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現れる恐怖

暗い地下通路を走る、地響きが強く継続的なものに変わっていく。



薄気味悪い感覚、涼しいのに嫌な汗がジワッと湧き出てくる。

内臓が圧迫されるような嫌な気配といつ嗅いでも馴れない血の香りが近寄ってくる。



「……あれは」



そして見えてきた最奥の広場、夜目の効く“梟の眼”がその内部をしっかりと捉える。




「なっ…!?」




それは衝撃的な光景だった。






「……姉さん、死んだら意味ない」


「~♪信じていたわよ~キャミィ」


そこにはカミュが二人いた、しかし修道服のカミュと、キャミィと呼ばれた漆黒のアサシンスーツを纏った端正な顔の少女がいた。



「…姉さん、もうすぐやって来る」

「ええ、王女様の“憤怒”は“サターン”の復活に充分だったみたいだし…恐らくこの国の国民は皆殺しになっちゃうけど、必要経費って割り切っちゃわないとね~」



「……」



「キャミィ、貴女の流儀に反するやり方なのは解っているけれども、あの方の願いのための必要な被害なのよ?」



「わかってる、だから私は振りかかる火の粉しか振り落とさない…コレもそう」



そう言ってキャミィはレイチェルを見下した。



「貴女…何者なの…私の“ホーリークロス”を…どうやって…」



「あの方に施しを受ければあの程度の魔法ぐらい容易く斬れる」




レイチェルはありえないといった顔でキャミィを見ていた。




「キャミィそろそろ帰りましょう、ナナやプロフェッサーが待ってます」



カミュが転移門を創造する、キャミィはなにも言わずに門へ消えていった。



「カミュ!!」


俺はカミュに叫んだ、カミュはこちらを流し目で一別すると。


「直ぐにお逃げなさい、もうすぐ魔王の一部である“サターン”が参りますから」


と呟くと門へ消えていった。



「レイチェル!」


「……アツキ様?」


レイチェルは放心状態でこちらを見る、何度声を掛けても上の空だった。


「凄い邪気が近付いて来てる、逃げるぞ」


「……魔王の…一部……?」


「らしいな…レイチェル、門は創れるか?」


レイチェルは首を横に振る。


「じゃあ走るぞ!!」



俺はレイチェルを担ぎ上げると来た道を全速力でかけ上がる。







Gyyyyyyyyyyyyaaaaaaaaa!!!!!!!!!!







地響きが魔物の叫び声に変わった、しかも只の魔物のソレではない。

すべてを“恐怖”と“絶望”に追いやらんとする憤怒の雄叫びだった。



「急げ、急げ、急げ!!」



俺自身を鼓舞することで恐怖を祓う、絶望に飲み込まれんと暗い地下通路を掛け上がる。




ついに俺は玉座の部屋に辿り着き、そのまま窓から外に飛び出す。




「なんだよ…コレ……」



国中至る所から火の手が上がり、魔物が暴れ、人々の悲鳴が聞こえる。


正に地獄絵図、何処に逃げても魔物魔物魔物。




しかし歩みを止めるわけには行かなかった、邪悪な気配が迫ってきているのが地上に居ても解るほどになっている。




火蜥蜴亭の前を通り過ぎる、マスターが血だらけになって死んでいた。



俺は無意識に泣いていた、心が折れそうになった、日常も平和も全てがひっくり返り頭がおかしくなりそうだった。





“こっちだ!!”




誰かが叫んだ、俺はなにも考えずに声のする方向へ走ると一台の小さな馬車が停まっていた。



「こっちだ!!乗り込め!!」




俺は放心状態のレイチェルを中に入れると差し出された手を引いて乗り込んだ。



「出せ!!早くっ!!」



馬車が急発進して爆走しだす、周囲を見渡すと見知った顔が居た。



「リョーマ!!」


「無事だったか、外道の剣…いや、アツキ!」


サムライのリョーマだ、更にはリスの獣人少女に初老の夫婦、鎧騎士に金髪のエルフ、御者にはドワーフがいた。


残念ながらセシリアやリシュ、アンスィにニアも見当たらない。





馬車は国を守る関所を突破し、草原地帯に出る。


「う、うわぁぁあ!!」




鎧騎士の悲鳴でレイチェル以外の全員が外を見る。




城からアノ絶望と恐怖の魔物がが現れようとしていた所だった。




人のような姿をした、何処か神々しさすら感じるソレは天に向かって叫んでいた。





“我こそ、憤怒のサターンなり!”










爆風が襲った、


馬車が吹き飛ばされた、


馬は岩に頭から突っ込んだ、



台車はおよそ70メートル吹き飛び、俺たちを投げ出した、



俺はレイチェルを咄嗟に掴み、森の茂みに身を放り出した。








痛みも疲れも恐怖も、全てがどうでもよくなってきた。



俺は少し、寝るよ…。




目を閉じて、瞼の裏の闇に身を預けた。

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