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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第七部 第一話 ~ 第7部・第一話:決定事項~

凛のお相手は7歳年上のアメリカ人です。

その連絡は、事務的だった。

件名は短い。


”Rin Saeki — Marriage”


悠馬は一度だけ瞬きをして、画面を開いた。

本文もまた、短い。


・結婚

・相手

・ジェシカ直属の部下

・年齢差

・式は簡素

・アメリカ定住予定


必要な情報だけが並び、

余計な感情は一切添えられていない。


凛らしい、と悠馬は思った。


迷いを文章に滲ませるような人間ではない。

決めたことは決めたまま置く。

誰かの了承を待たない。


「……結婚、か」


声に出したのは、確認のためだった。

実感のためではない。


ーーーーーーーーーーーーー


「兄さん?」


隣の席から、ノアが顔を上げた。


「どうしたの?」


「珍しいね。声が」


悠馬は画面を閉じ、

何事もなかったように答える。


「凛から連絡です」


「凛姉さん?」


ノアの反応は早い。


「何かあった?」


「結婚するそうです」


一拍。


ノアの目が僅かに見開かれる。


「……へぇ」


驚きより先に、納得が来る顔だった。


「凛姉さんが決めたなら、決定事項か」


「ええ」


悠馬は頷く。

凛はそういう人間だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


休憩室でも、その話はすでに流れていた。


「凛さん結婚するんだって」


「アメリカで定住らしいよ」


「仕事も続けるんだってさ」


定住。


その言葉が、妙に耳に残った。


悠馬はカップを手に取る。


湯気が立つ。


熱はあるのに、

どこか遠い。


ーーーーーーーーーーーーーーー


凛は、決めるのが早い。

迷うより先に選ぶ。


仕事か家庭か、ではなく、

両方を当然のように持っていく。


悠馬は彼女を思い浮かべる。


産まれた国でもない

育った国でもない


それでも彼女は、

自分の立つ場所を迷わない。


ーーーーーーーーーーーーーー


「兄さん」


ノアが小さく言った。


「凛姉さん、逃げないね」


「逃げません」


「羨ましいな」


その言葉は、軽いようでいて、

どこか本音だった。


悠馬は返せなかった。


ーーーーーーーーーーーーー


戻る場所はある。

職場もある。

役割もある。


人に求められれば、応えられる。

問題なく回せる。


それなのに。


「居場所」という言葉だけが、

どこか別の意味を帯びてしまう。


ここは、自分の場所なのか。


それとも、

そう扱われ続けただけなのか。


ーーーーーーーーーーーーー


悠馬は画面を閉じた。


結婚、という出来事は

誰かの人生を動かす。


でも凛の場合、それは“事件”ではなく

“決定事項”として置かれる。


迷いも、逡巡もなく。


ーーーーーーーーーーーー


業務に戻る。

戻れる場所はある。


ただ、

それが“居場所”かどうかは、

まだ別の話だった。


業務は続く。

噂も続く。


そして悠馬だけが、

静かに更新されないまま、そこにいた。



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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