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王女と女騎士と暗殺者

王女の部屋の前へとやって来る最中に俺は豪華な廊下や石像、美しい庭園を見てに気疲れし始めていた。


「着いたぞ、ここがレイチェル王女のお部屋だ」


「なぁ…やっぱ俺が呼ばれたのは何かの間違いじゃないのか?」


「そんなことはない、レイチェル様は貴方をお呼びだ」


そう言うとセシリアは俺からアカツキを回収した、今日だけで何回回収されてるんだアカツキよ。


コンコン



『どちら?』


「17師団騎士隊長セシリアです、例の者を連れて参りました」


『入って』


「失礼します」


ゆっくりと扉を開けると、そこには美しい金髪の少女がゆったりと椅子に座ってこちらを向いていた。


「……綺麗だ」


「アツキ、心の声が漏れているぞ」


「ふふっ、ありがとうございます」


「は、はぁ…恥ずかしい限りで」


うん、やはり本心が出ると恥ずかしくなる。

ここは強引に話を逸らそう。


「で…何故自分はなぜ呼ばれたのでしょう?」


「ああ、別に普通に話してくださって結構ですわ」


「レリィはあまり儀礼とか好きじゃないから普通にしてやってくれ」


「はぁ…じゃあお言葉に甘えて、用事ってなに?言っとくけどなんとか男爵の息子殺しは俺じゃないからな?」


「いえ別件です、私が訊きたいのは貴方の噂についてです」


俺の噂?俺はこの世界に来てから目立つようなことはしていない筈なのだが…。

「アツキ様は魔王討伐の勇者パーティへの参加を断ったと聞きました、しかも勇者様直々の申込みだったとも」



この話を聞いて思い当たる節があった。

この世界に来る前、「ファンタズマオンライン」での大クエスト「勇者からの依頼」で、クエストルートに「勇者パーティに参加する」と「勇者パーティに参加しない」とがあった筈だ。

確かあの時は「参加しない」を選び、ギルドメンバーやお祭りパーティでエリアボスの「アヌビス」を血祭りに上げたんだっけな。

なんか懐かしいなぁ…勇者ルートは甘えって言ってたっけ。



「確かに俺は勇者パーティを断ったが…」



「何故なのですか?勇者パーティに入れば名声も地位も手に入ったのに」



「うーん…それよりも大切な事があったからかな?」



オンラインゲームの良いところは仲間内でのお祭り騒ぎが面白い事だ。

だからあのアヌビス祭りに成ったわけだし、報酬とは違う楽しみがあるわけだ。



「なるほど…大切な事ですか」


「ああ、名声とか地位とかじゃなくてただ単に楽しければそれでいい、って感じられる位楽しいことがあったからかな」


「……私も皆さんと遊んでみたいな…」


ポツリと呟いたレイチェルの言葉を聞いて俺は確信した、このクエストはこのお姫様を外に連れ出すタイプのクエストだ。



なにもアサシンの職業クエストは何も暗殺だけではない。


時にはある事情によって幽閉されている重要人物を救ったり、このようにお姫様等を連れ出すクエストだってある。


ではこのお姫様のために一肌脱ぐとしよう。








「たしか…三週間後に豊穣祭があったよな?」



「ああ、豊穣祭ついでに軽い剣魔祭もあるはずだ」



この国の祭りは期間が一週間単位で行われる、その方が金がよく周り、経済が活性化すると火蜥蜴亭のマスターが言っていた。



「じゃあその剣魔祭前日に連れ出してやるよ」


「ああ、予選会ならレリィも出席しなくていいからな」


「報酬は…そうだな、豊穣祭をしっかりと楽しむこと、準備してほしいのは動きやすくて身分を隠せそうな服だ」


「わかった、私が用意しよう」


「あの、アツキ様は剣魔祭に出ないのですか?」


「剣魔祭?うーん…出てもいいんだけどなぁ…」







「因みに私も本選から出場するつもりだ、勇者パーティから勧誘が来るアサシンの妙技を私も見てみたい」


「そんな大したものじゃない、隙を突いてプスリってするだけだ」


「決めました、私は豊穣祭を楽しむために剣魔祭の予選でアツキ様を見ます!!」


「おいィ!?剣魔祭なんて本選の方が楽しいだろ!」


「私は「剣魔祭」ではなく「アツキ様」を見たいのです」


意思の強そうな眼が俺を睨む、それに怯んでしまった俺はなにも言い返せず、無言を承諾と取ったレイチェルはニコニコ顔でセシリアと話している。


「セシリア、楽しみが増えましたわ」


「レリィが豊穣祭を楽しめるように私もベストを尽くすよ」



……この二人って実は百合なんじゃないか?




―夜の町のどこか―









首を刈る


魂を刈る


命を刈る




生き人の生命を奪い取る


生き人の魂を奪い取る



生き人の生きていた証を奪い取る




ただ願うのは



少しでも楽に彼方の世界へ逝って貰う事




その為に俺は六文銭を置いていく



もしホントにあの世が有るのならば




閻魔様に「ヨロシク」と伝えてくれ


「アツキ、出ろ!」


「んー?」


今自分が寝ているのは王都の兵舎の地下の部屋、通称「土牢」は湿気と風通しの無さで蒸し暑く、寝にくい環境だった。


そんな場所でうつらうつらとしていると、突然セシリアが起こしにやって来たのだった。



「全く…外から鍵が掛かっているじゃないか!憲兵共は何をやっている!」


「話が見えないんだが…」

「殺しだ、今度はビュンルリッチ家の長男だ!くそっ、鍵は何処だ!」


「よし、コレで無罪!!」


「今回は少し妙なんだ、アサシンの考察が欲しい」


「ふぅん…そこどいて」



確か部屋の奥に…あった。







斬ッッッッッツ!!










「……は?」


セシリアの呆気に取られた声が心地いい、確かに鋼鉄で出来た扉を一刀両断すれば皆驚くよなぁ。


「アサシンスキル、「弱抜の眼」、パッシブスキルだけどね」



「ぱ、ぱっしぶすきる?」「…なるほど、なんでもない」


メタな事は言ってもわからないのか、と納得しておくとして。


「で、事件は?」


「あ、ああ…コッチだ」


とりあえず現場だけは見てみよう、そんで豊穣祭へ向けて作戦を建てよう、そう思っていた。


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