第八部 第十二話 ~確認~
もうちょっと!もうちょっと!
帰宅。
悠馬のフラット。
夜は終わった。
普通の夜・第二幕は終わった。
胃は終わっていない。
ギリギリ生きている。
ノアは玄関で靴を脱ぎながら呻いた。
「……帰れた……」
拓海が笑う。
「普通だったな!」
「普通の基準を壊さないでください!!」
悠馬は水を飲んだ。
水が命綱。
静かだった。
今日は静かに終わる。
ノアはそう信じた。
人は信じると死ぬ。
インターホンが鳴った。
短い。
だけど重い。
ノアが固まる。
「……嘘」
拓海が眉を上げる。
「誰だよこんな時間に」
悠馬は立ち上がる。
「確認します」
ノアが叫ぶ。
「確認しないでください!!」
ドアを開けた。
そこに立っていた。
エドワード。
コート。
手袋。
夜でも業務。
悠馬が静かに言う。
「……叔父上」
ノアが反射で言う。
「父上……」
拓海が即座に言う。
「なんだお前」
ノアの胃が鳴った。
(拓海父さんそれはやめて)
エドワードは淡々と答える。
「確認だ」
拓海が即答する。
「帰れ」
「帰らない」
ノアが崩れた。
「帰ってください!!!!」
叔父上は当然のように部屋に入った。
当然のようにソファに座った。
当然のように空気を支配した。
ノアは胃薬を握りしめる。
拓海は腕を組む。
悠馬は水を飲む。
三者三様の防御。
エドワードが言った。
「悠馬」
「はい」
「普通はどうだった」
拓海が笑った。
「普通だったぞ!」
ノアが叫ぶ。
「普通じゃありません!!!!」
エドワードは拓海を見ない。
悠馬だけを見る。
「答えなさい」
悠馬は一拍置く。
「……胃に来ました」
ノアが呻く。
「兄さん、それ名言にしないでください」
エドワードの眉がわずかに動く。
「ほう」
拓海が即答する。
「ほうじゃねえ」
エドワードは淡々と続ける。
「業務ではない声を聞いたか」
悠馬は少し考える。
「……はい」
「生活に触れたか」
「少し」
ノアが固まる。
(兄さんが少しって言った)
(事件だ)
エドワードは頷く。
「そうか」
一拍。
「なら」
拓海が嫌な顔をする。
「なら、何だよ」
エドワードは淡々と言った。
「続けろ」
ノアが叫んだ。
「続けないでください!!!!」
拓海が立ち上がる。
「お前な」
「悠馬は胃が弱いんだぞ」
エドワードは静かに返す。
「知っている」
「知ってるならやめろ!」
「やめない」
ノアが泣きそうになる。
「父上、鬼ですか」
「必要だ」
「必要って便利に使わないでください!!」
エドワードは悠馬を見る。
「答えは急がない」
「だが」
一拍。
「生活改善は急げ」
悠馬が固まる。
拓海が固まる。
ノアが死んだ。
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「冷凍庫で生きるな」
悠馬は小さく言う。
「母が送ってくれます」
「甘えるなとは言わない」
「だが」
「止まるな」
”その言葉だけが重かった”。
エドワードは立ち上がった。
「確認は済んだ」
拓海が即答する。
「帰れ」
「帰る」
帰るのか。
帰るんだ。
珍しい。
ドアの前でエドワードは振り返らずに言った。
「悠馬」
「はい」
「次に動く時」
「業務だけで動くな」
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そして去った。
夜が戻った。
普通ではない夜が。
ノアは床に崩れた。
「……兄さん」
「はい」
「僕たち、何をさせられてるんでしょう」
悠馬は一拍遅れて答えた。
「普通です」
ノアが叫んだ。
「普通って何だよ!!!!!!」
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




