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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第四部 第三話 ~白衣の天使は仕事で優しい~

でも看護師さんって意外ときついよね!(偏見)

入院生活というものは、想像以上に暇だった。


検査。

点滴。

食事。

安静。


それらの合間に、何も考えない時間が挟まる。


(……何も、考えなくていい)


それが、思った以上に落ち着かない。

悠馬は、ベッドの上で天井を見ていた。


白い。とにかく白い。


(……この白さ、資料作成には向かないな)


思考が仕事に寄りかけて、すぐに止める。


(……止めろ)


ここは病院だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


カーテンが、すっと開いた。


「おはようございます」


あの声。


悠馬は、反射的に視線を向けた。


白衣。

名札。

落ち着いた所作。


「体調、どうですか?」


「……問題ありません」


「“問題ありません”禁止です」


即、やんわり却下される。


「じゃあ、改めて」


看護師は、カルテを見ながら言った。


「痛みはありますか?」


「……少し」


「吐き気は?」


「……ありません」


「眠れましたか?」


「……途中で」


「それは眠れたとは言いません」


(……厳しい)


だが、声は柔らかい。

責めるでも、急かすでもない。

ただ、正確に確認している。


「無理はしないでくださいね」


その一言で、悠馬の肩がわずかに落ちた。


(……無理、してたのか)


自覚は、後から来る。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


昼前。


点滴の交換に彼女が来た。


「少し、チクッとします」


「……はい」


視線を逸らす。


(……注射は、慣れない)


「大丈夫ですよ」


そう言って、手際よく処置を終える。


「終わりました」


「……ありがとうございます」


「いえ」


当たり前のように返される。

それが、なぜか胸に残った。


(……当たり前、か)


当たり前に優しくされること。

当たり前に気遣われること。


『それを、自分はどれくらい受け取ってきただろう。』


ーーーーーーーーーーーーーーーー


午後。


ノアが、椅子に座りながらスマホをいじっている。


「兄さん、暇?」


「……少し」


「顔、だいぶマシになった」


「……紙から脱却したか」


「再生紙くらい」


(……微妙)


その時、またカーテンが開いた。


「お昼、少し食べられそうですか?」


「……はい」


「無理なら言ってくださいね」


ノアは、二人のやり取りを黙って見ていた。


(……ああ)


(……これは)


確信に近いものを感じている。


「兄さん」


「……何だ」


「その人、仕事だから優しいんだからね」


「……分かっている」


即答。


分かっている。

頭では。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


だが。


「食べられなかったら、

 後で別の形も考えますから」


その一言が、胸の奥に静かに落ちる。


(……考える、だと)


代替案を即座に用意する。

それは、仕事でもよくやることだ。

でも、仕事ではここまで柔らかく言われない。


「……すみません」


「謝らないでください」


また、即座に返される。


「体調の話ですから」


(……体調の話)


その“当たり前”が、悠馬には少しだけ眩しかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


夜。


病室は、静かだった。

灯りを落として、カーテンを閉める。


「今日はこのまま休んでくださいね」


「……はい」


「おやすみなさい」


「……おやすみなさい」


その言葉を返すことが、なぜか少し恥ずかしい。


(……何だ、この感じ)


ノアが、小声で言う。


「兄さん」


「……何だ」


「完全にやられてる」


「……仕事だ」


「分かってる」


ノアは、くすっと笑う。


「分かってても落ちるやつは落ちる」


悠馬は、否定できなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


眠りにつく前。


天井を見ながら、悠馬は考える。


(……優しいな)


(……誰にでも、なんだろうが)


それでも。


“誰にでも”の優しさを向けられる立場に自分がいる。

その事実が、妙に新鮮だった。


(……強い人ばかりだったな)


今まで出会ってきた女性たちは、皆、強かった。


迷っても、立ち止まっても、前に進ませる。


それは、間違いじゃない。


でも今は。


「大丈夫ですか」


「無理しないでください」


そう言われるだけで、胸が緩む。


(……落ちるな)


(……これは、仕事だ)


そう思いながら、目を閉じる。

しかし、心のどこかでもう一つの声がした。


(……でも)


(……優しくされるの、嫌じゃない)


それは、とても小さくて、とても危険な兆しだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この時点で、悠馬はまだ知らない。

退院の日、人生で一番勇気を出すことも。

その勇気が、次の地獄の扉を開くことも。


今はただ、


”白衣の天使は、仕事でとても優しかった。”


それだけだった。



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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