第一部 第七話 ~レッスン1:普通の会話(※できない)~
普段雑談しなさそうだもんな悠馬君、、てか友達がいな、、、
その日、
ハミルトン邸の客間は、いつもより少しだけ明るかった。
陽の入り方がいいとか、
花が新しいとか、
そういう理由ではない。
佐伯悠馬が、落ち着きなく椅子に座っているからだ。
(……まだ来ないのか)
時計を見る。
見るたびに、針はほとんど進んでいない。
向かいの席には、すでに来客が座っていた。
エド叔父の知人の娘。
年齢は悠馬より少し下。
落ち着いた服装で、笑顔も穏やか。
――いわゆる、
『普通の令嬢』だ。
「今日はお休みだそうですね」
「……は、はい」
声が一拍遅れた。
「お仕事は、お忙しいんですか?」
「……えっと……
忙しい、というか……
忙しくない時が……あまりなくて……」
(何を言っている)
自分で自分に突っ込む余裕はある。
修正する余裕は、ない。
令嬢は一瞬きょとんとし、
すぐに苦笑した。
「あ……そうなんですね」
(終わった)
会話が、一度、止まる。
沈黙。
(話題……話題……)
「……フランスは……どうでしたか……?」
「フランス?」
「……出張で……」
(質問の仕方が遅い)
「ああ、フランス。素敵な国ですよね」
「……はい。
ええと……距離が……近くて……」
「……距離?」
(なぜそれを出す)
「あ、いえ、その……文化的に……」
(完全に墓穴)
令嬢は一瞬考え、そして小さく笑った。
「もしかして、
あまり女性とお話しするの、
慣れていらっしゃらない?」
――直球。
悠馬は、一瞬だけ固まった。
「……あ……」
否定も肯定もできない。
「……はい」
声が、情けない。
令嬢は驚くでもなく、
困るでもなく、
ただ少し柔らかく微笑んだ。
「正直でいらっしゃるんですね」
(評価されてしまった)
その時点で、
悠馬のHPはほぼゼロだった。
会話は続いた。
続いたが――
悠馬は終始、しどろもどろだった。
質問に答える前に考えすぎ、
考えすぎて答えが遅れ、
遅れた結果、妙な言い回しになる。
それを、
令嬢は終始、苦笑で受け止めてくれた。
――遠くから。
エド叔父は、その光景を静かに眺めていた。
姿勢。
視線。
間。
(……なるほど)
フランスの報告は、
誇張ではなかった。
逃げる。
固まる。
正直すぎる。
『女性耐性が、ほぼ存在しない。』
(これは……)
エドワードは、結論を出す。
――一回では足りない。
(基礎が、できていない)
「普通の会話」
「適切な距離」
「余裕のある受け答え」
どれも、
今の悠馬には難易度が高すぎる。
(……教育が必要だな)
会話が終わり、令嬢が帰った後。
悠馬は、
魂が抜けたように椅子に沈んでいた。
「……お疲れ」
声をかけられても、反応が遅れる。
「……はい……」
返事だけは、条件反射で出た。
エド叔父は、
そんな悠馬を見下ろし、
穏やかに言った。
「今日は、よく頑張った」
その言葉に、
悠馬は少しだけ救われた気がした。
――だが。
エドの内心は、すでに次へ進んでいる。
(レッスン1は終了)
(次は……
もう少し実践的にいくか)
書斎に戻ったエドは、
リストに一言、書き加えた。
”「教育:継続」”
その頃、
悠馬はまだ知らない。
今日の苦笑は、
”通過点にすぎない”ということを。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




