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第一部 第二話 ~フランス出張、耐性ゼロ証明試験~

悠馬君は「特に」女性が苦手です。家の女性皆怖いし。

佐伯悠馬は、

自分が何か取り返しのつかない勘違いをしているのではないかと思っていた。


フランス出張、初日。


仕事は順調だった。

打ち合わせは滞りなく進み、

資料も評価された。


ーーーここまでは、いつも通り。


問題は、

会議室を出た、その直後である。


『ユウマ?』


呼ばれた。

しかも、

”仕事以外の声色で。”


『日本から来たの?』

『日本の文化、すごく好きなの』


距離が近い。

一歩近い。

さらに近い。


(なぜ距離を詰める)


悠馬は反射的に一歩下がった。


『そのスーツ、似合ってるわね』


(話題が仕事じゃない)


ここでようやく理解する。


――あ、これは仕事の延長ではない。


「……ありがとうございます。では」


悠馬は逃げた。

”本能的に。”


ーーーーーーーーーーーーーー


二日目。


悠馬は学習した。


* 会議後は即退室

* 廊下に長居しない

* 目を合わせない


完璧だ。


……のはずだった。


ホテルのロビーで、

コーヒーを飲もうとしただけなのに。


『ユウマ!』


呼ばれた。

昨日とは別の人に。


(なぜ増えている)


『昨日は忙しそうだったから』

『今日は少し時間ある?』


「……すみません、これから打ち合わせが」


『でも今、朝よ?』


(論破された)


助けを求めて部下を見る。

部下は、目が合った瞬間、スマホを見た。


(鳴っていない)


「あ、じゃ、俺は先に……」

「待っ――」


部下は消えた。


(見捨てられた)


ーーーーーーーーーーーーーーーー


昼。


部下と食事に出た――はずだった。


『少し席、外すね』


気づけば、

部下はいなかった。


代わりに、

目の前に座る女性。


(……なぜ)


『日本人って、みんな優しいの?』


(違います。これは単に断れないだけです)


『恋人は?』


(来た)


「……仕事で来ていまして」

『結婚は?』


(追撃が早い)


部下は戻らなかった。

会計だけ、

”きれいに済ませて”。


(皿だけ残された)


ーーーーーーーーーーーーーーーー


三日目。


悠馬は完全防御態勢に入った。


* 壁沿い移動

* エレベーターは一人の時のみ

* 近づかれたら即用事を思い出す


それでも。


『ユウマ、また会ったわね』


(なぜだ)


ここで、悠馬はふと考えた。

考えてみれば当然だ。


悠馬は、

思春期を男子校パブリックスクールで過ごした。

大学時代は、

周囲の大人たちに

「使えるから」という理由で使われ続け、

恋愛どころではなかった。


卒業後、現在に至るまで――

さらにそれどころではない。


(なぜなら、仕事が増えた)


つまり。


”女性慣れしている要素が、人生に存在しない。“


『若いのに、しっかりしてるわね』


(若くない)

(しっかりしているのは仕事だけです)


『何歳?』


言えなかった。


言った瞬間、すべてが崩れる気がした。

悠馬は、ついに逃げた。


文字通り、”走って。”


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その夜。


ホテルの部屋で、

悠馬はスーツを脱ぎ捨て、

ベッドに倒れ込んだ。


「……もう、

 仕事だけさせてほしい……」


胃薬を飲み、

天井を見る。


仕事は怖くない。

数字も、契約も、責任も。


だが。


(恋愛って……

 こんなに物理的に怖いものだったか……?)


このフランス出張は、

のちにこう呼ばれる。


  ”耐性ゼロ証明試験”。


そして。


ロンドンに戻った悠馬を待っているのは、

叔父の紅茶と、

とても合理的で、

とても胃に悪い計画である。



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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