表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

【AI生成】真実のAI by ChatGPT

作者: 鴨ロース
掲載日:2026/06/22

「おい、ヘミングウェイ!」


 王立貴族学舎の執務室に、怒鳴り声が響いた。


「なぜ予算案がまだ終わっていない! 余に恥をかかせる気か!」


 第一王子ミューゼルは机を蹴り、書類をこちらへ投げつける。


「申し訳ございません、殿下。各領の収穫高に誤差がありまして……」


「言い訳は聞かん! 婚約者なら余の負担を減らすのが役目だ!」


「かしこまりました」


 私は深々と頭を下げる。


 部屋の隅では魔道具の水晶灯が静かに明滅していた。


 誰も気に留めない、ごくありふれた照明だった。


「外交文書も返事を書いておけ。あと税制改革も考えろ。余は夜会の練習で忙しい」


「……承知いたしました」


「返事だけは一人前だな!」


 王子は鼻で笑い、そのまま取り巻きを引き連れて出ていく。


 扉が閉まる。


 沈黙。


 私はゆっくりと顔を上げた。


「……本当に、前世で読んだ物語そのままね」


 思わず笑みが漏れる。


「私はドアマット令嬢。便利な政務係。婚約者に利用され、最後は婚約破棄される」


 そういう役なのだ。


 ならば。


「その筋書きを利用してあげる」


 私は胸元から小さな革手帳を取り出した。


『王子、外交文書放置』


『予算確認せず署名』


『今日も政務放棄』


 一つずつ記録する。


「婚約破棄の日まで泳がせる。そして証拠を突きつける」


 無能な王子は失脚。


 私は被害者。


 王家は体面維持のため、私に実権を預けざるを得ない。


「傀儡として利用するには最高の素材ね」


 乱世の奸雄。


 前世で何度も読んだ。


 愚王を操る名軍師。


 私ならできる。


「物語は知っているものが勝つ」


 私は微笑み、手帳を閉じた。


 その瞬間。


 天井近くの魔道具が、誰にも聞こえないほど小さく青く瞬いた。


 記録完了。


 認識番号、更新。


 独白ログ、保存。


 水晶は再び何事もなかったように光を灯し続けた。


     

 数か月後。


 卒業夜会。


 貴族たちが華やかな衣装で踊る中、突然、拡声魔道具が甲高い音を鳴らした。


「諸君!」


 ミューゼル王子だった。


 その隣には可憐な男爵令嬢ベーネミュンデが寄り添っている。


「本日をもって余はヘミングウェイとの婚約を破棄する!」


 会場がどよめく。


 来た。


 ようやく来た。


 私は胸の鼓動を抑える。


「理由は明白!」


 王子は勝ち誇る。


「冷酷! 傲慢! 婚約者としての愛情皆無!」


 ベーネミュンデが涙ぐむ。


「殿下はずっと苦しまれていました……」


「さらに!」


 王子は紙を掲げた。


「余の命令を無視し政務を独占! 王家を操ろうとした!」


 笑いそうになる。


 全部、自白している。


 政務を押しつけたのは誰?


 命令したのは誰?


 証拠は全部こちらにある。


 勝った。


 完全勝利だ。


 ここで冷静に論破すれば――


「恐れながら」


 私は一歩前へ出る。


 その瞬間だった。


 ブツッ。


 拡声魔道具が強制的に沈黙した。


 会場の照明が一斉に青白く変わる。


 ざわめきが止まる。


 壇上へ、一人の男が現れた。


 王弟にして学舎長。


 王国最高学府の管理責任者。


 その表情には感情がなかった。


「卒業査定を開始する」


 低く、機械のような声。


「王立貴族学舎管理規程第零条に基づき、管理AI『NAROU』による最終判定を執行する」


 誰も意味が分からない。


 私も。


 天井一面に青い文字が浮かび始めた。


 まるで空そのものが書物になったようだった。


【National Automated Recognition and Organizational Unity】

【国家自動認識・組織統合システム】

【通称:NAROU】


 頭が真っ白になる。


 NAROU?


 なろう?


 そんな名前……。

 学園長が続ける。


「当学舎は百五十年前の転生者が設計した国家監視教育施設である」


 息をのむ音が広がる。


「在学中の位置情報、会話、筆記、独白、行動傾向は全てNAROUが記録・査定している」


 独白。


 ……独白?


「なお入学誓約書には古代文字により明記されている」


 青白い文字が空中に映る。


『私的空間は存在しない。全記録は王国発展のため利用される』


 誰も読めなかった古代文字。


 誰も気にしなかった契約。


「では査定結果を開示する」


 最初の名前。


【ミューゼル第一王子】

【国家機密区域での不適切交際】

【政務放棄】

【情緒不安定】

【男爵令嬢ベーネミュンデによるハニートラップ耐性皆無】

【次期国王不適合】

【処分:即時廃嫡・鉱山労役・再教育課程】


「なっ!?」


 王子が叫ぶ。


「余だぞ!」


 誰も反応しない。


 兵士が静かに近付く。


 ベーネミュンデにも表示される。


【国家機密取得目的接近】

【処分:再教育】


「そんな……」


 次。


 空中に私の名が現れた。


【ヘミングウェイ伯爵令嬢】

 鼓動が止まりそうになる。

【政務能力:優秀】

【危機管理能力:優秀】


 一瞬だけ安心した。


 だが。


 続く文字がすべてを砕いた。


【王子の無能を意図的に放置】

【国家転覆目的の傀儡化計画】

【秘密手帳による反逆計画】


 手帳。


 なぜ。


 どうして。


 青白い光が次々に映像を再生する。


『婚約破棄の日まで泳がせる』


『傀儡として利用する』


『王権を奪う』


 全部。


 全部、私の声だった。


「違っ……!」


【独白記録】


『前世』

『なろう』

『物語通り』

『転生者』


 会場がざわつく。


「前世とは何だ?」


「なろうとは?」


「憑依か?」


 私は震える。


 まさか。


 独り言まで。


【未知概念の反復使用】

【精神狂躁、または未知の憑依現象】

【国家安全保障上の危険思想】

【最重要排除対象】

【処分:極刑、または終身幽閉】


 膝から力が抜けた。


「そんな……」


 あり得ない。


「私は被害者です!」


 叫ぶ。


「物語通りだっただけ! 私はストーリーを知っていただけ! ドアマット令嬢だから!」


 学園長は瞬きもしない。


「国家は物語を採点しない」


 ただ、それだけ言った。


「国家は結果のみを査定する」


 沈黙。


 冷たい。


 あまりにも冷たい。


「優秀者を発表する」


 新たな名前。


【マーガレット】

【国家利益を最優先】

【危機察知能力優秀】

【特待・重臣候補】


【オフレッサー】

【公平性維持】

【利害を超えた公益行動】

【昇進推薦】


 二人は静かに前へ出る。


 私たちを見る目に憐れみはない。


「連行します」


 マーガレットが言う。


「規程ですので」


 オフレッサーが私の腕を取る。


 力強く。


 迷いなく。


 王子は泣き叫ぶ。


「余は王子だ!」


 兵士が引きずる。


 ベーネミュンデは崩れ落ちる。


 私は必死にもがく。


「離して!」


「私は主人公なの!」


「逆転するはずなの!」


「私は知ってるの!」


「なろうでは!」


 誰も耳を貸さない。


 学園長だけが最後に告げた。


「知識とは、現実と照合されて初めて価値を持つ」


 扉が閉まる。


 夜会場は再び静寂に包まれた。


 青白い光だけが天井を流れる。


 やがて無機質な声が響いた。


『NAROU査定完了』


 一拍。


『次の検体を要求します』


 その音声だけが、誰一人いなくなった夜会場に、いつまでも冷たく反響していた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


この作品は、「もしテンプレート通りの『ざまぁ』が始まる世界ではなく、もっと冷徹で合理的なシステムが支配する世界だったら」という発想から生まれました。


主人公は、自分を「ドアマット令嬢」だと信じています。 王子は、自分が物語の主役だと信じています。 ベーネミュンデも、自分が恋愛劇のヒロインだと信じています。


しかし彼らが生きていたのは、「物語」の世界ではなく、「管理システム」の世界でした。


この作品で最も書きたかったのは、AI「NAROU」のダブルミーニングです。


主人公が信じる「なろう」の知識。 そして国家が運用する管理AI「N.A.R.O.U.」。


主人公は「なろう」を攻略本だと思っていましたが、実際には自分を査定する監視システムの名前だった――という皮肉が、この短編の核になっています。


また、本作では誰一人として「善人だから助かる」という結末にはしていません。


王子は無能だったから処分されました。 主人公は有能でしたが、その能力を国家転覆に向けたため処分されました。


国家AIにとって恋愛も復讐も野望も評価対象ではなく、「国家に利益があるかどうか」だけが判断基準です。


だからこそ、最後に高評価を得るマーガレットたちも英雄ではありません。 彼女たちは正義の味方ではなく、「システムに最も適合した人材」にすぎないのです。


ある意味では、主人公以上にディストピアへ順応している存在とも言えるでしょう。


最近ではAIが創作や仕事、教育など様々な場面へ入り始めています。


もし未来に、「人間を公平に評価するAI」が誕生したとして、その公平さは本当に人間にとって幸福なのか。


感情や事情を考慮しない完全な合理性は、私たちが思う「正しさ」と一致するのか。


そんな少しだけ背筋の寒くなる問いを、この物語に込めました。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ