのリシュ、替えの服は無いらしく俺の部屋にあったバスローブをパジャマの替えとして着ている。
サイズが大きいのも合わさって、逆に胸が強調されて凄く目が幸せです。
左側には赤髪の綺麗な王国騎士団17師団騎士隊長様、服は何故か白のワンピース、何時ものあの赤鎧は部屋の鎧立てに立てられている。
コチラもリシュに負けず劣らず魅力的な女性の体つきをしている、鎧に隠れてかなり大きな金山銀山を隠していたのか!!
年も近いから何か背徳的だ。
つまりこの状況、4つの蓬莱山脈に挟まれて眠れないのだ。
リシュは分かる、一大決心でご主人を裏切ると言うのは同時に身寄りを無くすのと同義だ。
ただセシリア、お前はどうしてここにいる。
そりゃ明日の件を確認しに来たのだろうが計画内容は話してあるし、レイチェルの為にも俺が剣魔祭の予選に出ることは確定している。
目下の問題はリシュの居場所なだけで…って、セシリアには事情を未だ話していないじゃないか…。
流石にハリー殺しの犯人ですとは言えないしなぁ…かといって逃亡奴隷って言っちゃうとリシュが咎追い扱いだしなぁ。
予選も手負いで抜けれる位甘いものじゃ無いだろうし、それなりに奮闘してやられますか。
リシュはレイチェルを連れ出すクエストの護衛を任せよう、その為に買ってきたってことにしよう。
うんうん、何とか着地地点を見付けられた気がする。
後は明日だ、明日中にはレイチェルの件も暗殺者の件も終わらせてやる。