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3i:塔-3

「及第点だな。」

「ホッ……あいたぁ!?」

 机が一つに椅子が二つだけ置かれた真っ白な部屋でお母様の言葉に安堵の息を吐いた『電子の女帝』……エレシーの額に扇子が叩きつけられる。


「な、何を……!?」

「何をじゃないわ!この戯けが!!」

「ヒウッ!?」

 お母様の言葉に反論しようとしたエレシーは明らかな怯えを見せる。

 だがしかしこれはしょうがないだろう。彼女にとってお母様は自分を生み出した存在であると同時に絶対的な上位権限の保有者なのだから。


「詰めを誤って奴を逃がした事はまあいい。トドメはきっちり私が刺したからな。」

「は、はい。」

 お母様の放つ圧倒的な怒りのオーラに気圧されてエレシーは思わず姿勢を正す。


「ゲームを利用して勇者候補を鍛えたり、ゲームの世界と現実の世界を誤認させることでそれらを同期させた事、それに死者を出さなかった点などは十分に褒めてもいい点だろう。だがな、」

「ゴクッ……。」

 エレシーの頬を本来なら出てくるはずもない冷や汗が伝う。


「勇者に後遺症を出したり、準備に十数年かけたり、あまつさえあの海月共の手を私に無断で借りるとはどういう事だ!!」

 お母様の怒声が部屋中の空気どころか空間をも揺らし、その声にエレシーは青い顔をする。


「ヒウッ!?ご、ごめんなさいお母様!そ、それには深い事情が……」

「その辺の事情なら既にお得意様に聞いた。」

「そうそう。もう話したから。」

「!?」

 と、ここで出入り口も隠れる場所も無いはずの部屋に第三者が肩に簀巻きにされたデフォルメが施された水色の巨大海月を抱えて現れる。


「よいしょっと。」

「プ、プログラ……」

「プログラームさん!?」

 エレシーが地面に降ろされた巨大な海月に駆け寄り、その体を前後に揺さぶるが、海月は力なく前後に揺れるだけである。

 どうやら気絶しているらしい。


「海月=C=計って言う偽名で人間に化けさせ、HASOの開発を委託していたと聞いたんだが?社長さん?」

「ああそうだ。ちなみに正規依頼なら対価は今のうちのレートで270ぐらいと言ったところだな。お得意様。」

 お母様の言葉に社長さんと呼ばれた水色の髪に紫色の瞳を持った青年が答える。

 なお、この青年の服装だが、軽く体を動かすたびに体の何処かで際どいチラリズムを披露すると言うかなり特殊な服装になっており、その体から僅かに漏れ出る力で察する限り青年の実力は少なくとも『神喰らい』以上は確実にありそうである。


「賠償も含めて千年ぐらいタダ働きでいいか?」

「えっ!?」

 お母様の言葉にエレシーが勢いよく振り返る。

 なお、エレシーも含めてこの場に居る存在はいずれも不老の能力を有する存在であるため、千年程度ならどうと言うことは無かったりするし、彼らの身体は少々特殊な時間の流れ方をしているために千年と言っても青年視点の千年でしかなかったりする。


「構わないぞ。常時アナログで作業な。」

「ああそれでいい。むしろそうしろ。」

「ちょ!?せめてデジタルで……ニャアアアァァァ!?」

「プログラー……」

 そして青年の言葉と共に虚空から下手な柱よりも太い水色の触手が出現してエレシーと簀巻きにされていた巨大海月をどこかへと連れ去っていく。


「じゃ、後はこれを……」

 で、青年が何処からともなく妙に扇情的な衣装を出すが……


「その手の衣装は私じゃなくてエブリラにやれ。」

「ちえっ」

 お母様はそう言うと何処かへと消え去り、青年も消え去る。


 そして今日も『塔』に住まう彼女たちにとっての日常、普通の人間にとっての超常が過ぎ去っていく。

これにて本当に完結


なお、お母様・社長さん・『神喰らい』の三人と他のメンバーでは扱える力の量に大きな差が有りますが、それだけにこの三人は易々と動くわけにはいかなかったりします。


02/25誤字訂正

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