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エルフの暗殺者

……コレは不味い。


この世界の人間とエルフは表面上友好関係にあるが、奴隷問題や領土問題等でかなりいざこざが起きているのは「ファンタズマオンライン」の公式設定である話だった。


更にセシリアからチラッと聞いただけだがエルフ殺しは絶対死刑、理由は外交に支障を来す。



それは表向きの理由で、エルフは一人だけでも何億もの値段で貴族に売れるからであるらしい。



エルフの奴隷を売って国庫を貯める汚い算段だ。


それに俺自身エルフ達には借りがある、不義理は果たしたくない。



「チッ…セシリアに受け渡す計画だったが…作戦変更だ!!」



震えているエルフの暗殺者を掴み、提案を持ち掛ける。



「お前が取り逃がした遊女がそろそろ憲兵を連れて帰ってくる、お前は逃げろ」


「………ナン…デ?」


「人間語が喋れるなら話が速くていい、俺はお前たちエルフに借りがある、一族の結び付きが強いエルフ達に借りを返したいんだ」


「…」


「俺はアツキ、ラミア通りの宿に泊まっている、明日そこに来い、来なかったら…分かってるよな?」



わざとらしくナイフを鳴らして印象を強く持たせる、コイツだってこの国の人間たちがどんなに汚いか知っているはずだ。


「……リシュ…ナマエ」


「わかった、リシュ…必ず俺のところへ来い、必ずだ」


「……ワカッタ」







そこだ!!第一斑は裏路地に回れ!!二班三班は正面!!四班は大魔法準備!!

速く回れ!!殺されるぞ!!走れ!!

アンチスキルグリモワール展開!!




「リシュ、必ず逃げろ」




そう言って俺はリシュの右腕にナイフを持たせて自分の脇腹を突き刺した。



「……アリガトウ…」




リシュは裏口から風のように飛び出して行った。



意識を奪っていく脇腹からの流血、痺れるような痛み。

間違いない…リシュめ知らない麻痺毒塗ってやがったな!!


と、言えるくらいの気力もなくて、今はやって来たセシリアとカミュに介抱されていた。



「全く…血を流して倒れているから心配したと言うのに、全然大丈夫そうじゃないか」


「倒れているアツキさんを見て、泣きながら私を呼び出したのはだーれ?」


傷口の消毒が終わり、カミュが緑色のハーブを取り出す。


「それにしても、アツキさんって意外と弱い?それとも暗殺者さんが強かった?」


「ギルドの経歴を見るに、ワイバーンやらマスターオークやらの討伐記録があったぞ?」



それはこの世界に来る前の記録です、セシリアさん。



「マスターオークって…接触禁忌種じゃない?」


カミュ、オークマスターはパーティーで行ったんだよ…



緑ハーブの解毒効果で身体中の痺れが取れていく、これで抗体も出来るからまぁよし、後は呂律が回るようになればいい。


「疲れたぁ…」


セシリアからの質問攻めや憲兵達の尋問やらでメッキリ精神が削れてしまった。

第一憲兵達は俺を犯人に仕立て上げようとし過ぎなんだ、俺自身は人一人殺したことはないのに!


睡魔が襲ってくる、睡魔は全世界共通の魔物らしい。



宿にたどり着いた自分はいつの間にかベットに倒れ込んでいた。




………………






「……わかった、わかったから今にも泣きそうな顔でこっちを見るな」


「……ヒドイ」



チョコンとベットに正座していたリシュは倒れた自分を半泣きでユサユサ揺らしてきた。

別に気が付かなかった訳ではない、底の分厚いブーツや机の上の見知らぬ瓶を見ていたら気配を殺していても誰かがいるのは考えなくてもわかる。



「リシュ、とりあえず膝貸してくれ」


「エ?」


「膝枕だよ、膝枕」


「ウ、ウン」



柔らかな膝を枕にして眼を瞑る、意識的なのか無意識なのか、頭をゆっくり撫でてくれる。



「……リシュ、単刀直入に聞くぞ、誰に言われた?」


「……」


「リシュの暗殺術はアサシンのソレじゃない、野生的な狩りの殺しだ」


「…ワタシノジョブ、ハンターダモノ」


「ハンターか、成る程な」



「ワタシ、ヒトゴロシシタクナイ…ダケド…」


「……?」


うっすらと眼を開ける、リシュの首に小さな鎖の首輪が巻かれているのが目に入る……仕置き首輪だ。


「お前のご主人はあの三人の殺しを命じたのか?」


「…ワタシガコロシタノハ、アノヒトダケ」


「……ふぅん、じゃあコレに見覚えは?」



ポーチから穴空きコインを取り出して見せる。



「マスターガ、ワタシニモタセタ」


ポケットから同じコインを見せてきた。



「お前が持ってる毒はご主人から?」


「ワタシノコキョウノヒヤク」



エルフの秘薬か、効果は身をもって知りましたよ。



「わかった、じゃあ後は任せろ」


「!」


「大体誰が黒幕か分かった、リシュも解放させてやる」


「デモ!」


「皆まで言うな、全部完璧に終わらせてやるよ」


額を指で弾いてやると、泣き出しそうな顔でコチラを見据える。


「ちょっ、そんなに強くやってないだろ!?」


「チガウ…ウレシクテ…£¢§!!」


「待て!!エルフ語で喋られても解らない……うわっぷ!」


頭に抱きつくなっ!てかコイツ胸でかいな!見た目はそんなでもないが着痩せするタイプか!幸せホールド過ぎるぞ!?





「アツキ、入るぞ?」


ガチャッとセシリアらしき人物が入ってくると、ビクンと体を跳ねさせる気配が伝わってくる。



「……ほう…貴様はエルフの奴隷を飼っていたのか…」


誤解だセシリア!!ってかリシュも離せよ!?



窒息間際の思考は慌ただしく、いい香りと感触で半ばこの状況を楽しんでいた。

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