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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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70/137

幕間 ~兄さんは、確かに料理が上手だった(過去形)~

悠馬は料理ができるのか。な話

「兄さんって、料理、上手だったよね」


唐突に、ノアが言った。

蘭が箸を止める。


「え?」


「うん。小さい頃さ、普通に作ってたよ」


「普通に?」


「普通に」


ノアは、少し考えてから言い直す。


「……いや、妙にちゃんと」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「煮込みとか」


「焼き加減とか」


「塩のタイミングとか」


「なにより」


一拍。


「無駄なことをしない」


蘭は首を傾げた。


「それ、今の悠馬から

 全然想像できないんだけど」


「だよね」

即答。


ーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ、いつからああなったの?」


菜摘が、湯のみを置きながら聞く。


ノアは、真剣に考え始めた。


「……いつだろ」


「仕事始めてから?」


「いや、その前から怪しい」


「大学?」


「うーん」


眉を寄せる。


「料理が“選択”になった頃かな」


ーーーーーーーーーーーーーーー


蘭が、ぴたりと止まる。


「選択?」


「うん」


ノアは、淡々と言った。


「材料選ぶ」


「献立考える」


「作る順番考える」


「洗い物考える」


「食べる時間考える」


「翌日の予定考える」


「全部、兄さんの地雷」


「……地雷?」


「うん」


「一つでも正解が分からないと全部止まる」


ーーーーーーーーーーーーーー


菜摘、静かに頷く。


「……ああ」


「納得した?」


「ええ」


「料理が下手になったんじゃない」


一拍。


「料理を“生活”として扱う余裕がなくなった」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ノアは、少し困った顔で笑った。


「たぶんさ」


「兄さん、料理が嫌いになったんじゃない」


「料理以外で全部使い切った」


「判断も」


「集中も」


「責任も」


「だから」


肩をすくめる。


「電子レンジに負ける」


蘭が、吹き出した。


「負けるって」


「負けてる」


即答。


ーーーーーーーーーーーーーー


「でもさ」


ノアは、少しだけ声を落とす。


「ネトゲだと無双するんだよ」


「……は?」


「役割が決まってる」


「正解がある」


「回復すればいい」


「落とさなければいい」


「結果が数値で出る」


「……料理じゃん」


「料理じゃない」


ーーーーーーーーーーー


菜摘が、静かに言った。


「戻ると思う?」


ノアは、少し考えてから答えた。


「戻らなくていいと思う」


「え?」


「今の兄さんは“作れる場所”が違う」


一拍。


「キッチンじゃなくて、モニターの前


ーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃。


ロンドン。


カタカタカタカタカタ。


「ゆうさん、今日も安定でした!」


「誰も落ちなかった!」


悠馬は、小さく打つ。


「……仕事ですから」


ログアウト。


冷蔵庫を見る。


電子レンジを見る。


(……後で)


その「後で」は、今日も来なかった。




兄さんは、料理が上手だった。

ただしそれは、

“生活が壊れる前の話”だ。


今は、別の場所で、

別の役割をきちんと果たしている。


——問題は、

それが食えないことだけだった。





AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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