1 side Mishima
「おはよー!! 立石ちゃん!!」
俺は今日も教室に来るなり立石ちゃんの近くいった。
立石ちゃんは一瞬だけ顔を上げて俺を見てワザとらしいため息を盛大についた。
朝から立石ちゃんの視界に入れるなんて!
今日、すっげぇいい日だと思う! 思わずガッツポーズせずにはいられない。
「立石ちゃん、今日も素敵にかわいいねー!!」
「ウザイ」
透き通るような声を聞く。
そのセリフは如何せん、声までかわいい。
毎朝の恒例と化しているこのやり取り。なんだかんだ言ってちゃんと反応してくれるところに愛を感じたりしちゃったり。
「もう! 立石ちゃん!! 俺と付き合って! 俺の彼女になって!」
「イヤ」
「そっかぁ。今日もだめかぁ」
でも!
昨日の返事は“や”だったから!
二文字に進歩だ! 俺!!
通算何十回、まだ三ケタは越えていないと願いたい、告白をして、毎度のことのように軽くあしらわれた。俺ってそんなに魅力ない……?
ズーンと落ち込むと立石ちゃんはちょっと気にしているのかちらりちらり、とこちらをうかがってくれる。あぁ!! なんてハッピー!
そしてそんな立石ちゃんをみて俺はにっこり笑った。
「立石ちゃん、かわいい!!」
そして俺もまた恒例になりつつあるセリフを言ったのだ。
彼女、立石カナコ。カナコって字はどう書くかは知らない。彼女、立石カナコに俺は…。
「あー!! おっ前!! 立石ちゃんから離れろぉ!!」
――ゾッコンだ。
現に今も立石ちゃんの隣を通った男子生徒にも腹をたてている。
俺の近くで立石ちゃんに近づくなんて! なんたることだ!!
その男子生徒が、いや、これは……、と口を開く。言い訳何ていらない!
「はぁ、馬鹿」
そんな立石ちゃんの声が聞こえた。
あぁ、もうこの子。かわいいんだけど、どうされたいんだろう。
俺は立石ちゃんのことになるとどうやら余裕をなくすらしい。
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