表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/46

第一部 第五話 ~もう終わったよ?~

ゆうまはさらにこんらんしてる

翌朝。


佐伯悠馬は、目が覚めた瞬間に理解した。


――何も回復していない。


体は重く、

頭は鈍く、

胃は相変わらず主張が激しい。


(……結婚……?)


昨日の記憶が、

まだ現実感を伴わないまま残っている。


夢だった可能性も、わずかに期待した。

だが、その期待は、

部屋を出てすぐに打ち砕かれた。


朝食の席。


そこには、ノアと蘭がいた。

二人とも、いつも通りだった。


ノアは新聞を読んでいて、

蘭はタブレットで何か確認している。

特別な空気は、ない。


(……あれ?)


悠馬は、一瞬だけ周囲を見回した。


(結婚って……

 こんなに日常に溶け込むものだったか……?)


「おはよう、悠馬」


ノアが顔を上げて言った。


「……おはよう」


声が遅れて出る。


悠馬は席につき、

スープを前にして、

しばらくスプーンを持ったまま止まった。


(……言うべきか?)


(いや、

 向こうから言うべきでは?)


(でも、

 言われないということは……)


頭が回らない。


蘭が先に気づいた。


「あ、悠馬」


「……何?」


「昨日、父上に呼ばれてたでしょ」


(その話題、

 さらっと出すんだ……)


「うん……」


「もう聞いた?」


悠馬の動きが止まる。


「……聞いた、って?」


ノアが首を傾げた。


「ああ、結婚の件?」


――来た。


「……結婚……」


声に出した瞬間、現実味が一段増した。


「うん」


ノアはあっさり頷いた。


「もう終わったよ?」


「……え?」


「サインも済んでる」


「……は?」


「昨日」


「……昨日!?」


蘭が補足する。


「書斎でね。婚姻証明書と契約条件」


「……契約……?」


「うん。合理的だったよ」


合理的。


その単語が、

悠馬の胃を静かに殴った。


「……ちょっと待って」


悠馬は両手で顔を覆い、数秒考える。


(昨日……

 僕がフランス帰りで……

 エド叔父に呼ばれて……)


(その間に……この二人は……結婚……?!)


「……え、反対とか……相談とか……」


声が弱い。


ノアと蘭は顔を見合わせた。


「反対?」


「相談?」


ほぼ同時だった。


「だって……人生の一大事だろ……」


蘭は少し考えてから言った。


「そうでもないかな」


「……そうでもない!?」


「条件、悪くなかったし」


ノアも頷く。


「うん。

 断るともっと面倒になるやつだったし」


(そこ!?)


「……じゃあ、感情は……」


「今のところ、特に問題ない」


「仕事も続けられるし」


二人とも、至極冷静だ。


「……僕だけ……

 取り残されてない?」


悠馬の呟きに、

ノアが少しだけ困った顔をした。


「えっと……

 悠馬には、

 父上から言ってあるって……」


「言ってない!」


即答だった。


蘭が思い出す。


「昨日、書斎でさ」


「……?」


「父上、“次は君の番だな”って」


「……え?」


「言ってた」


「……え??」


悠馬の脳内で、

昨日の映像が再生される。


紅茶。

書類。

結婚。

真っ白。


(……その時、僕……)


「……はい、って返事してたよ」


ノアが言った。


「……した気がする……」


悠馬は、

ゆっくりと机に突っ伏した。


「……それ……了承じゃない……」


「そうなの?」


「違う……それは……自動応答……」


二人は、

少しだけ同情する目を向けた。


「まあ……」


蘭が肩をすくめる。


「今日は休んだら?」


「……うん……」


悠馬は、

立ち上がる元気もなく、

そのまま椅子に沈んだ。


(結婚が……

 僕の知らないところで……

 一つ終わって……)


(次が……僕……?)


その頃。


ハミルトン邸・書斎。


エドワード・ハミルトンは、

今日も静かにリストを更新していた。


「佐伯悠馬」


名前の横に、

チェックが一つ入る。


「さて……」


次の候補を眺め、

穏やかに呟く。


「有能嫁は、早めに決めた方がいい」


その頃、

悠馬はまだ、

何も決められずにいた。


――デバフは、まだ切れていない。



感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ