幕間 失恋後あるある(佐伯悠馬の場合)
悠馬君の失恋幕間はここまでです。たぶん。
失恋の翌朝。
悠馬は、いつも通り起きた。
いつも通り顔を洗い、
いつも通りコーヒーを淹れる。
砂糖は――
三杯。
(……よし)
何が「よし」なのかは分からないが、
とりあえず三杯入ったのでよし。
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そこへノア。
「兄さん」
「……何だ」
「今日、世界終わってる?」
「……終わっていない」
「じゃあ通常営業?」
「……通常営業だ」
ノアは、悠馬の顔をじっと見る。
「……失恋した人の顔じゃない」
「……失恋の顔とはどんな顔だ」
「目が死んでるとか」
「……死んでない」
「胃は?」
「……静かだ」
「こわ」
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朝食。
悠馬は、トーストを食べていた。
一口。
二口。
(……味がする)
ノアが、横から観察する。
「兄さん」
「……何だ」
「失恋した人ってさ」
「三日くらい食べられなくなるんじゃない?」
「……個体差だ」
「いや人類の平均」
「……俺は平均ではない」
「それは知ってる」
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出勤前。
悠馬は、ネクタイを締める。
いつもと同じ。
ノアが、ぼそっと言う。
「兄さんさ」
「……何だ」
「普通に生活できてるのが一番やばい」
「……問題か」
「問題」
「……失恋したんだぞ?」
「……事実だ」
「もっとこう」
ノアは、身振り手振りで説明する。
「落ち込むとか」
「引きずるとか」
「雨見て意味もなく考え込むとか」
悠馬は、少し考えてから言った。
「……天気予報は確認した」
「違うそうじゃない」
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エレベーター前。
ノアが、最後の確認をする。
「兄さん」
「……何だ」
「今の心境を一言で」
悠馬は、真剣に考えた。
(……一言)
「……業務に支障はない」
ノア、即座に頭を抱える。
「だめだこの人なんとかしないと」
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前夜。
蘭は、ソファでスマホを見ながらぽつり。
「……悠馬、失恋した?」
ノアが、即答。
「した」
「重症?」
「いや」
「軽症?」
「……分類不能」
蘭は、少し考えてから言った。
「じゃああれだ」
「何」
「”後から来るやつ”」
ノア、
顔を上げる。
「……あー」
「三日後とか」
「一週間後とか」
「突然」
「夜中にコーヒー飲みながら」
「“僕は何を失ったんだ”とか言い出す」
ノアは、想像して吹き出した。
「ありそう」
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当の悠馬。
オフィスで資料を確認しながらふと思う。
(……失恋したんだよな)
一瞬だけ、胸がきゅっとする。
(……あ)
(……これか)
だが次の瞬間。
「佐伯、この数値どう?」
「……確認します」
意識は、完全に仕事へ。
(……後で考えよう)
その「後で」が一番危ないことを、
彼はまだ知らない。
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その夜。
悠馬は、コーヒーを淹れた。
砂糖は――四杯。
(……増えたな)
カップを見つめて、少しだけ首を傾げる。
(……気のせいだ)
その時、ノアが言った。
「兄さん」
「……何だ」
「それ失恋の初期症状」
「……甘党だ」
「違う」
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こうして。
失恋は、まだ本気を出していなかった。
でも。
『悠馬の周囲は
全員、“後から来る”と確信していた。』
以上、
まったく役に立たない
失恋観察報告でした。
次回からまた本編です。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




