幕間 ~ 失恋考察(当事者不在)~
蘭とノアはなんだかんだ言っていい組み合わせかもしれない
その話題は、夕方のキッチンで何気なく出た。
「……で、兄さんどう?」
ノアが、マグを持ったまま聞く。
蘭は、少しだけ考えてから答えた。
「静か」
「だよね」
「落ち込んでる、というより」
一拍。
「”考えてる”」
ノアは、小さく頷いた。
「それ、一番厄介なやつ」
「本人は自覚ないでしょ」
「ない」
即答。
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蘭は、カウンターにもたれて言葉を選ぶ。
「悠馬って」
「恋愛で失敗したというより」
「やっと“失敗の仕方”を覚えた感じ」
ノアが、目を丸くする。
「……それ、分かる」
「今までの兄さんって」
蘭は、淡々と続ける。
「失敗する前に撤退してた」
「切って、下げて、なかったことにする」
「だから」
一拍。
「”失恋に辿り着けなかった”」
ノアは、マグを置いた。
「今回、ちゃんと振られてる」
「うん」
「しかも」
ノアが、少しだけ笑う。
「理由が“誠実すぎる”」
蘭も、苦笑した。
「最悪で最高」
「だよね」
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「でもさ」
ノアが、ふと真面目になる。
「兄さん、相手を大事にしすぎたんだよ」
「うん」
「守ろうとして」
「選ばせようとして」
「”先に答えを出しちゃった”」
蘭は、小さく息を吐く。
「それ、優しさだけど」
「”対等じゃない”ね」
「そう」
「“私が決める”余地を残してなかった」
ノアは、腕を組む。
「……兄さん、仕事の癖」
「うん」
「“最悪を想定して先に処理する”」
「恋愛でそれやると終わる」
「終わるね」
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しばらく、沈黙。
蘭が、ぽつりと言った。
「でも」
「今回の失恋って」
ノアが、視線を向ける。
「次に繋がるやつだな」
「うん」
「だって」
蘭は、指を折りながら言う。
「自分から行った」
「ちゃんと付き合おうとした」
「逃げなかった」
「理由も理解した」
「これ、全部初めて」
ノアは、少しだけ誇らしそうに笑った。
「兄さん、”ようやく普通の恋愛の入口に立った”んだよ」
「遅いけど」
「遅いね」
二人で、小さく笑う。
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「……で」
ノアが、意地悪く言う。
「次、どうなると思う?」
蘭は、即答しなかった。
「次は」
一拍。
「”下げない”」
「お」
「守ろうとする前に、相手に渡す」
「選択を」
ノアは、満足そうに頷いた。
「それできたら」
「兄さん、普通にモテる」
「……遅すぎ」
「遅いから面白い」
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その頃。
当の悠馬は、別の部屋でコーヒーを淹れていた。
砂糖は、三杯。
(……今日はこれでいい)
自分が
こんなふうに考察されていることなど、
露ほども知らずに。
失恋は、終わった。
しかし。
『周囲から見ると、
それは“始まりの失敗”だった。』
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




