第三部 第十話 ~一晩分の通知~
雑談が付かれるのは僕も同じなのでなんとなくわかります。
普通は疲れないのかな?
その夜は、本当に何も起きないはずだった。
シャワーを浴びて、
適当に夕飯を済ませ、
ソファに座って天井を見る。
(……今日は、何も考えない日)
そう決めた。
スマホは、テーブルの上に伏せてある。
(……通知、来ない)
(……よし)
五分。
(……来ない)
十分。
(……来ない)
二十分。
(……これは、本当に来ないな)
その時。
ピロン。
(……来た)
反射で体が固まる。
(……仕事?)
(……ノア?)
(……まさか)
恐る恐る、スマホを裏返す。
表示された名前に、悠馬は一瞬、理解が追いつかなかった。
――”ノアの友人”。
(……本当に来た)
メッセージは、短かった。
> 今日はありがとう
> あの後も少し話してて
> 佐伯さん、面白かったって
>
> もしよかったら
> またコーヒーでもどう?
(……また)
心臓が、一拍遅れて鳴る。
(……また会おう、じゃなくて)
(……またコーヒー)
(……具体的だ)
ソファに深く沈み込み、天井を見る。
(……これは、どうする)
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まず、
仕事ではない。
評価でもない。
命令でもない。
(……断っても、問題はない)
分かっている。
それなのに。
(……なんで、
こんなに
考えてる)
スマホを持ったまま、
指が止まる。
「はい」
「いいえ」
その二択のはずなのに、
どちらも打てない。
(……“また”が重い)
今日じゃない。
今週じゃない。
いつか。
その曖昧な未来が、
一気に広がる。
(……頻度は?)
(……関係性は?)
(……雑談は?)
(……質問していいのか?)
(……砂糖三杯は入れていいのか?)
(……なんでこんなに考える)
ため息が、自然に漏れた。
(……雑談、疲れる)
でも。
(……嫌じゃない)
その事実が、一番厄介だった。
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「……一晩、考えるか」
声に出して、そう言ってみる。
誰も、急かしていない。
返事をしないことは、失礼ではない。
(……よし)
スマホを置き、ベッドに横になる。
電気を消す。
――眠れない。
目を閉じると、今日のカフェが浮かぶ。
砂糖三杯。スプーンの音。
「面白いね」という声。
(……面白い、って何だ)
評価ではない。
期待でもない。
ただ、変だね、という意味。
(……変、悪くない)
寝返りを打つ。
(……でも、疲れる)
また寝返り。
(……じゃあ、断ればいい)
(……でも)
その“でも”が、消えない。
(……断ったら、それで終わる)
(……それが、正解なのか)
自分で選ぶ、と言ったばかりなのに。
選ぶ、という行為がもう疲れる。
(……友達、難易度高すぎないか)
時計を見る。
深夜。
(……まだ、返事してない)
スマホを手に取る。
画面を開いて、閉じる。
(……ノアに聞く?)
一瞬、
その考えが浮かんで、すぐに消す。
(……これは、俺の判断だ)
もう一度、天井を見る。
(……“また”は保留でもいいんだよな)
ふと、友人の言葉を思い出す。
> 断ってもいいし
> 忘れてもいいし
> “また会おう”って
> 言ってみただけ
(……言ってみただけ)
ゆっくり、指が動く。
> 連絡ありがとう
> 今日は楽しかった
>
> すぐ返事できなくてごめん
> 少し考えさせてください
送信。
画面を伏せる。
(……送った)
胸の奥が、少しだけ軽くなる。
(……これで、いい)
返事は、すぐには来なかった。
それでいい。
今日は、答えを出した。
「会う」でも
「断る」でもない。
“考える”を選んだ。
時計を見る。
少しだけ、眠くなってきた。
(……ちゃんと悩んだな)
目を閉じる。
胃は、静かだった。
それだけで、今夜は合格だ。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




