第八部 第十三話 ~少しだけ、いい~
もうすぐ悠馬君の迷走も終わります
普通は繰り返すらしい。
拓海がそう言った。
叔父上も「続けろ」と言った。
ノアだけが胃薬を増やしている。
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次の休日。
拓海はまた言った。
「今日は昼だ」
ノアが即答する。
「昼にしてください!!!」
悠馬は静かに頷いた。
「昼がいいです」
拓海が笑った。
「だろ」
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今日は公園ではなかった。
市場だった。
人が多い。
でも昨日の夜ほど熱くない。
匂いも酒ではなくパンだ。
胃に優しい。
「ほら」
拓海が指をさす。
「普通だ」
ノアが小声で言う。
「普通ってパンなんですね…」
悠馬は淡々と見ていた。
パン。
果物。
花。
生活。
拓海が言う。
「買え」
「何を」
「適当に」
悠馬は一拍止まる。
「適当が難しいです」
ノアが頷く。
「兄さんは適当ができません」
「黙れ」
「はい」
拓海が笑った。
「じゃあ俺が選ぶ」
そして勝手に袋を渡す。
「食え」
悠馬は受け取った。
温かい。
紙袋が。
生活の温度だった。
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ベンチに座る。
拓海はパンを齧る。
ノアは胃薬を飲む。
悠馬は水を飲む。
三者三様の通常運転。
拓海が言う。
「どうだ」
悠馬は少し考える。
「……静かです」
「それが昼だ」
「昨日は騒がしかった」
「夜だからな」
ノアが呻く。
「夜はやめてください」
「黙れ」
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何も起きない時間が続いた。
それが一番不思議だった。
叔父上がいない。
噂もない。
会議もない。
決裁もない。
悠馬はふと気づく。
自分は今まで、
こういう時間を知らなかった。
必要のない時間。
役割のない時間。
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拓海が言う。
「お前さ」
「ずっと走ってたんだろ」
悠馬は否定しなかった。
「走らされてたのか」
「走ってたのか」
拓海は肩をすくめる。
「どっちでもいい」
「止まれたなら」
ノアが小声で言った。
「兄さんが止まると僕が死にますけど」
「黙れ」
「はい」
悠馬は袋の中を見た。
パン。
果物。
拓海が勝手に買ったもの。
だけど。
不思議と嫌ではなかった。
悠馬はぽつりと言った。
「……こういうのは」
拓海が顔を向ける。
「ん?」
「少しだけ」
一拍。
「いいかもしれません」
ノアが固まった。
(兄さんが肯定した)
(事件だ)
拓海は笑った。
「だろ」
笑い方が、父親だった。
悠馬は思った。
答えはまだ出ない。
居場所もまだ分からない。
でも。
探す前に、
こういう時間を繰り返してもいい。
走るだけの人生の中で、
初めて
「もう少しこの状況がいい」
と思えた。
ノアが小さく呟く。
「兄さん、それを父上に言わないでくださいね」
悠馬は一拍遅れて答える。
「検討します」
ノアが叫んだ。
「検討するな!!!!」
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




