2 side Tateishi
ストック切れてしまいそう……
ライトブラウンの髪はふわふわとはねる。
私のただ単に真っ黒でまっすぐな面白みのない髪とは大違いだ。
いつもにこにこと笑って、周囲に人をはべらしている彼、三島カケルはその風貌通り、“軽い”と思う。っていうかチャライと表現したほうが適切だろうか。
耳に開けている痛そうなピアスの穴には日替わりでジャラジャラ……、と言うとちょっと言い過ぎな気もするが、とりあえず、毎日何かしらつけているのは曲げようのない事実だ。どうやら、銀と黒が好きなんだろう。持ち物のほとんどがその二色で統一されている。正直、見た目の問題だけで言えば、“かっこいい”っていう風に分類されるであろう男の子であると思う。
世間でいうイケメンってやつか? チャライけど。そして、イケメンに私は興味がわかないけど。
「三島くーん! お弁当作ったんだぁ!! 食べてくれる?」
そんな声が愛読書を読んでいる途中で耳に響いた。毎度毎度、ご苦労です。私はお弁当はお母さんに一任しているのでお弁当の作れる素敵女子は素晴らしいと思うのです。
「あ、ほんと? ありがとう!! でも、今日ユキコちゃんからもらってるんだ。ごめんね」
「そっかぁ……。ならまた作ってくるね」
さすが……っていうか、なんていうか。確か昨日はミナミちゃん、その前はアカネちゃん、その前は……って思い出したくもないわ。私が彼女たちのお弁当食べたいくらいだ……。だっていつもおいしそうなんだもん。そんなことを考えていると彼はふらふらと近づいてくる。あぁ、どうしましょう。彼の顔がお弁当に見えてきた。
「立石ちゃーん!! 今日こそアドレス教えて!!」
お弁当……じゃなかった、彼は脈絡なくいつものように聞いてきた。懲りない人だ。私のどこがいいのかさっぱりわからない。きっとこれも彼がチャライからこそできる技。きっと、毛並の違う動物を可愛がりたい気分なのよ。じゃないとこんなことあり得ないんだから。そう、あり得ないわ。
「嫌」
ただ私はいつもどうりにきっぱり断っただけなのに。
「立石ちゃん、その声ナイス!!」
グッと親指を立てて私の前にだした。はぁ? と聞き返したくなる。
「立石ちゃんの声で“カケル”なんて呼ばれたら俺エロい気持ちになるかもー」
彼はイケメンとかそんなんじゃない。彼はただのアホだと思う。