第三部 第四話 ~第三候補:条件提示(胃が限界)~
コメディの・・・コメディのつもりなんです・・・
正直に言えば、
悠馬はもう、この流れに慣れてきていた。
ハミルトン邸のダイニング。
落ち着いた照明。
過不足のない料理。
そして――「今日の方」。
(……三人目)
心の中で、静かに数える。
第一候補。
静かで、大人で、余白があった。
不成立。
なぜか敗北感。
第二候補。
明るくて、踏み込みが早くて、真逆。
比較。
自覚。
疲労。
そして。
「はじめまして」
第三候補は、最初から、様子が違った。
派手ではない。
声も大きくない。
だが、視線がまっすぐだった。
「あなた、仕事中心の生活ですよね」
――初手、それか。
悠馬は、一瞬だけ眉間に力が入るのを感じた。
(……直球)
「そうですね」
否定はしない。
「でも、それを“問題”だと思っていない」
疑問形ではない。断定。
(……来るな)
「周囲が、 勝手に心配しているだけ」
(……なぜ分かる)
第三候補は、悠馬の表情をじっと見てから、続けた。
「あなた自身は、困っていない」
(……違う)
困っていないわけじゃない。
でも、言葉にしにくい。
「私は」
彼女は、少しだけ間を置いた。
「自分の人生を他人に“整えられる”のが嫌いです」
その一言で、悠馬の胃がきゅっと縮んだ。
(……それ、今の俺だ)
エド叔父は、一切口を挟まない。
これは、
”完全に“本人同士の場”。
「だから、 聞きたい」
第三候補は、まっすぐ言った。
「佐伯さんは、どうしたいんですか?」
――来た。
今までで、一番避けてきた質問。
仕事の話ではない。
評価でもない。
比較でもない。
『本人の意思』
悠馬は、口を開こうとして、閉じた。
(……胃が)
はっきり分かる。
今、無理をすると体が先に折れる。
フランス出張。
評価。
選択。
比較。
積み重なった疲労が、
ここに来て一気に押し寄せてくる。
「……すみません」
初めて、悠馬ははっきりと頭を下げた。
「少し、正直に話してもいいですか」
第三候補は、即座に頷いた。
「もちろん」
悠馬は、深く息を吸う。
(……ここだ)
逃げない。
でも、
取り繕わない。
「僕は……」
僕は言葉を選びながら伝えた。
「今、誰かと関係を始めたいとは思っていません」
はっきり言った。
エド叔父の気配が、一瞬だけ動いた。
だが、止めない。
「仕事が理由、ではありません」
第三候補の眉が、わずかに上がる。
「……では?」
「”自分の時間が足りていない”」
これが、初めて口に出した“条件”だった。
「選ばれること、
期待されること、
応えること」
「それ自体は、嫌いじゃない」
(本音)
「でも、それを前提に関係を始めると、
また“役割”になる」
第三候補は、黙って聞いている。
「……それが、今は無理です」
沈黙。
長い一拍。
そして。
「分かります」
第三候補は、そう言った。
即答ではなかった。
だから、本物だった。
「それは、逃げじゃない」
悠馬の胸が、少しだけ軽くなる。
「自分の条件を言えた、ということ」
「それだけで、十分だと思います」
第三候補は、微笑んだ。
「今日は、これで終わりにしましょう」
立ち上がる。
「あなたが“整えられる側”から抜けるまでは」
「誰と会っても、同じ結果になりますから」
――完全敗北。
だが。
(……負けてない)
悠馬は、そう思えた。
胃は、まだ痛い。
でも、初めて”自分の意思で線を引いた”。
第三候補が去った後、エド叔父がゆっくりと口を開く。
「……今のは」
悠馬は、疲れ切った顔で言った。
「すみません、叔父上」
「今日は、これ以上無理です」
エド叔父は、じっと悠馬を見てから、
小さく頷いた。
「……よく言えたな」
それだけ。
評価も、次の話も、しない。
悠馬は、椅子に深く座り直し、
額を押さえた。
「……胃が、限界です」
ノアが、横から小さく言う。
「今の兄さん、結構かっこよかったけどね」
「……言うな」
だが、否定する力もない。
有能嫁計画は、止まっていない。
でも。
”悠馬は、初めて条件を出した。”
それは、小さな一歩だった。
けれど、
確実に流れを変える一歩だった。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




