第三部 第十四話 ~お見合い側、本気を出す~
悠馬君にはお見合いのほうがいいとおもうんだ
それは、“恋愛”という言葉を
一切使わずに始まった。
朝。
悠馬がデスクで
いつものように資料を確認していると、
秘書が控えめに声をかけてきた。
「佐伯様、少しお時間よろしいでしょうか」
(……来たな)
嫌な予感は、もう“予感”ではない。
「どうぞ」
「昨日の件ですが」
一拍。
「先方から、正式にご返答がありました」
(……正式)
その単語だけで、胃が反応する。
「条件については、すべて了承とのことです」
(……え?)
悠馬は、一瞬だけ資料から目を離した。
「……全部、ですか」
「はい」
秘書は、淡々と続ける。
「連絡頻度が少ないこと」
「会えない期間が長い可能性」
「仕事最優先であること」
(……あっさり)
「むしろ」
秘書は、少しだけ間を置いた。
「その点を、前提条件として
考えているとのことです」
(……本気だ)
逃げ道が消えたわけではない。
だが、”軽くは扱われなくなった”。
それが、はっきり分かる。
「……次は?」
「先方のご希望としては」
秘書は、言葉を選びながら言った。
「“顔合わせ”というより、”生活のすり合わせを前提とした食事”を」
(……お見合いだ)
完全に。
悠馬は、一瞬だけ目を閉じた。
(……恋愛どころか、もう生活だ)
「日程は、佐伯様のご都合に合わせると」
(……圧がないのが余計に怖い)
「……少し、考えさせてください」
「もちろんです」
秘書は、一切急かさなかった。それが、”本気の証拠”だった。
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昼。
ノアに、その話をする。
「……来たよ」
「本気?」
「かなり」
ノアは、少しだけ表情を改めた。
「条件、全部通った?」
「ああ」
「……そっちが?」
「そっちが」
ノアは、しばらく黙ってから言った。
「兄さんさ」
「……何だ」
「これ、“恋愛したいかどうか”の話じゃないね」
「……だな」
「”人生設計の話”だ」
(……急に重いな)
「でもさ」
ノアは、珍しく真面目な声で続ける。
「兄さん、逃げてない」
「条件も出した」
「保留もした」
「で、向こうはそれを受け取った」
(……整理すると確かに)
「だから」
ノアは、肩をすくめた。
「ここからは、”選ぶかどうか”だけ」
「……胃が」
「知ってる」
即答。
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夜。
自室。
悠馬は、ソファに座り、天井を見ていた。
(……本気、か)
恋愛感情は、まだ分からない。
好きかどうかも、判断できない。
でも。
(……真剣に扱われている)
それだけは、はっきりしている。
軽い興味でも、様子見でもない。
(……逃げたら、失礼になる)
だが同時に、
(……受けたら、簡単には戻れない)
「……選択、難易度高すぎる」
思わず、独り言が漏れた。
だが、これまでとは少し違う。
(……“選ばされてる”感じは、ない)
条件を出し、考える時間をもらい、
今も急かされていない。
(……ここまで対等なら)
「……向き合う、必要はあるな」
結論は、まだ出ない。
しかし。
『お見合い側は、本気を出した。』
だから次は、悠馬の番だった。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




