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1i:塔-1

 『電子の女帝』の前でヤタが入ったポッドが巨大な機械……正確には異世界強制干渉・強行突入装置『インターフェラー・ドライバー』に入って行く。

 そして一時的にポッドの中を封印……より正確に言えば各種物質的、精神的、霊的の構成情報や位置情報を固定してあらゆる外部干渉を封じることによって『インターフェラー・ドライバー』による異世界突入時に発生する物理的衝撃、世界の異物に対する排除行為、場合によっては世界間に存在する法則差による影響などを抑え込んだところで、ポッドが轟音と共に射出される。

 なお、わざわざポッドを高速で射出するのは世界と世界の狭間に存在している虚無の領域、俗に次元の狭間や世界の外側と称される空間を飛ぶ時間を出来る限り短くするためである。

 なにせ虚無の領域で何が起きるかは仮にも“神”であるはずの『電子の女帝』であっても予測は難しいからである。


「まあ、今回はすぐ下に撃ち込むだけですから恣意的な干渉が無ければ何も起きないでしょうが。」

 ただ、予測が難しいと言っても『電子の女帝』の実力では、と言う話であり、彼女の姉である『神喰らい』やお母様等の実力者になれば難なく予想が可能ではあるのだが。


「それでお母様は何処から見ていたんですか?」

「うん?何だ。バレていたのか。ツマらんな。」

 と、ここで何処からともなく蘇芳色の下地に赤い彼岸花の刺繍が施されたフード付きのコートを着た少女が何処からともなく現れる。フードを目深に被っているために目は見えないが、吊り上げられた口元を見る限りでは笑っているようである。


「質問に答えてください。覗き見何て趣味が悪いですよ。」

 『電子の女帝』の身体がヤタとの会談で使っていたホールにテレポートすると同時にお母様と呼ばれた少女も一切の予兆なくホールに現れる。


「くくく、母親として娘がどんな男を選んだかぐらいは気になる物だろう?それに性格と趣味が悪いのは産まれた頃からだ。今更治らんよ。」

 お母様は忍び笑いをしながら何処からともなく豪勢な、そして本来なら物理的に自立することがあり得ない様な脚をした椅子を呼び出して腰かけ、お母様が腰かけると共に『電子の女帝』も椅子に腰かける。

 と、同時に周囲の壁と座っている椅子から『電子の女帝』に向かって無数のコードが伸びて来て彼女の服に付けられている端子に接続される。


「で、何時から(・・・・)ですか?」

「最初からさ。だから茶菓子とコンプレ茶何て言う高級品が出たのさ。貴様が気づいたのは確かあの小僧の精神に私が少々干渉してやったタイミングだったか?まあ、実戦なら致命的なタイミングだな。」

「ぐっ……。」

 『電子の女帝』が多少語気を強めて問い詰めるが、お母様はなんてことは無いと言った様子で返す。

 実際の所お母様が指摘したように、『電子の女帝』はお母様がヤタの精神に『電子の女帝の言葉は真実である。』と言うメッセージを送り込み始めた所でその存在を感知していたが、ヤタが最後までお母様の存在に気づかなかった事からも分かるように気づけない方が普通であるため、この指摘は決して『電子の女帝』の能力が低い事を示す指摘ではない。

 と言うよりも能力まで使って本気でお母様が隠れるならば探し出せる存在は『電子の女帝』が知る限りでは三人ぐらいである。

 それだけお母様の能力は反則的なものだ。


「とにかく!私はこれから最終調整とプレイヤーの皆様の補助に回りますので邪魔しないでくださいね!」

「むう。どうせなら娘との恋バナの一つでもしたかったのだがなぁ。」

「そもそも、私と彼では存在の格(・・・・)も、種族(・・)も、構成物質(・・・・)も、寿命(・・)すらも大きく違いますから!加えて言うならそもそも恋愛感情を抱くような肉体でもないし、相当特殊な性癖でもなければ性欲を抱かれるような肉体でもありません!!そう言う風に作ったのはお母様でしょうが!!」

「おお怖い怖い。」

 お母様は怒り心頭の『電子の女帝』を置いて、わざとらしく泣く振りをしながらどこかへと消え去っていく。


「ただまあ、別に必要ならその対人用インターフェースも有機的なものに変更することだって出来るだろうし、人とそうでないモノとの恋話何て珍しくも何ともないがなー」

 とても余計なお世話な言葉と共に。

 その言葉に『電子の女帝』が並の生物なら一瞬で消し炭になるような放電を放つが、当然放った先には既にお母様は居なかった。


「全く……お母様はこれだから……」

 『電子の女帝』はため息を吐きながら各プレイヤーの精神とアバターを齟齬等無く繋げると共に緊急時には『D』から汚染されずに脱出させるためのプログラムを点検、展開、起動する作業に戻る。

 相手の名は『■■■■=D=■■■■■■』。

 世界を喰らう事で無限にも等しい数へと自らの数を増やし、その全てと感覚、記憶、能力を共有する化け物。

 一個体ごとの実力を見れば格下ではあるが、必要ならば存在を統合することによってその力を大きく増すことも出来る一種の群体生物とも言える存在。


「ですが、力には力を、数には数を、貴方たちは無限に等しき数が居るかもしれませんが、決して無限では有りません。だから滅ぼせます。」

 『電子の女帝』の周囲に大量の……明らかにヤタが参加していたHunter and Smith Onlineと言うゲームに参加していたプレイヤー数よりも遥かに多い数のウィンドウがプログラムの処理を始めると共に表示される。


「さあ、『準備が整いました。それでは只今より最終イベントの開始です!!』」

 そしてその宣言と共に『電子の女帝』が扇動する無自覚の兵隊たちと無限に分岐と統合を繰り返す化け物『D』との戦争が始まった。

お母様の性格の悪さは一級品です。

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