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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第三部 第二十二話 ~前向きで会いに行って、分かりやすく終わらせる~

ゆうまはじばくした

その日は、最初から「前向き」だった。


悠馬は、鏡の前でネクタイを直しながら思っていた。


(……今日は、ちゃんと前向きだ)


前向き。

逃げない。

取り繕わない。


(……よし)


この時点で、「フラグは立っている」。


ーーーーーーーーーーーーーーー


カフェ。


席に着いた瞬間、

相手が穏やかに笑った。


「今日は、ありがとうございます」


「こちらこそ」


会話は、落ち着いて始まった。


仕事の話。

近況。

前回の食事の感想。


空気は、

悪くない。


(……いけてる)


悠馬は、完全に油断していた。


ーーーーーーーーーーーーーー


「佐伯さん」


相手が、少しだけ真剣な顔になる。


「前回、“前向きに考えている”と仰っていましたよね」


(……来た)


「はい」


「それで、今日は一つだけ確認したくて」


一拍。


「私は、無理に会話を

 盛り上げたい人間ではありません」


(……うん)


「沈黙があっても、一緒にいられる相手を探しています」


(……うん?)


「佐伯さんは、どうですか?」


――ここ。


ここで、

悠馬は 『最高に良かれと思って』、

最悪の回答をする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……正直に言います」


悠馬は、姿勢を正して言った。


「私も、雑談は苦手です」


「沈黙は、苦ではありません」


相手の目が、少しだけ和らぐ。


(……今だ)


悠馬は、続けてしまう。


「ただ」


一拍。


「”相手と黙って一緒にいる時間が

 続く関係は、私には向いていないと思います”」


――終わった。


完全に。


(……え?)


相手の表情が、はっきり止まる。


悠馬は、止まらない。


「沈黙が続くと、“何かしなければ”と考えてしまう」


「それは、相手にとって負担になる可能性がある」


「ですから」


最後に、丁寧に言う。


「”私は、ご希望の関係性を提供できないと思います”」


――論理は完璧。

――配慮も完璧。

――誠実さも満点。


そして、

『致命的にズレている』。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


相手は、しばらく黙っていた。

それから、静かに言った。


「……佐伯さん」


「今の話で、私が求めているものを勘違いされています」


(……え)


「私は、“黙っていられる人”を

 探しているのではありません」


悠馬の胃が、音を立てる。


「”黙っていても、逃げない人”を探しているんです」


(……)


「考えてしまうこと」

「何かしなければと思うこと」


「それ自体は、問題ではありません」


「ただ」


相手は、優しく言った。


「それを理由に“向いていない”と決めてしまうところが」


「とても、佐伯さんらしい」


――敗北。


完全敗北。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


帰り道。


悠馬は、空を見上げていた。


(……俺)


(……一番大事なところを自分で切ったな)


善意で。

誠実に。

丁寧に。


それが、一番の自爆だった。


ーーーーーーーーーーーーー


邸に戻ると、ノアが即座に聞く。


「……やった?」


「……やった」


「どんな?」


「……向いてないですって自分から言った」


ノア、絶句。


「……それ」


「……相手の最終希望?」


「……ほぼ」


ノアは、数秒黙ってから言った。


「兄さん」


「はい」


「それ、”恋愛でもお見合いでもなく自己査定ミス”」


「……否定できない」


悠馬は、ソファに沈んだ。


「……前向きで行って」


「……前向きで終わらせた」


コーヒーを淹れる。


砂糖は、四杯。


(……今日は増やしていい)


でも。


胸の奥に、はっきり残っている。


”相手が何を求めていたのか。”

”自分が何を切り捨てたのか。”


これは、ただの失敗ではない。


“理解した上での自爆”だった。



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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