第三部 第二十話 ~その後の評価は、本人不在で決まる~
悠馬君は「恋愛適正」も「結婚適性」もない気がするんですがそれは。
評価は、本人のいないところで勝手に行われる。
それが一番、質が悪い。
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翌日。
悠馬は、デスクで資料を確認していた。
昨日のカフェのことは、思い出さないようにしている。
(……考えない)
(……あれは事故)
(……ノアが悪い)
その時。
「佐伯様」
秘書の声。
(……来た)
嫌な予感は、だいたい当たる。
「昨日の件ですが」
(……評価か)
「先方から、ご連絡がありました」
悠馬は、ペンを置いた。
(……早いな)
「……どのような」
秘書は、一瞬だけ言葉を選ぶような顔をした。
「率直に申し上げますと」
(……率直)
「”好印象”だそうです」
沈黙。
「……はい?」
一音ずつ、丁寧に聞き返す。
「落ち着いていて」
「誠実で」
「無理に取り繕わない」
(……どこが)
「同行の方が少々賑やかだった点も」
(ノア)
「“ご家族らしい距離感”として受け取られていました」
(……そう解釈されるのか)
「総合的に」
秘書は、淡々と続ける。
「”一緒に生活を想像できる”、とのことです」
悠馬は、しばらく言葉を失った。
(……想像)
(……どの辺で)
昨日の自分を思い出す。
・砂糖三杯暴露
・ノアの余計な説明
・真顔で「会うだけです」宣言
・困っている顔
(……全部、マイナスだろ)
「……補足は」
「あります」
秘書は、続けた。
「“分かりやすく完璧な人より、不器用な人の方が一緒にいられる”と」
(……それ、評価なのか)
「“本人が自分の弱点を分かっている点が良い”」
(……弱点)
「“無理をしていないところに安心感がある”」
(……無理、してなかったか)
頭が、追いつかない。
「……つまり」
絞り出す。
「……評価は」
秘書は、一拍置いて言った。
「”前向き”です」
(……地獄)
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その夜。
悠馬は、ソファに沈み込んでいた。
コーヒー。
砂糖三杯。
(……評価、されてる)
(……何もうまくやってないのに)
(……むしろ失敗したのに)
そこへ。
「……兄さん」
ノアが、様子を見て言う。
「来た?」
「……来た」
「結果は?」
「……好印象」
ノア、一瞬だけ黙る。
次の瞬間。
「……え?」
「俺もそうなるとは思ってない」
「ちょっと待って」
ノアは、腹を抱える。
「昨日、完全に事故だったよね?」
「……事故だった」
「砂糖三杯」
「アンドロイド暴露」
「真顔で距離線引き」
「……全部、地雷」
「……だな」
ノアは、少し考えてから言う。
「でもさ」
「兄さん、”取り繕わなかった”」
「それ、結構でかい」
「……そうなのか」
「うん」
ノアは、にやっと笑う。
「完璧な人より、分かりやすく
不器用な人の方が安心する人、結構いる」
(……世の中、分からん)
悠馬は、天井を見た。
「……俺、何を評価されてるんだ」
「”生活適性”」
即答。
「恋愛力じゃない」
(……ですよね)
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その後、エド叔父から短いメッセージが届いた。
> 想定通りだ
>
> 壊れなかったことが
> 最大の評価だ
(……想定通り)
(……どこまで想定してる)
ノアが、その画面を見て言う。
「父上、怖いね」
「……ああ」
しかし。
昨日の自分は、確かに壊れていなかった。
困って、詰まって、でも逃げなかった。
(……それが、評価か)
納得は、まだできない。
でも。
“何もしなかったつもり”で”何かが進んでいる”
という事実だけは、はっきりしていた。
有能嫁計画・第二フェーズは、
静かに、しかし確実に進行している。
悠馬の胃と、相談しながら。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




