第八部 第十三話 ~しばらく~
次は幕間、そのあとラストです!
エドワードは突然来る。
それはもう自然現象だ。
雨。
曇り。
叔父上。
その日もそうだった。
インターホン。
短い。
重い。
ノアが即座に立ち上がる。
「父上……?」
拓海がソファで足を組む。
「なんだよまた」
悠馬は水を飲んだ。
胃が先に構える。
ドアが開く。
エドワードが立っていた。
コート。
手袋。
存在が業務。
「悠馬」
「はい、叔父上」
ノアが反射で言う。
「父上」
拓海が即座に言う。
「おう」
ノアの胃が鳴った。
(拓海父さんそれはやめて)
エドワードは部屋に入り、座る。
当然のように空気が締まる。
でも。
今日は拓海がいる。
エドワードの言葉が少しだけ短い。
「どうだ」
エドワードが言う。
「生活は」
ノアが呻く。
(生活面談だ)
悠馬は一拍置いた。
「……試しています」
エドワードの眉がわずかに動く。
「ほう」
拓海が即答する。
「ほうじゃねえ」
エドワードは淡々と続ける。
「答えは出たか」
悠馬の指が止まる。
帰る場所。
居場所。
誰といるか。
何を選ぶか。
「……まだです」
エドワードは頷く。
「そうか」
一拍。
「なら動け」
ノアが心の中で叫ぶ。
(来た)
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悠馬は静かに息を吐いた。
そして。
初めて少しだけ、言葉を選んだ。
「叔父上」
「はい」
「僕は」
一拍。
「しばらく、この状態を続けたいです」
ノアが固まった。
(兄さんが意見した)
(事件だ)
エドワードの目が細くなる。
「この状態とは」
悠馬は淡々と答える。
「業務ではなく」
「生活のほうを」
「試す時間です」
エドワードは静かに言う。
「逃げか」
悠馬は首を振った。
「逃げではありません」
「今まで出来なかったことです」
拓海が後ろで笑った。
「そうだよ」
ノアが叫びそうになる。
(拓海父さん黙って)
エドワードの視線が拓海に移る。
拓海は平然と肩をすくめた。
「お前が走らせすぎたんだろ」
エドワードの言葉が止まる。
拓海には勝てない。
昔から。
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沈黙。
エドワードは悠馬を見る。
悠馬は目を逸らさない。
初めて。
逃げずに。
エドワードは小さく息を吐いた。
「……期限は」
悠馬が一拍置く。
「決めません」
ノアが崩れた。
「兄さん!!」
拓海が笑った。
「いいぞ!」
エドワードは淡々と言う。
「勝手にしろ」
拓海が即答する。
「おう」
ノアの胃が鳴った。
エドワードは立ち上がった。
ドアの前で振り返らずに言う。
「悠馬」
「はい」
「止まるなら」
「止まり方を覚えろ」
そして去った。
ノアは床に崩れた。
「……兄さん」
「はい」
「僕、今すごいものを見ました」
悠馬は静かに答えた。
「普通です」
ノアが叫んだ。
「普通じゃない!!!!」
拓海は満足そうに笑った。
「菜摘に報告しとくか」
悠馬が一拍遅れて言う。
「お願いします」
こうして。
悠馬は初めて、
結論ではなく猶予を選んだ。
走るだけではない時間を。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




