第三部 第一話 ~来週の夕食:逃げ腰、しかし出口なし~
所謂、「お見合い」的な?
その通知を見なかったことに、できなかったのが敗因だった。
――『来週:ハミルトン邸・夕食』
カレンダーの文字は、やけに整っていて、やけに確定的だった。
(……いや、これは、まだ確定じゃない)
佐伯悠馬は、自分に言い聞かせる。
予定は、予定だ。相談の余地はある。
仕事という理由は、いくらでも作れる。
(……逃げよう)
まずは、最も穏便な方法。
スマホを手に取り、メッセージを打つ。
> 来週の夕食ですが、
> 帰国直後で立て込んでおり、
> 別日に――
送信前に、一拍。
(……いや、これだと“別日”になるだけだ)
削除。
次。
> 来週は出張が――
(……フランス、終わったばかりだろ)
削除。
次。
> 体調が――
(……嘘は、
あとで詰められる)
削除。
結果。
(……詰んでないか?これ…)
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翌日。
オフィス。
悠馬は、普段より一段早く出社していた。
(……ここなら、仕事で逃げ切れる)
そう信じたい。
だが、現実は優しくない。
秘書が、いつも通りの声で言う。
「佐伯様、来週の件ですが」
(来た)
「ハミルトン邸での夕食、
予定どおりでよろしいでしょうか」
よろしいでしょうか、という言い方が、
すでに「変更不可」を含んでいる。
「……その件ですが」
悠馬は、慎重に言葉を選ぶ。
「少し、スケジュールを見直したくて」
秘書は、
一瞬だけ確認するようにタブレットを見る。
「問題ありません」
(……は?)
「その時間帯は、他の予定は入っておりません」
(……綺麗すぎる)
「……仕事の調整が」
「調整済みです」
即答。
(……誰が)
「エドワード様から、
“この日は空けておくように”と」
(……やっぱり)
悠馬は、一瞬だけ天井を仰いだ。
(……逃げ道、塞がれてる)
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昼休み。
ノアに、助けを求める。
「……ノア」
「なに?」
「来週の夕食、どうにかならないか」
ノアは、一瞬考えてから言った。
「……父上?」
「そうだ」
「無理だと思う」
即答だった。
「……理由は?」
「“帰国直後だからこそ”って言ってた」
(……意味が分からない)
「それ、理由になってない」
「父上の中では、なってる」
(……強すぎる理屈)
「……一人で 行けばいいだろ」
「だって」
ノアは、少しだけ申し訳なさそうに言う。
「兄さん。”君が主役だ”」
(……やめろ)
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その日の夜。
悠馬は、自宅で再び逃亡計画を練っていた。
(……直前で仕事を入れる)
(……海外に飛ぶ)
(……連絡を見なかったことに)
どれも、現実味がない。
そして、一つだけはっきりしていることがある。
(……これは、“夕食”じゃない)
これは。
『有能嫁計画・第一弾』だ。
名前は出ていない。
顔も見ていない。
だが、
空気がすでにそう言っている。
「……逃げたい」
本音が、ぽつりと落ちる。
だが同時に、分かっている。
(……逃げたら、次は
もっと逃げられない形で来る)
フランスで、嫌というほど学んだことだ。
悠馬は、ソファに沈み込み、両手で顔を覆った。
「……覚悟、しろってことか」
答えは、返ってこない。
でも。
その沈黙自体が、答えだった。
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来週。
ハミルトン邸の夕食は、確定した。
悠馬は、全力で逃げ腰だ。
だがしかし。
『逃げ道は、最初から用意されていなかった。』
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




