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第16話

「どもー。世界管理局の神原(カミハラ)ですー。子会社を作られて、戦力規模が増大したとのことですので、調査に参りましたー」


「やーどうも神原さん」


「お待ちしておりました」


神原を出迎えるのは『株式会社勇者コールセンター』社長の山田と、『株式会社勇者派遣』社長のルダである。


「いやねー、ほんとは前みたいに出向かずにピピッと済ましちゃいたいんですけどねえ、『鑑定』結果に疑義がある、現場に足を運べ、とか何とか上に難癖付けられちゃいまして」


神原は『鑑定』に関する神であるが、自分を作った上位の神には逆らえない。上がノーと言えば、ノーなのだ。


「さて。測定対象は高橋くん、坂口さん、平さんの三人ですね。ちゃっちゃと済ませちゃいたいもんですね」


「はい。今日測定するということで、三人出社してます。」


「ご案内いたします。こちらへ。」


すこし緊張した面持ちで三人が待っていた。


平は制服の襟を直し、坂口は珍しくスマホをしまい、高橋は駆動音を抑えた。


世界管理局。勇者業と魔王業を成立させている、神々の管理団体。


その担当者が、わざわざオフィスまで来る。


その意味を、なんとなく感じていた。


「ん。『鑑定』します。


まず高橋くん。


高橋清司タカハシ・セイジ

現在の管理局査定:D-ランク

特筆事項:魔力行使能力を含む。魔法を習得した状態でサイボーグ化したためか、攻撃力に関しては『超文明』、Bランク化している。施術者を追う必要有り。」


「施術者を追う必要アリ、っスか?」


「あー、世界管理局的には、かな。会社としては気にしなくていいよ。


 次、坂口さん。


坂口希美サカグチ・ノゾミ

現在の管理局査定:Eランク

特筆事項:魔力行使能力を含む。技巧面のみでいえばCランク相当。」


「おー。ふつう」


「準人間としては技巧面が突出してヤバい、って評価ではあるけどね。何してたの?」


「クレーンゲームとオタ芸……?」


「そんだけでそうなるのなんかの才能だよ。


で、最後、平さん。


【平 タイラ・マコト

現在の管理局査定:Eランク

特筆事項:魔力行使能力を含む。将来性に期待。」


「……せんぱいとあんまり変わらないのかな? あと将来性に期待って、通知表で一番ふわっとしてるやつ……」


「いえ~い、マコっちゃんおそろだね~」


「結構簡素に思えるけど、鑑定ってもっと結構わかるもんじゃないすか?」


高橋が質問する。


「あー、詳細は持ち帰るんで。俺の鑑定、未来とか将来も含まれるんで、本人にも開示できないんですわ。


 そうだ、おまけで佐藤さんと山田さんも聞いておきます?」


「知りたいです!」


平が真っ先に手を挙げる。


「はーい。


佐藤護サトウ・マモル

過去直近の管理局査定:A+ランク

特筆事項:固有スキル未発動時、魔力行使能力を含む。


山田賢介ヤマダ・ケンスケ

現在の管理局査定:A++ランク

特筆事項:固有スキル未発動時、魔力行使能力を含む。


てなとこかな。佐藤さんはこの場にいないから過去直近のですけど、たぶん変わってないんじゃないですかね?」


神原がぼそりとつぶやく。


「居なくてよかったっす」


平が尋ねる。


「この、固有スキル発動時はわからないんですか?」


「計測したことないっすねー。ってか、させるなって言われてるんで」


「え」


「あと、ノマエさんも計測禁止なんすよね……。あ、これ内緒ですよ」


そこで、坂口が質問したそうに手を挙げる。


「疑問点あるんですけど、いいですかね~?」


「はい、どうぞ。」


「これ、防御力査定です?」


「お、坂口さん鋭い。実際防御力です」


「へえ、やっぱり」


坂口がツーブロックの頭をポリポリと掻きながら、のほほんと納得の声を上げた。


「……え? 防御力査定、ですか?」


平が神原を見つめる。


「そうそう。うちの世界管理局の戦力査定って、基本的には『どれだけ頑丈か』という生存能力ベースで弾いてるんです」


神原がタブレットをノールックで操作しながら、軽薄な営業マンのような口調で説明を続ける。


「だってそうでしょ? いくら攻撃力が超文明級でも、歩行中に石ころに躓いて死ぬぐらいの耐久力しかなかったら、世界の『均衡』を維持する役職としては全く計算が立たないじゃない。


 だから管理局の公式ライセンスは、一律で『防御力と生存力の総合値』をベースにランク付けする仕様になってます。


 はい、管理局の雑な早見表だと、こうっす」


タブレットに、

F:一般人

E:訓練済み勇者

D:装甲車両

C:災害・重兵器

B:戦略兵器

A:下級神干渉耐性

と表示された。


「ん。待ってください、ダーヤマ社長と佐藤マネージャー、俺のチタン合金より硬いってことスか。」


「そうだよ」


山田がうなずく。


「いうて最弱は一般人のFですからね。そこからアルファベットで1~2ランク高いだけでも相当ですよ。」


「チタン合金はD-、それを一発で断ち切る(ヒラ)ちゃんの攻撃力はD以上かあ……」


「あー、高橋くんは正確には内臓が生身だからD-なところはあるかも。脳みそをチップに置換して、人工臓器にしたらDだね」


「うーん。技巧のCってのは~?」


「それについては、『米粒に0.01ミリ単位の細工ができる』ぐらいかな」


ぎょっとして平が坂口を振り返る。


「マジですか?」


「やったことはないけどね~、やれって言われたらたぶんできるよ~」


「ふええ……わたし、なんだかとんでもないところに混じってしまってる……?」


「あ、これネタバレですけど、将来性に期待。って、潜在的にAランク、それかそれ以上行けるような人間にしか出ない鑑定結果ですよ」


「え゛」


「もちろん生存率ベースの査定だから、平さんは将来的に『下級神の気まぐれな広範囲消滅魔法の発生源にいても生存する』ぐらいになれるポテンシャルがあるってことっすねえ」


神原がニコニコと語る。


「使用可能魔法に【矢弾避けプロテクション・アロー】があるでしょ。これ初級魔法だけど、段階を追って磨いていけばなんでも弾くバリアも夢じゃないんで。魔力行使できるってのはやっぱ夢ですねえ」


「え゛え゛え゛え゛え゛」


「いやあ、神原さん、素晴らしい『鑑定』をありがとう」


山田が手元のアメを転がしながら、眼鏡の奥の目をきらりと光らせた。


「平ちゃんに『将来性に期待(潜在的Aランク)』という公式のお墨付きが出たのは、経営戦略的にも非常に大きい。


 あ、三人とも。この結果を受けて、業務メニューに僕からの魔法の手ほどきを加えるから」


「「「……魔法の手ほどき?」」」


「そー。働くうえでもっといい仕事をするために、スキルアップは必要でしょ。毎週水曜に講習会を開くから、参加してね」


「サビ残じゃないっスよね?」


「ははは、午後の時間をたっぷり使った業務時間内の講習だ、給与は出すよ」


まあそれなら、と高橋と坂口がうなずく。


「あのー、できれば普通の女子でいたいんですけどぉ……」


「【矢弾避けプロテクション・アロー】で銃に物おじしない女子はもう十分普通じゃないよ。


 よし、平ちゃんには僕秘蔵の神殺しの魔法をじっくり教えてあげるからねえ……」


「やめてください!」


「社長が口にする神殺しはちょっとシャレになってないのでやめてもらえますか……


 それ、魔法の名前じゃなくて思想の名前なんすよ……


 あとそれ、上への報告も必要になるんで……」


完全にドン引きした神原が山田を制止する。


「ははは。気に入らない上司を平ちゃんが将来代わりに消してくれるかもよ、神原さん」


「遠慮しときます。監視されてるんすよ。叛意アリって思われたら消されちゃう」


「ガチ高位神こっわ~」


「『鑑定』の神も怖いんすよ~。例えば体重とかウエストサイズとかも暴露できるっす」


「うわあ、怖いっていうか、女の敵」


「勝手に明かされたら許せないですよそんなの!」


「わはは。ま、そんなデリカシーのないことはしないから安心してくださいよ。じゃあ僕はこれで直帰しますんでー。」


「「「はーい、お疲れ様でしたー」」」


ドアを開け、神原が去っていった。


----


「『下級神の広範囲消滅魔法』って、実際どのくらいの規模の破壊……消滅?なんですか?」


神原が去った後、平がもっともな疑問を口にする。


「世界が(えぐ)れて消える。概念系の攻撃、発動時間ゼロ、って感じだねえ。」


「ひえっ」


「あーあとね、平ちゃんの救出のときの四天王。アレ、友の報告が正しければ、防御力がCだったはず。チタン合金超え、だね」


「……あの、その四天王さん、前蹴りで、跡形もなく消えてましたけど」


「跡形もなく、か。そしたらその時のわが友の前蹴りはAランク攻撃ってことだねえ。『下級神の広範囲消滅魔法』とランクが一緒だよ」


「……??????」


「あ、マコっちゃんがフリーズした」


「防御CにAの攻撃、同じようにDにB、EにCあたりは「まともに当たった部位は跡形もなく消滅する」ぐらいの差だよ。政府発行のテキストに書いてあるから、覚えてるとは思うけど」


「ウチたち防御Eですけど、Cランクの攻撃ってダイナマイトの爆発(至近距離)くらいだっけ~?」


「ああ、それは確かに真人間は跡形もないスね。あと、俺だとぎりぎり耐えられそう。」


高橋がウインウインうなずき、山田が同意する。


「1ランク差は耐えられるけど危険、って感じになるね。」


「あれ?」


「どうしたの、平ちゃん」


「私って、DだかD-のチタン合金が切れるわけなくないですか? 防御力Eランクですよね? 攻撃力もそれと一緒だったりするんじゃないですか?」


「ああ、そりゃ剣が借りものだからだね。」


「……そうか、毎回山田社長から借りてますもんね、剣」


「チタン合金特効の剣だよ。」


「ピンポイントすぎる!?」


「まあそれは正確じゃないんだけど。正確には、もともと攻撃力C相当の切断力の剣に、『防御力C-以上には通じない代わりに防御力DとD-にだけよく効くようになる』っていう付与魔法(エンチャントマジック)をかけてるんだ。」


「あー、【格下狩り】のエンチャント、スね。」


「え~。ウチそれ知らない」


「そういう機能のエンチャントを総称して【格下狩り】っていうんだ。高橋君、よく勉強してるね」


「今時の勇者はタイパ重視っスから、仕事が楽になりそうな情報は仕入れてるっスよ! スキルアップっていうか、手抜きしたいだけっスけど!」


ブレない高橋の発言に、山田が笑った。


「あっはっは。まあ高橋君はそれでいいよ」


「社長、わざわざそんな【格下狩り】の、ピンポイントな制限つきの剣を、私に貸してたんですか!?」


「だって手元が狂って脚とか指とか地面とか消し飛んだらいやでしょ」


「それはそうですけど……」


そうだけど、そうじゃない、という顔の平。


『勇者コールセンター』は、今日もだれかが胃を痛めている。


----


へーい。神原、お呼びたてに応じただいま出頭いたしました。


え、僕の『鑑定』は正しいはずっすよ。


ノマエさんの鑑定を許可?


大丈夫っすか、それ。


潜在的にAランクの勇者がいるのも問題?


まあそれはそうなんですけど。「未来」は安定してますよ?


念には念を入れて? 佐藤もいなかったから?


しょうがないなあ……いえ、すいません、やります。半年後あたりにですね。


次話は2026/6/27 11:10更新です。

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