“ハイエルフ”リシュ
『リシュ様!ウォーターエルフの村の名物料理、山桃のシャーベットですじゃ!』
『お、お腹一杯です…』
『ささ、リシュ様!我が家の家宝に御座います!!お納めください!!』
『て、手に余ります!!』
いつになってもリシュが帰ってこないので、ゴルディーと共に村長の家に迎えに着たのだが、なんだか凄いことになっている。
村長一族が総出でリシュをもてなしているのだ、うわぁ…あんな高そうな壺まで差し出してるよ…。
『村長、何事だよ』
『アツキ!貴様ハイエルフ様を連れ回しているとは何事じゃ!』
『すまん、まずハイエルフってのから教えてくれ』
『ゴホンッ!ハイエルフ様とは白髪白肌をしていらっしゃるエルフ族の上位種族じゃ!!属性に絞られず様々な魔法を使える素晴らしい種族での!ハイエルフ様と出会った者は幸せになると言われておる!!』
『属性に絞られない…だって?』
『うむ!火水風土雷念闇聖神無…これらの純粋な魔法属性にこれらを混ぜた混成魔法“エナジー”に勝てる奴なぞおらん!!つまりハイエルフ様は最強の魔法種族なのじゃ!』
リシュが最強の魔法種族ハイエルフ?
あの時酒場で魔法ぶっぱなされてたら俺死んでたじゃねぇか…。
『リシュ様!魔法見せて!』
『こら!!リシュ様に何て口を叩くのよこの馬鹿息子!!』
『見せて見せて!』
『あ…う…』
SOS出されても助けないそ?
『うぅ…“エナジースタン”!!』
ビカッ!!
眼が焼け付くような光が辺りを包む、その場にいた殆どのウォーターエルフ達が悶絶、………しかしストロボカメラのフラッシュ並の威力しかないんだが…。
「アツキ!!」
「お、おう…」
リシュに引っ張られるようにして村長の家から逃げ出した。
リシュに連れられ夜の森を歩く、月明かりに照らされたリシュは白い髪と肌を更に美しく写す。
『…私は彼女達の奴隷になる前はお母さまとお姉さまと一緒に全国を流浪してて…お姉さまから魔法を沢山教えてもらったの』
倒木に腰掛けてリシュが話始める、俺は隣に座り無言で先を促す。
『でも私はお母さまが教えてくれる弓矢が好きで、お姉さまはちょっとガッカリしてたけど…魔法は苦手だったんだ』
『魔法ねぇ…俺の職業は魔法とは縁がないから苦手だな』
『意外と知的職業なんだよね、私もアツキも』
『だな、どの毒を使えば効率いいか頭を使うよ』
リシュがこちらを向いてクスクス笑っている、俺も釣られて笑ってしまう。
『アツキ、はじめて笑った?』
『んなことはないだろ………多分』
『……初めて会ってから余り話す機会無かったから…あの時だって、私はアツキを殺そうと…』
『忘れろ、女は兎も角ハリーの野郎は何時か殺されてたさ』
あの酒場での出来事を思い出す。
女を殺し、混乱したハリーを殺したこの少女の凶行、隷属の首輪の命令によって無理強いで殺人に手を染めた少女。
『なんで女まで?』
『…………カミュに似てたから…』
怨みの念が女とカミュを重ねたのか?それは違うな。
リシュにはアサシンのセンスが、人殺しの感性があるのだろう。
いや、無関係な人を憎しみの対象と重ねるのは殺人鬼のやることか。
まぁ口が裂けてもそんなこと言えないがな。
『なにかあったら俺に言え、叶えられる範囲でなら応えてやるよ』
『えっ……じゃあ私に人の言葉を教えて!』
『おう、任せろ』
『後ナイフの使い方を教えて!』
『ああ、ビシバシ教えてやんよ』
『それで先生って読んでいい!?』
『お、おう…構わんぞ?』
『やったぁ!!』
「っ!!」
月明かりに美しい笑顔、思わずドキリとしてしまった。
まるで妖精のような…エルフって妖精だったような気もするが……。
自分の心音が滅茶苦茶聞こえてくる、可愛すぎんだろコイツ!!
『…もう帰るぞ、眠たくなってきた』
『うん、わかった!帰ったら膝枕してあげるね?』
『ああ、もうどうにでもしてくれ!!』
その後、ゴルディーに膝枕をしている姿を見られたリシュは恥ずかしさの余りゴルディーの眼を潰しましたとさ。