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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第三部 第三話 ~ ―第一候補、静かに不成立。そして追撃~

悠馬君の「有能嫁大作戦」はまだ始まったばかり

結果から言えば。


”第一候補は、成立しなかった。”


それも、

とても穏やかに。

とても大人に。


数日後。

エド叔父から、

あくまで“報告”として

その話は伝えられた。


「先日の方だが」


(来た)


悠馬は、一瞬だけ身構える。


「ご本人から、丁寧な返事があった」


(……断られた、か)


胸の奥が、ほんの少しだけ緩む。


「価値観は合いそうだが、

 今は仕事を優先したいそうだ」


「……そうですか」


声は、落ち着いていた。


本心も、そうだった。


(……良かった)


(無理に進まなくて)


エド叔父は、それ以上何も言わない。


評価も、

講評も、

ない。


ただ、

紅茶を一口飲んで、

話題を変えた。


それで、終わりだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その夜。


自宅に戻った悠馬は、

ソファに座ったまま、しばらく動かなかった。


(……断られた、だけだよな)


問題は、何も起きていない。

誰も、傷ついていない。

自分も、責められていない。


なのに。


(……なんで、こんなに負けた気がするんだ)


眉間に、無意識に力が入る。


(僕、何かしたか?)


(何か、間違えたか?)


答えは、出ない。


第一候補は、完璧だった。

距離感も、

会話も、

踏み込み方も。


それでも、“選ばれなかった”。


いや。


(……選ばれなかった、って考えるのがおかしいのか?)


そもそも、選ぶ場じゃない。


なのに。


(……でも)


胸の奥に、微妙な空白が残る。

それが、一番やっかいだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌週。ハミルトン邸。


「悠馬」


(……早いな)


嫌な予感が、確信に変わる。


「次の件だが」


(来た)


「今回は、少し毛色が違う」


(……追撃)


ダイニングに通されると、すでに座っている人物がいた。


第一候補とは、真逆。


明るい色の服。

よく動く表情。

視線も、声も、はっきりしている。


「はじめまして!」


勢いがある。


(……元気だな)


立ち上がって、手を差し出してくる。


「あなたが、噂の佐伯さん?」


(……噂、まだ生きてるな)


握手。

強い。


(……タイプ、真逆だ)


会話は、始まる前から始まっている。


「フランスはどうだった?」


「こっちの生活、長いんでしょ?」


「日本の話も、聞きたい!」


(……質問、多い)


間がない。

沈黙がない。


第一候補の“余白”とは、正反対だ。


悠馬は、反射で背筋を伸ばす。


(……逃げ腰になるな)


(今回は、落ち着いて)


しかし。


「ねえ」


一拍も置かずに、彼女が言う。


「あなた、考える時、眉間にしわ寄るでしょ」


――即死。


「……よく言われます」


(……まただ)


エド叔父が、ここで口を挟む。


「この人は、気づくのが早い」


(やめろ)


「悠馬は、悩みが顔に出やすい」


(やめてくれ)


第二候補は、

楽しそうに笑った。


「面白い!」


(……面白がられる段階に入った)


第一候補は、“静かに観察する人”。

第二候補は、“遠慮なく踏み込む人”。


(……これは)


悠馬は、はっきり理解した。


(……比較、されてる)


(しかも、意図的に)


第一候補で、静かな安心。

断られて、謎の敗北感。


そして。


第二候補で、”逃げ場のない賑やかさ”。


(……叔父上、、……やるな)


エド叔父は、何も言わない。


ただ、この“対比”を悠馬に体験させている。


「佐伯さん」


第二候補が、身を乗り出す。


「あなた、どっちのタイプが得意?」


――来た。


究極の質問。

悠馬は、一瞬、言葉を失った。


(……どっち、でもない)


でも、

答えないわけにはいかない。


「……正直に言うと」


一拍。


「……どちらも、慣れていません」


第二候補は、目を丸くしてから、大笑いした。


「素直!」


(……評価、それでいいのか)


エド叔父は、満足そうに紅茶を飲んだ。


(……これでいい)


第一候補で、“静かな不成立”。

第二候補で、“自覚の強制”。


有能嫁計画は、

着実に”次の段階”へ進んでいた。


その夜。


悠馬は、帰宅してから一人で呟いた。


「……断られたのに

 勝った気がしないの、なんでだろうな」


答えは、まだ出ない。

しかし、分かっていることが一つある。


――”もう、比べられる場所に立っている”。


それだけで、十分すぎるほど

『本格始動』だった。



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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