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暗殺流儀?

現場は灯りの少ない裏通りだった。



「どうだ?何か分かったか?」


「んー、もっと明かりが欲しいなぁ…」


「もっと火を付けるか?」


「いや、光源魔法を使える人を三人くらい集めてきてくれ」



セシリアは憲兵達に指示を出して、直ぐに魔導士を招集してくれた、仕事が早いのはさすが騎士隊長と言うべきか。



「今晩は、聖堂騎士団補助部隊「マリアローズ」のカミュです~」



やって来たのは見た目から修道女だと判る風貌の人物一人だけだった。



「あ?一人か?」


「シスターカミュはこの国切っての光魔法の使い手だ、回復や治癒魔法にも優れている」


「一応医学にも精通しているのですよ~、はい『ライトボール』」



眩い光の玉を掌で創るカミュ、更にその光の玉はふわりと浮き上がり仏様を照らす。



「これは驚いた、魔力供給をしなくても持続するのか」


「一見の皆さんは驚かれるのよ~?」


持続魔法は大抵魔力供給をしないと直ぐに切れてしまう、魔力供給するためには何かしらの媒介が必要となるのだが…コレが天才の力なのか。






「アツキ、分かったか?」


「ああ、喉を一閃…随分と綺麗に斬れてるな、抵抗した跡も苦しみで傷口を掻きむしった跡もない」


「服も綺麗ですね~、暴れた跡のような皺が無いわね~」


「即死か…かなりの腕利きの仕業だな」



三人が簡潔に仏様の状況を分析する。



被害者、ラバール=ビュンルリッチはこの国の大臣の一人であるカール=ビュンルリッチ公爵の長男だ。


表向き頭脳明晰な優しき人物と評されているが、実の所は酒、博打、女にまみれていたらしい。

この晩にもお気に入りの娼婦達と遊んでいたらしく、恨みを買うこともしていたとか。



「……セシリア、カミュ、変なこと聞いていいか?」


「なんだ?」「なんでしょう?」


一つ、この場にて余りにも不自然な物が不自然な形になって落ちていた。


「この世界の硬貨にさ、'穴の空いた硬貨'ってあるか?」









「無いな、第一なんで硬貨に穴を開ける?」


「記憶に無いですわねぇ…」



中心に正方形の穴の空いたコインが六枚、血塗れになった首もとの床に落ちている。


「……六文銭…か?」


「ろ、ろくもんせん?」


「三途の川の渡し賃だ…って言っても知らないか」


「えーっと、何なんだ?三途の川の渡し賃とか…六文銭とか…」



説明して分かるのかどうかは不明だが、セシリアに不吉な物だと言う事を伝えると、拾った六文銭をまじまじと観察し始めた。



「このコイン、血塗れなのに綺麗だな」


「なに怖いことを言ってるんだ?血塗れで呪われそうな位だぞ」


「まぁ大丈夫ですよ?呪われてはいないですから~」



まぁ、こんなものか?


面白い物も手にいれた、後は憲兵達に任せるとして、自分は別の事に集中するとしよう。





一週間後



セシリアは俺をこの事件を解決するに当たってのプロフェッショナルだとか言って入城しやすくしてくれた。

その見返りとして本当に事件を手伝わされているのだが…。



「グリッツとラバールの共通点か…女たらしで結構汚い奴らってことかな?」


「二人とも南のルソン村で少女に乱暴したらしいよ?」


「あいつらとハリーとの三人は仲良しだったからなぁ~、次殺られんのハリーじゃね?アイツ周りの村や町でかなりの女に乱暴してるらしいからなぁ~」







「って事で、ハリーって誰だ?」


「ハリー=ジェリオート、この国のナンバー2の息子だよ」


セシリアと俺とはレイチェルの部屋に向かう前に必ずしセシリアの執務室に集まる、俺一人でレイチェルの居る部屋の近くまで行くと見つかった瞬間に死刑が確定するからだ。


「三人は昔から悪道でな、農民やカモの商人に暴力を振るい、金を集り、最終的にはそれらの娘や妻に乱暴を働く奴らだった」


「だから余り憲兵達にもやる気が見当たらないのな」


「ああ、しかし比較的グリッツはいいやつだったんだぞ?」


「その比較的ってのの比較が悪すぎて何とも…まぁ次はハリーって奴か」


「ああ、その確率は高いだろう………なぁアツキ」


「なんだ?」


「……ここだけの話、ハリーは見捨てて欲しい」


「ほう?その心は?」


「…………アイツは…レリィの婚約者候補なんだ」



一瞬話が見えなかったが直ぐに理解が出来た。


この大陸の首都であるこのグリンデーク国は王女にわざわざ政略結婚をさせる必要は余りない、つまり内部の繋がりの強化のために大臣クラスの子息、貴族達と結婚をする事が多い。

つまりそれの中には現在この国のナンバー2の息子であるハリーも勘定に入っていると言う事だ。



「うーん、それは俺の流儀に反するな」


「…流儀?」


「助けれる命は助ける、自分の広げた手の中にあるものだけを護る、どうしても殺さなくてはならないときはせめて楽に逝かせてあげる……コレが俺の暗殺流儀」


「……そうか」



……見るからにしょんぼりしてしまったな…これじゃあ男が廃るな。

ここは冗談で元気になってもらおう。



「まぁ、セシリアが俺の嫁になるなら考えてやるかな?」


「はッ!?」


「ほら、流儀を曲げるにはこれくらいのご褒美があっても良いじゃない?」


「わ、私なんかと、結婚!?」


「セシリアみたいな可愛い奥さん、大歓迎だよ?」


「○★>℃@∈≒≡!?」


「まぁ、半分冗談として…そろそろレイチェルの所に行かないか?」


「じ、じょうだん?」


「あ、ああ、セシリアが凄くしょげてたから…」


「何処から何処までが冗談なの…?」


「そ、それは…結婚の下りが…」


「そ、そうだよね…私なんか女の子らしくないもんね…私なんかと結婚してもね…」


「いや、セシリア見たいな美女と結婚出来るなら死んでもいいくらい幸せになれそうなんだが…」


「…ッッ!馬鹿!阿呆!アサシン!」


「アサシン関係ないだろ!?後、口調がおかしいぞ!?」


「うるさいうるさい!!バーカ!純情乙女の敵!!」



そのまま拗ねたセシリアが飾りの大剣を投げてきた所で俺の意識が跳んだ。

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