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王家の封印と験担ぎ

「足元にお気をつけください」


「ありがとう…」



私はシスターカミュに連れられて、玉座の下に隠されていた暗い地下通路を進んでいます。



しかしこのような場所がこの城の地下にあったなんて初耳です、薄気味悪いこの通路の先に祭壇があると言うから驚きです。




「着きました、ここが地下祭壇部屋です」




暗い部屋をカミュのライトボールが照らして、うっすらとその部屋の構造がわかりました。


中央に祭壇が置かれ、その前方にも巨大な扉が設置されています。そしてそれらのちょうど真ん中あたりに魔方陣があり、誰かが横たわっていました。




「え…」



その人影は良く知った顔でした。


豪華な装束を身に纏った初老の男性、王冠は血に濡れてその顔には生気が感じられません。




「御父様!」




御父様に近付こうと駆け寄るも結界が張られていて近寄れません。



「誰か!!誰か!!」



振り返ると首のない体が散乱しており、その中央には血に汚れたシスターが居ました。




「し…シスター…なにを…なにをなさって…」


「レイチェルさまぁ~騙して申し訳ございませんわぁ♪」


眼が惚け、身悶え、だらしなく涎を垂らしながら、カミュは笑っていました。




「私の目的はねぇ?王族によって封印されている“魔王の一部”を解放することなのぉ!!」


両手をゆっくりと広げながらこちらへ近寄ってくるカミュ。手に握られている短刀からは赤黒い液体が滴っている。




「魔王の一部?王族の封印?いったい貴方は…!!」



「ああ、可愛い可愛いレイチェル王女、知らぬうちに父を殺され、婚約者(ゴミ屑)達は“念のため”程度に殺され、信頼している騎士(セシリア)はこの場所を知らない……可愛そうねぇ♪」




「あぁ…あ…ああ…」



殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される…



思考が一辺倒になりそうになる、冷静に成らなければならない。





すると沸々と怒りが湧いてきた、カミュに対する怒りかは解らない、訳もわからず怒りが湧き出てくる。




私の中の魔力を練る、力を溜めてカミュに私の使える唯一の攻撃魔法を最大火力でぶつける。



「ふふっ、良いわぁ…いい“憤怒”の感情ねぇ…」



カミュが嘲笑っている、何かを呟いている、何故か怒りの歯止めを効かすことが出来ない。




「“汝、悔い改めよ!我は王家の十字を預かるもの!”」


「“ホーリークロス”ッッ!!」




カミュの身体に十字の光が刻まれた。





「みんな無事か!」


「私は大丈夫~」


「ううっ…俺も大丈夫だ…」



見覚えない広場だった、転送門の魔法は特殊な職業にしか使えない魔法であるため、とりあえず撒いたと見ていいだろう。




「そうだ!アンスィは!?」




「……ここに…」



アンスィはゆっくりと朧気な足取りでこちらに歩いてくる。



「アンスィ!!」



月明かりで照らされた彼女は、“左腕が無くなっていた”。



「あのあと…狼が…ワープゲートを通ろうとして…止めに入ったら…この様に…」


「喋るなアンスィ!!クソッ!!回復呪文使えるやつは居ないのか!!」


「あ…あ…」「セシリア!しっかりしろ!!人の上に立つ人間が動揺するな!!」




とりあえず着ていたアサシンスーツを脱ぎ捨てて荒い止血をする、アンスィは気を失ったらしい。



「“解毒”……念のためだがな…後はあまり動かさないように…」



ドッッッツ!!



見知らぬ部屋の壁が吹き飛んだ、外から魔物が飛来する。



ギャァァァア!!



「ファルコンドルだ!!」




巨大な火鳥ファルコンドルが2体現れる、狙いなど着けずにやたらめったらに炎を吐き出している。


そして外の風景から現在地が城の中だとも確認した。



「チィ…」


「ニアが牽制!セシリアは道を切り開け!アンスィ、スマン!!」



俺はアンスィの鋼の鎧の接合部をアカツキで切り裂いた。するとアンスィの鎧が外れ、綺麗な白い肌と汗で張り付いたピッチリしたシャツのような物が現れる。

ただ単に軽くしたかっただけだからな!他意はないんだからな!セシリアもニアも戦いながら冷たい目で俺を見るな!!



それにしても軽いなコイツ、引き締まった身体してるのに軽いってなんだよ?




「この先は玉座だ!“ソニックスラッシュ”!」




セシリアは剣を振り衝撃波を放つと紫色の蝙蝠型の魔物、“バッドガイ”が撃ち落とされて消滅する。


そのまま玉座の部屋に突撃する三人、最後に入ったニアが“グレイズウェイブ”を連発する。




「はぁ…はぁ…なんでだ…なんで魔物が…」



「サーカス団だ……サーカスのサモナーやテイマーが魔物を放ってるんだ!!」






ドゴンッッ!! ゴォォォ!!





爆音や轟音が響き、遠くから悲鳴が聞こえてくる。


「どうにかしなくては……」



「隊長!!玉座の下に通路が!!」


ニアが玉座の下を指差しながら手招いたその時だった。






ズズズ…




「じ、地震か!?」



ズズズ…ズズズ…



地震とは違う、不規則的な上下左右に揺れる揺れ。



ズズズズズズ…ズズズズズズ!!





「下から…何かが来る!!」





セシリアが叫び、ニアが震える。



俺はアンスィをセシリアに預けて


「様子を見てくる、念のためこの国の住人の避難と脱出をするんだ」


「しかしレリィやルイス国王は!」


この国の国王ってルイスって言うのか、はじめて知ったよ。



「恐らく逃げているかあの下だ、だから見てくるんだ」



セシリアは少し旬順したが、俺に任せてくれた。


「必ずまた会おう、アンスィの礼も出来ずに死に別れたくない」


「ああ、楽しみにしてる…リシュに会ったらコレを渡してくれ」



そう言って俺は奴隷の誓約十字架を渡す。


セシリアは受け取り、剣を引き抜きながらこちらに顔を近付けた。



「験担ぎだ」




柔らかく、そして甘酸っぱい感触が唇に広がった。



……え?



「……験担ぎだからっ!!」




そして赤騎士は疾風を引き連れ顔も真っ赤にしながら飛び出していった。

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